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第三章 上級編開始
第380話 OLサツキの上級編、ジュリアンの疑惑
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まずはユラが先にギルドのドアを開けて入ると、ジュリアンがごつい腕を上げて挨拶をしてきた。
「よお。今朝も早いな。遅刻のユラにしちゃあ珍しいな」
「二つ名みたいなのを勝手に作るなよ」
後ろから入ってきたサツキとラムを見て、ジュリアンは器用に片眉だけを上げた。
「お、今日もリアムと一緒だったのか。だったら納得だな」
「ユラって本当起きないですもんね」
「やっぱりそうなのか。ほら、じゃあ遅刻のユラに加えて寝坊のユラだな」
「だからその二つ名っぽいのは止めろって」
ユラが笑いながら言った。
一通り笑い合った後、ジュリアンが真顔になってユラに小声で話しかけた。
「冗談は置いておいてさ、ユラ。ここのところ、お前が見知らぬ黒髪の女といちゃついてるって噂になってるぞ」
サツキが固まった。壁耳あり障子に目あり。サツキにとっては知り合いなどほぼいないこの世界だが、考えてみればユラは十五歳で家を飛び出してからもう八年もこの街にいるのだ。当然のことながら、知り合いが沢山いる筈だった。サツキは今の今までそのことに思い至らなかったが、往来で手を繋いだりしていたら当然のことながらその人達に見られる可能性だってあった訳だ。
「それで?」
ユラが答えた。ジュリアンはまだ聞き足りないらしく、更に顔を近付けてきた。
「ユラが一方的にぐいぐい攻めてる風だったってよ。お前になびかない女がいたんだなって、過去にお前に振られた子が笑ってたぜ」
「過去に振った奴? どれだろ?」
如何にもイケメンらしい発言だった。一体どれだけの人を振ってきたんだろうか。サツキがそう思って黙って聞いていると、それはジュリアンも同じ気持ちだったらしい。少し羨ましそうに言った。
「俺もそういう台詞を人生で一回位は言ってみたいよ」
「俺は追われるのは嫌いなんだよ」
でた。例のあれだ。サツキが言った。
「あれでしょ、追いかけて追い詰めて逃さないようにするってやつ」
「さすが、俺のことよく分かってんじゃねえか」
「あまりの発言に驚き過ぎて覚えてるだけだよ」
「相変わらずつれねえの」
ユラがははっと笑うと、ジュリアンが二人の顔を交互に見て、はっとした。サツキを指差すと、口をあんぐり開ける。
「そういやあこの間、リアムが見たことのない黒髪の女の姿でここに来てたよな? ウルスラが見たことのない男の姿になってさ」
サツキは素直に頷いた。お互いの服を交換した奴だ。あれももう遥か昔のことに思える位、その間に色々なことがあった。
「リアム、てことは、噂になってる黒髪の女ってもしかして……!?」
「サツキ、行こうぜ」
ユラがサツキの背中を押した。ジュリアンがユラを引き止める。
「おいユラ! まじか!?」
「さーてね」
ユラがにやりとしつつはぐらかす。
「しかもサツキって、リアム、一体どういうことだ!?」
「それもまた今度な」
ユラが代わりに答えると、サツキをぐいぐい押して中へと入って行った。後ろでジュリアンが「え!? え!?」と言っている声が聞こえていて、ユラはそれを聞いて何が楽しいのか笑いを一所懸命堪えている風だった。
「やべえ、楽しい」
サツキを見上げ、悪戯っ子の様な表情をして言った。
「よお。今朝も早いな。遅刻のユラにしちゃあ珍しいな」
「二つ名みたいなのを勝手に作るなよ」
後ろから入ってきたサツキとラムを見て、ジュリアンは器用に片眉だけを上げた。
「お、今日もリアムと一緒だったのか。だったら納得だな」
「ユラって本当起きないですもんね」
「やっぱりそうなのか。ほら、じゃあ遅刻のユラに加えて寝坊のユラだな」
「だからその二つ名っぽいのは止めろって」
ユラが笑いながら言った。
一通り笑い合った後、ジュリアンが真顔になってユラに小声で話しかけた。
「冗談は置いておいてさ、ユラ。ここのところ、お前が見知らぬ黒髪の女といちゃついてるって噂になってるぞ」
サツキが固まった。壁耳あり障子に目あり。サツキにとっては知り合いなどほぼいないこの世界だが、考えてみればユラは十五歳で家を飛び出してからもう八年もこの街にいるのだ。当然のことながら、知り合いが沢山いる筈だった。サツキは今の今までそのことに思い至らなかったが、往来で手を繋いだりしていたら当然のことながらその人達に見られる可能性だってあった訳だ。
「それで?」
ユラが答えた。ジュリアンはまだ聞き足りないらしく、更に顔を近付けてきた。
「ユラが一方的にぐいぐい攻めてる風だったってよ。お前になびかない女がいたんだなって、過去にお前に振られた子が笑ってたぜ」
「過去に振った奴? どれだろ?」
如何にもイケメンらしい発言だった。一体どれだけの人を振ってきたんだろうか。サツキがそう思って黙って聞いていると、それはジュリアンも同じ気持ちだったらしい。少し羨ましそうに言った。
「俺もそういう台詞を人生で一回位は言ってみたいよ」
「俺は追われるのは嫌いなんだよ」
でた。例のあれだ。サツキが言った。
「あれでしょ、追いかけて追い詰めて逃さないようにするってやつ」
「さすが、俺のことよく分かってんじゃねえか」
「あまりの発言に驚き過ぎて覚えてるだけだよ」
「相変わらずつれねえの」
ユラがははっと笑うと、ジュリアンが二人の顔を交互に見て、はっとした。サツキを指差すと、口をあんぐり開ける。
「そういやあこの間、リアムが見たことのない黒髪の女の姿でここに来てたよな? ウルスラが見たことのない男の姿になってさ」
サツキは素直に頷いた。お互いの服を交換した奴だ。あれももう遥か昔のことに思える位、その間に色々なことがあった。
「リアム、てことは、噂になってる黒髪の女ってもしかして……!?」
「サツキ、行こうぜ」
ユラがサツキの背中を押した。ジュリアンがユラを引き止める。
「おいユラ! まじか!?」
「さーてね」
ユラがにやりとしつつはぐらかす。
「しかもサツキって、リアム、一体どういうことだ!?」
「それもまた今度な」
ユラが代わりに答えると、サツキをぐいぐい押して中へと入って行った。後ろでジュリアンが「え!? え!?」と言っている声が聞こえていて、ユラはそれを聞いて何が楽しいのか笑いを一所懸命堪えている風だった。
「やべえ、楽しい」
サツキを見上げ、悪戯っ子の様な表情をして言った。
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