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第三章 上級編開始

第392話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下一階

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 ウルスラとアールを先頭に、一行はダンジョンの階段を降りて行く。太陽の熱が上から差さない分、上からの熱は感じなくなったが、代わりに下から立ち登る湿気を含む熱気ですぐに汗ばんできた。

 アールは元々シャツに皮のベストといういかにも剣士といった格好をしていたが、唐突にそれを脱ぎ出した。

 アールの斜め後ろを行くサツキにはほぼ背中しか見えないが、この人もさすが剣士だけあっていい身体をしている。顔が幼い感じなのであまり思わなかったが、筋肉のついた均等の取れた裸の上半身は、かなり男くさい。

 すると、ユラがすすすっと寄ってきて小声で言った。

「サツキ、見過ぎじゃね?」
「そんなことないよ」
「サツキはあれか、筋肉隆々の方が好みなのか?」

 この人は一体何を聞いてきているんだろうか。今、結構難易度上がってそうなダンジョンに入ったばかりなんですけど。

「ユラ、前向いて歩かないと転ぶよ」
「はぐらかすなよ。なあ教えろって」

 警戒しながら先を行くウルスラとアールの後ろで話している内容がこれだと知られたら、きっとウルスラあたりに怒られる。

 そしてユラが案外しつこいのはサツキももう知っていた。これは、もう答えるまでやめないやつだ。

「ま、まあ、ぷよぷよじゃなければいいんじゃない」
「答えになってない様な気がするんだけど」

 納得いかないらしい。前衛二人から伝わる緊張感。そして後衛のこの呑気な会話。なんだか申し訳なくなった。

 フレイのダンジョンは、ルーンのダンジョンとは違い、中があまり整備されていない。通路の高さも幅もあるものの、削り出されただけといった感じだ。

 赤い光がダンジョン内を照らしているのだが、それは壁から所々飛び出ている赤い鉱石の様な物から発せられていた。ランダムに配置されており、時折天井や床からも飛び出ていることがあるので、もしかしたら天然の物なのかもしれない。

「なあーサツキー」

 段々とユラの声がおねだりするそれに変わってきた。

「ちゃんと答えたでしょ」
「だってさ、ギルドで約束しただろ? 俺にも優しさの篭った目で見るって」
「言ったっけ」
「言った。須藤さん達を見てニヤニヤしてたから、俺のこともそう見てくれって言ったら『後で』って言ってたろ」

 確かに言ったかもしれない。いや、言った。面倒なことを後回しにする為に、言った。

 この人、本当よく細かいこと覚えてるな。サツキは半ば呆れながら、隣で不貞腐れた顔をして歩くユラをチラ見した。

 白い肌に汗が流れている。首筋に髪の毛が張り付いて暑そうだ。

「なのにさっきからアールの背中ばっかり見てないか? もう少し俺の方も見てくれたっていいんじゃねえの?」
「アールは前にいるから目に入るの」
「もしやお前、俺よりあの馬鹿アールの顔の方が格好いいなんて思ってるんじゃ」
「好み的にはアールの方が好みな顔をしてはいるかな」

 ちょっと幼さを残す元気な笑顔は、いかにもアイドルといった感じだ。ユラはどちらかというと、イケメン俳優とかモデルとかいった感じだろうか。

 すると、ユラがむっとした顔になり、サツキの顎を持ち自分の方に無理やり向けた。
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