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第三章 上級編開始
第387話 魔術師リアムの上級編初日の観光終了
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ぐつぐつと泡を吐き出しながら卵を黒くする温泉を見学し、土産屋で温泉卵を買った。風はずっと強く吹いており、リアムの身体は冷え切ってしまっていた。
祐介が風から庇う様にしてくれてはいたが、気休め程度だった。
「下に戻ろうか」
「済まぬ、そうしてもらえると有り難い」
「気にしないで」
祐介につれられてロープウェイの駅までやっとこさ辿り着いたが、ここも吹きさらしだ。幸い順番はすぐに回ってきたので、二人は急ぎ乗り込んだ。
中は暖かく、ようやくほっとしたところ、祐介が腕を広げて言った。
「ほらおいで」
普段だったら、そんなことを言われたら気恥ずかしくて動けなかっただろう。だが、今は違った。とにかく暖を取りたい。そして祐介が暖かいのは経験上知っている。
だからリアムはその腕の中に飛び込んだ。すぐに祐介が包んでくれた。
リアムと祐介は、ロープウェイが終点に着くまでずっとそうしていた。このまま時が止まったらいいのに、そんなありもしないことを願いながら。
終点の駅に着くと、今度は一気に蒸し暑くなった。リアムはまたくらりと目眩を覚えた。咄嗟に祐介の腕にしがみついた。
「サツキちゃん?」
「……済まない」
「温度差激しいよね、無理せず行こう」
駅のベンチで座って休み、立ちくらみが治ったところで登山鉄道に乗り込んだ。
祐介が心配そうに顔を覗き込む。
「下の駅で食べるのはやめて、何かお弁当買って特急の中で食べようか。また顔色悪くなってるよ」
リアムは無言で頷いた。やはり体調がおかしい。一体どうしたのか訳が分からないが、焦らず休めば症状が治まるのも分かった。
でも、折角の旅行がこれの所為で。
「祐介、済まない。もっと色々と見たかっただろう?」
リアムが謝ると、祐介はにっこりとして首を横に振ってみせた。
「僕はサツキちゃんと来られた、それだけでいいんだ。だから変なこと気にしないの」
「祐介……」
「それに、会社のことを考えずにゆっくり出来たし」
ふふ、と祐介が笑って言った。確かにこの旅行では、ここ最近ずっと気にせざるを得なかった羽田の存在を忘れることが出来た。
考えたのは、祐介とのことばかりだった。
リアムはもたれかかっている祐介を見上げた。ん? という顔をしてにこにことしている祐介を見て、リアムの胸が熱くなった。
だから、言った。
「祐介、私の我儘を聞いてくれて、本当にありがとう」
「え? 我儘なんて言ったっけ?」
祐介がキョトンとする。それがまた愛おしくて、リアムは祐介の肩に頰を付けた。
「温泉に行きたいと急に言い出したのは私だろう?」
「ああ、それのこと?」
祐介がはは、と笑う。
「僕、凄く楽しかったよ。それに、サツキちゃんと距離が縮まった気がするし」
裸で背後から抱きしめたことであろうか。確かにこれまでで一番距離は近かったかもしれない。
「私もだ」
今はまだ、祐介に必要とされているのが分かってきた。
ならばまだ隣にいよう。祐介がもういいと手を離すその時までは、まだ隣にいたい。そう思った。
祐介が風から庇う様にしてくれてはいたが、気休め程度だった。
「下に戻ろうか」
「済まぬ、そうしてもらえると有り難い」
「気にしないで」
祐介につれられてロープウェイの駅までやっとこさ辿り着いたが、ここも吹きさらしだ。幸い順番はすぐに回ってきたので、二人は急ぎ乗り込んだ。
中は暖かく、ようやくほっとしたところ、祐介が腕を広げて言った。
「ほらおいで」
普段だったら、そんなことを言われたら気恥ずかしくて動けなかっただろう。だが、今は違った。とにかく暖を取りたい。そして祐介が暖かいのは経験上知っている。
だからリアムはその腕の中に飛び込んだ。すぐに祐介が包んでくれた。
リアムと祐介は、ロープウェイが終点に着くまでずっとそうしていた。このまま時が止まったらいいのに、そんなありもしないことを願いながら。
終点の駅に着くと、今度は一気に蒸し暑くなった。リアムはまたくらりと目眩を覚えた。咄嗟に祐介の腕にしがみついた。
「サツキちゃん?」
「……済まない」
「温度差激しいよね、無理せず行こう」
駅のベンチで座って休み、立ちくらみが治ったところで登山鉄道に乗り込んだ。
祐介が心配そうに顔を覗き込む。
「下の駅で食べるのはやめて、何かお弁当買って特急の中で食べようか。また顔色悪くなってるよ」
リアムは無言で頷いた。やはり体調がおかしい。一体どうしたのか訳が分からないが、焦らず休めば症状が治まるのも分かった。
でも、折角の旅行がこれの所為で。
「祐介、済まない。もっと色々と見たかっただろう?」
リアムが謝ると、祐介はにっこりとして首を横に振ってみせた。
「僕はサツキちゃんと来られた、それだけでいいんだ。だから変なこと気にしないの」
「祐介……」
「それに、会社のことを考えずにゆっくり出来たし」
ふふ、と祐介が笑って言った。確かにこの旅行では、ここ最近ずっと気にせざるを得なかった羽田の存在を忘れることが出来た。
考えたのは、祐介とのことばかりだった。
リアムはもたれかかっている祐介を見上げた。ん? という顔をしてにこにことしている祐介を見て、リアムの胸が熱くなった。
だから、言った。
「祐介、私の我儘を聞いてくれて、本当にありがとう」
「え? 我儘なんて言ったっけ?」
祐介がキョトンとする。それがまた愛おしくて、リアムは祐介の肩に頰を付けた。
「温泉に行きたいと急に言い出したのは私だろう?」
「ああ、それのこと?」
祐介がはは、と笑う。
「僕、凄く楽しかったよ。それに、サツキちゃんと距離が縮まった気がするし」
裸で背後から抱きしめたことであろうか。確かにこれまでで一番距離は近かったかもしれない。
「私もだ」
今はまだ、祐介に必要とされているのが分かってきた。
ならばまだ隣にいよう。祐介がもういいと手を離すその時までは、まだ隣にいたい。そう思った。
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