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第三章 上級編開始
第368話 OLサツキの上級編開始
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結局、ユラは家に帰らなかった。
サツキの荷造りを手伝ってくれた後は、マグノリアの中級編魔法集『これであなたも中堅に!ダンジョンでも使える中級魔法』を片手に、ソファーに座ってひたすらサツキに魔術を教えてくれた。
夕飯のアオイロカイモドキの炊き込みご飯は見事な水色だったが、美味しかった。もうこの色のどぎつさは慣れていかねばならないのだろう。最悪、目を瞑ればいい。
そして夜は結局同じベッドで、例の星空を見上げながら寝た。やはり少し寝不足だったのか、寝室に来た時、ユラはもうすでに眠そうだった。おやすみ、そう言って当たり前の様に口にキスをしてきたが、これもサツキを安定させる為の行為だったと分かれば何てことはない。いや、なくはない。やはり滅茶苦茶恥ずかしい。
でも、目的がある。だからサツキは、ユラのキスは拒否しない方がいいんだ、という理解をしたことで、自分の中で逃げなくていい理由付けが出来た。
果たしてユラが望んでキスをしているのかは分からないが、男でも女でもいいと言っている位だから、好きでもない相手にキスをする位は何でもないことなのかもしれない。おっさんのリアムの時ですらしていたことを考えると、チャレンジャーだな、とは思うが。
朝になり、まだ寝ているユラの横で着替えをしようとし、今はサツキ本来の女の姿だったことを思い出した。風呂場へと移動し、昨日買ったスライムで出来たワンピースを着て、準備オッケーだ。後はリアムの赤いローブを身につければ完成である。
朝食用のパンを切って並べ、果物も切って出した。後は玉子とベーコンの様なものを焼けばいいのだが、一向にユラが起きて来ない。ラムは基本常にサツキと一緒なので、サツキが行くところにはぷるぷるしながら付いてきている。
寝室をラムと覗くと、カーテンから仄かに差し込む朝日がユラの顔に真っ直ぐ当たっていた。あれでも起きないのか。サツキは寝室の中に入るとカーテンを全開にし、ベッドの縁に腰掛け、ユラの肩を揺さぶって起こし始めた。
「ユラ、朝だよ。朝ご飯食べよう」
「……んー」
閉じた瞼に落ちる金色のまつ毛の影が美しい。こんな顔で生まれたら、さぞやいい人生なのかな、とは思ったが、ユラに聞いたユラのこれまでの人生は、そこそこのハードモードだ。サイコな親からの逃走、金に困り借金、そしてなりたかった魔術師の適性がなく仕方なく僧侶への方向転換。サツキだったら、もう始めの段階で諦めていそうな内容である。この人は、そういう意味でとてつもなく強い人なのだろう。
ユラの頬をペチペチ叩いた。
「ユラ、起きてよ」
すると、機嫌の悪そうな顔でユラが薄っすらと目を開けると、頬を叩いていたサツキの手を掴んで言った。
「サツキがキスしてくれたら起きる……」
「は?」
何を言っているんだろう、この人は。サツキは手を引こうとした。だが、寝起きとは思えない程の力で逆に引き寄せられてしまった。
「うわっ」
上半身が、ユラの胸の上に乗ってしまった。しまった、顔が近い。
「ほら早く」
「いや、だって、ねえ?」
「お前の安定の為だ、さっさとしろ」
「え、今別に安定してると思うけど」
「いいから」
ユラがサツキを見て、笑った。
サツキの荷造りを手伝ってくれた後は、マグノリアの中級編魔法集『これであなたも中堅に!ダンジョンでも使える中級魔法』を片手に、ソファーに座ってひたすらサツキに魔術を教えてくれた。
夕飯のアオイロカイモドキの炊き込みご飯は見事な水色だったが、美味しかった。もうこの色のどぎつさは慣れていかねばならないのだろう。最悪、目を瞑ればいい。
そして夜は結局同じベッドで、例の星空を見上げながら寝た。やはり少し寝不足だったのか、寝室に来た時、ユラはもうすでに眠そうだった。おやすみ、そう言って当たり前の様に口にキスをしてきたが、これもサツキを安定させる為の行為だったと分かれば何てことはない。いや、なくはない。やはり滅茶苦茶恥ずかしい。
でも、目的がある。だからサツキは、ユラのキスは拒否しない方がいいんだ、という理解をしたことで、自分の中で逃げなくていい理由付けが出来た。
果たしてユラが望んでキスをしているのかは分からないが、男でも女でもいいと言っている位だから、好きでもない相手にキスをする位は何でもないことなのかもしれない。おっさんのリアムの時ですらしていたことを考えると、チャレンジャーだな、とは思うが。
朝になり、まだ寝ているユラの横で着替えをしようとし、今はサツキ本来の女の姿だったことを思い出した。風呂場へと移動し、昨日買ったスライムで出来たワンピースを着て、準備オッケーだ。後はリアムの赤いローブを身につければ完成である。
朝食用のパンを切って並べ、果物も切って出した。後は玉子とベーコンの様なものを焼けばいいのだが、一向にユラが起きて来ない。ラムは基本常にサツキと一緒なので、サツキが行くところにはぷるぷるしながら付いてきている。
寝室をラムと覗くと、カーテンから仄かに差し込む朝日がユラの顔に真っ直ぐ当たっていた。あれでも起きないのか。サツキは寝室の中に入るとカーテンを全開にし、ベッドの縁に腰掛け、ユラの肩を揺さぶって起こし始めた。
「ユラ、朝だよ。朝ご飯食べよう」
「……んー」
閉じた瞼に落ちる金色のまつ毛の影が美しい。こんな顔で生まれたら、さぞやいい人生なのかな、とは思ったが、ユラに聞いたユラのこれまでの人生は、そこそこのハードモードだ。サイコな親からの逃走、金に困り借金、そしてなりたかった魔術師の適性がなく仕方なく僧侶への方向転換。サツキだったら、もう始めの段階で諦めていそうな内容である。この人は、そういう意味でとてつもなく強い人なのだろう。
ユラの頬をペチペチ叩いた。
「ユラ、起きてよ」
すると、機嫌の悪そうな顔でユラが薄っすらと目を開けると、頬を叩いていたサツキの手を掴んで言った。
「サツキがキスしてくれたら起きる……」
「は?」
何を言っているんだろう、この人は。サツキは手を引こうとした。だが、寝起きとは思えない程の力で逆に引き寄せられてしまった。
「うわっ」
上半身が、ユラの胸の上に乗ってしまった。しまった、顔が近い。
「ほら早く」
「いや、だって、ねえ?」
「お前の安定の為だ、さっさとしろ」
「え、今別に安定してると思うけど」
「いいから」
ユラがサツキを見て、笑った。
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