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第三章 上級編開始
第385話 魔術師リアムの上級編初日の温泉卵
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朝食を済ませ、宿の支払いも済ませ、リアムと祐介は登山鉄道に再び乗り、上へと続くロープウェイなるものに乗り換え出来る駅まで向かった。
まだ午前中だというのに、外は蒸し暑かった。これまで湿気とは殆ど無縁な土地で過ごしてきたリアムにとって、先日散々祐介に脅された日本の夏はきつかった。祐介曰く、これはまだ序の口だというのだから末恐ろしい。
ロープウェイ乗り場でロープウェイに乗り換えると、中は差し込む太陽の熱でむっとしていた。祐介がパタパタとパンフレットで扇いでくれなければ、もしかしたらまたふらふらと倒れていたかもしれない。
だが、その温泉卵なるものがある駅を降りると、一気に風が吹き抜けた。
リアムはその風を身体いっぱいに受けた。
何とも言えない臭いが漂っている。風で髪の毛を舞い上がらせているリアムを眩しそうに見た祐介が、これは硫黄の匂いだと教えてくれた。
そんな祐介の頭も、風でぐしゃぐしゃだ。仕事の時は上がっている前髪は、休みの日は何もされていない。
リアムはその祐介の方が好きだった。前髪の間から上目遣いでリアムを見て笑う目が、大好きだった。
祐介が、目に入った髪の毛を指で取ろうとしてうまくいかない。リアムがそれを取ってやると、祐介は「ありがと」と言うと、そのままリアムの手を握って煙が立ち上る一帯へと歩いて行く。
「火山か」
「正解」
昔、活火山の近くにあるフレイのダンジョンに行ったことがあった。そこには少し匂いの強い温泉があったことをふと思い出した。
そこでようやく気が付いた。
「ああ、だから温泉があったのか!」
「あ、すっかり説明忘れてた。日本はね、どこを掘っても温泉が出るんじゃって言われてる位温泉が多いんだよ」
ピンときた。
「つまり火山だらけ、ということか?」
「正解! さすがだね!」
列に沿って上へとのんびり登って行く道中、祐介は地球にはプレートがあり、それがもう一つのプレートに入り込んでいる所に日本がある、などと非常に興味深い話をしてくれた。この世界には魔法はないかもしれないが、だが代わりに科学がある。人は何年も何十年も掛けて、ひとつひとつの謎を解明してきたのだ。
リアムは顔を輝かせた。
「面白い!」
そんなリアムを見て、祐介が提案した。
「そうしたら、次の休みには科学の博物館に行こうか? 僕も子供の頃に一度行ったけど、面白かった記憶があるよ」
「行く!」
「あはは、じゃあ決まり」
祐介は笑ってそう言うと、繋いだ手を大振りにした。何だかはしゃいでいる子供みたいだ。
やはり祐介の隣は心地いい。安心するだけでなく、リアムに新たな世界がそこにあることを教えてくれる。そして、リアムが迷わない様に見守ってくれるのだ。
リアムは繋ぐ手に力を込めた。え? という表情になった祐介。
その後祐介が見せた嬉しそうな表情は、きっと一生忘れない。
まだ午前中だというのに、外は蒸し暑かった。これまで湿気とは殆ど無縁な土地で過ごしてきたリアムにとって、先日散々祐介に脅された日本の夏はきつかった。祐介曰く、これはまだ序の口だというのだから末恐ろしい。
ロープウェイ乗り場でロープウェイに乗り換えると、中は差し込む太陽の熱でむっとしていた。祐介がパタパタとパンフレットで扇いでくれなければ、もしかしたらまたふらふらと倒れていたかもしれない。
だが、その温泉卵なるものがある駅を降りると、一気に風が吹き抜けた。
リアムはその風を身体いっぱいに受けた。
何とも言えない臭いが漂っている。風で髪の毛を舞い上がらせているリアムを眩しそうに見た祐介が、これは硫黄の匂いだと教えてくれた。
そんな祐介の頭も、風でぐしゃぐしゃだ。仕事の時は上がっている前髪は、休みの日は何もされていない。
リアムはその祐介の方が好きだった。前髪の間から上目遣いでリアムを見て笑う目が、大好きだった。
祐介が、目に入った髪の毛を指で取ろうとしてうまくいかない。リアムがそれを取ってやると、祐介は「ありがと」と言うと、そのままリアムの手を握って煙が立ち上る一帯へと歩いて行く。
「火山か」
「正解」
昔、活火山の近くにあるフレイのダンジョンに行ったことがあった。そこには少し匂いの強い温泉があったことをふと思い出した。
そこでようやく気が付いた。
「ああ、だから温泉があったのか!」
「あ、すっかり説明忘れてた。日本はね、どこを掘っても温泉が出るんじゃって言われてる位温泉が多いんだよ」
ピンときた。
「つまり火山だらけ、ということか?」
「正解! さすがだね!」
列に沿って上へとのんびり登って行く道中、祐介は地球にはプレートがあり、それがもう一つのプレートに入り込んでいる所に日本がある、などと非常に興味深い話をしてくれた。この世界には魔法はないかもしれないが、だが代わりに科学がある。人は何年も何十年も掛けて、ひとつひとつの謎を解明してきたのだ。
リアムは顔を輝かせた。
「面白い!」
そんなリアムを見て、祐介が提案した。
「そうしたら、次の休みには科学の博物館に行こうか? 僕も子供の頃に一度行ったけど、面白かった記憶があるよ」
「行く!」
「あはは、じゃあ決まり」
祐介は笑ってそう言うと、繋いだ手を大振りにした。何だかはしゃいでいる子供みたいだ。
やはり祐介の隣は心地いい。安心するだけでなく、リアムに新たな世界がそこにあることを教えてくれる。そして、リアムが迷わない様に見守ってくれるのだ。
リアムは繋ぐ手に力を込めた。え? という表情になった祐介。
その後祐介が見せた嬉しそうな表情は、きっと一生忘れない。
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