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第三章 上級編開始
第377話 魔術師リアムの上級編初日、いざ温泉卵に向けて
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祐介は暫くの間、リアムの胸に実に気持ちよさそうに顔を押し付けていた。当然の如くノーブラである。女子の胸に触れる心地よさはリアムとて理解はしているが、実際にその胸が自分に付いておりそこに意中の男性が顔を埋めているこの状況は、嫌ではないが、だがあってはならない状況であろう。息が肌にかかってゾワゾワして仕方ない。
「祐介、離れろ」
「確かめてるから、もうちょっと」
「何を確かめているのだ」
「ちゃんとここにいるってこと」
リアムの肩の力が抜けた。今朝、何も言わず風呂に入ったのが余程響いたとみえる。リアムは祐介の髪を優しく撫で付けると、安心させる様に言った。
「私は勝手には消えん。これからはもう少し私も気を付けよう。祐介が羽田に関して私の心配をしているのはよく分かったから」
「……それ以外にも、前もあった」
「え?」
寝起きだからか、祐介がまるで駄々っ子の様だ。リアムは、祐介の頭に頬を付けた。愛おしくて仕方がない。
「寝てる時に、消えそうな気がした時が、あった」
「――ああ、祐介が先に寝てしまった時か」
豚の男の映画を見た日だ。師と過ごした家の寝室の星空を思い出していると、寝ていた祐介に消えるなと言われた。翌朝になっても、鳥肌を立てて何処にも行くなと縋りつかれた。
その程度には、リアムは祐介に必要とされているのだろうか。だとしたら、嬉しかった。あの時はまだ祐介への恋心を認識してはいなかったが、今あんなことを言われたら。
「それだけじゃない。サツキちゃんは、勝手に色々考えて勝手に決めるから、怖い」
うむ。否めない。パーティーを組んでいる時も、説明が足りないと言われた経験が過去に山の様にあった。考察は魔術師の基本ではあるが、それを口に出すのはあまり得意ではないのは確かだ。
「祐介は、私のことをよく分かっている」
「またそうやって、怖いことを言う」
「怖い? 何がだ」
「僕の知らないところで、勝手に考えて決めるって言ってる様なものでしょ」
そうかもしれない。今も、いずれ祐介から離れようと考えているのだから。
でも今はまだ話す時ではない。
「何かやる時は、ちゃんと話す」
「……うん」
納得してくれただろうか。
「よし、大浴場に行くぞ、祐介!」
「うん」
「ほら離せ」
「……うん」
祐介が、名残惜しそうに離れていった。リアムは努めて明るく言った。
「温泉卵が楽しみだな」
「うん、そうだね」
祐介の顔に笑みが戻った。やれやれだ。
二人は支度をすると、大浴場へと向かうことにした。もうこの後は朝食、その後は出発だ。
「もう着替えも持っていくといいよ」
「また化粧をするのか……」
「じゃあ僕がしてあげようか?」
「出来るのか?」
「僕器用だし、きっと」
「では頼もう」
「へへ、ちょっとやってみたかったんだよね」
祐介の楽しそうな顔が、一瞬郁姉のそれと被った。
「祐介、離れろ」
「確かめてるから、もうちょっと」
「何を確かめているのだ」
「ちゃんとここにいるってこと」
リアムの肩の力が抜けた。今朝、何も言わず風呂に入ったのが余程響いたとみえる。リアムは祐介の髪を優しく撫で付けると、安心させる様に言った。
「私は勝手には消えん。これからはもう少し私も気を付けよう。祐介が羽田に関して私の心配をしているのはよく分かったから」
「……それ以外にも、前もあった」
「え?」
寝起きだからか、祐介がまるで駄々っ子の様だ。リアムは、祐介の頭に頬を付けた。愛おしくて仕方がない。
「寝てる時に、消えそうな気がした時が、あった」
「――ああ、祐介が先に寝てしまった時か」
豚の男の映画を見た日だ。師と過ごした家の寝室の星空を思い出していると、寝ていた祐介に消えるなと言われた。翌朝になっても、鳥肌を立てて何処にも行くなと縋りつかれた。
その程度には、リアムは祐介に必要とされているのだろうか。だとしたら、嬉しかった。あの時はまだ祐介への恋心を認識してはいなかったが、今あんなことを言われたら。
「それだけじゃない。サツキちゃんは、勝手に色々考えて勝手に決めるから、怖い」
うむ。否めない。パーティーを組んでいる時も、説明が足りないと言われた経験が過去に山の様にあった。考察は魔術師の基本ではあるが、それを口に出すのはあまり得意ではないのは確かだ。
「祐介は、私のことをよく分かっている」
「またそうやって、怖いことを言う」
「怖い? 何がだ」
「僕の知らないところで、勝手に考えて決めるって言ってる様なものでしょ」
そうかもしれない。今も、いずれ祐介から離れようと考えているのだから。
でも今はまだ話す時ではない。
「何かやる時は、ちゃんと話す」
「……うん」
納得してくれただろうか。
「よし、大浴場に行くぞ、祐介!」
「うん」
「ほら離せ」
「……うん」
祐介が、名残惜しそうに離れていった。リアムは努めて明るく言った。
「温泉卵が楽しみだな」
「うん、そうだね」
祐介の顔に笑みが戻った。やれやれだ。
二人は支度をすると、大浴場へと向かうことにした。もうこの後は朝食、その後は出発だ。
「もう着替えも持っていくといいよ」
「また化粧をするのか……」
「じゃあ僕がしてあげようか?」
「出来るのか?」
「僕器用だし、きっと」
「では頼もう」
「へへ、ちょっとやってみたかったんだよね」
祐介の楽しそうな顔が、一瞬郁姉のそれと被った。
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