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第二章 中級編開始
第356話 OLサツキの中級編四日目の買い出し中の困惑のユラ
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どうしてこの人は、サツキが悲しくなると「泣いている」と思うのだろう。まるで心を覗き見ている様なことを言うかと思えば、理解していない頓珍漢なことを言ったりもする。だから別に心は読んでいないのは分かるけど、こんなに鋭い人だったとは。
でも、涙は一滴も出ていない。顔には作った笑顔が張り付いている。何故ばれたのか。
「泣いてないよ」
さっきからこれの繰り返しだ。すると、ユラがサツキを優しく抱き締めたまま、尋ねてきた。
「何がそんなに悲しいんだよ。俺といて、どうして悲しくなっちまう様なことを考えるんだよ」
悲しくなったのは、別にユラの所為ではない。サツキが勝手に自分が嫌になって悲しくなっただけだ。
「……別に、ユラといるからじゃないし」
「本当か? 俺の所為じゃない?」
ユラは、自分の所為でサツキが悲しんでいるんじゃないかと思ってしまったらしい。ユラの温かい胸の中にいると、ユラの心臓の音が聞こえてくる。少し早い鼓動がまた子供みたいだな、と思った。
そして思った。この人はやることは滅茶苦茶だが、本当に優しい人なのだと。自分のやりたいことを優先してしまう傾向にはあるが、何だかんだ言ってサツキの為に動いてくれている。お人好しなのかもしれない。だから安心させる様に言った。
「ちょっと考えちゃっただけだよ」
「もうさ、余計なこと考えるなよ」
「そんなこと言われても」
すると、ユラが「あ」と言って顔を上げ、サツキを覗き込んだ。
「そうだ、きっとサツキは暇なんだよ」
「暇……暇? はい?」
また突拍子もないことを。先程までの表情はどこへやら、目がキラキラしている。水色の吸い込まれそうな瞳を見て、目が離せなくなってしまった。綺麗過ぎて。
「だから余計なこと考えるんじゃねえの? よし、そしたら帰ったら中級魔法の暗記といこうか。ぎりぎりまで詰め込んでさ、俺が要所要所で補足説明してやるから、それで明日からバンバン実践といこうぜ」
やっぱりこれは帰るつもりがなさそうだ、ということに気が付いた。ここは釘を刺しておかねばならないだろう。
「ユラ、法衣を取りに行ったり、ユラだって荷物まとめたりあるでしょ? 今夜は私一人で頑張って詰め込んでみるから、ユラはちゃんと一回は家に帰りなよ?」
「じゃあこの後家に寄るからついてきてよ」
「いや、そういうことじゃなくてね」
「なんだよ、俺の親切を無下にすると泣くぞ」
「じゃあ今日は泣いてて下さい」
「何でそうつれないこと言うんだよ。嫌だね。絶対嫌だ」
これじゃまるで駄々っ子だ。どれだけマグノリアの家にいたいんだろうか。本当、子供みたいだ。そう思って、つい笑ってしまった。すると、ユラもつられた様に笑った。
「俺の勝ちだな」
しまった。またやってしまった。サツキが怒った顔を作ってみせると、ユラが鼻の頭に軽くキスをした。……この人はもう、どうしてこうなんだ。
「やった、嬉しそう」
「え、嬉しくないけど」
「嘘つけ。笑ってんじゃねえか」
「え? 笑ってなんか……」
まだ怒った顔を作っているのに、何でこの人は分かるんだろう。今にも頬が緩みそうなことを。
「ほら、機嫌も直ったとこだし、見よう」
ユラはそう言うと、サツキに防具を見せてきた。
でも、涙は一滴も出ていない。顔には作った笑顔が張り付いている。何故ばれたのか。
「泣いてないよ」
さっきからこれの繰り返しだ。すると、ユラがサツキを優しく抱き締めたまま、尋ねてきた。
「何がそんなに悲しいんだよ。俺といて、どうして悲しくなっちまう様なことを考えるんだよ」
悲しくなったのは、別にユラの所為ではない。サツキが勝手に自分が嫌になって悲しくなっただけだ。
「……別に、ユラといるからじゃないし」
「本当か? 俺の所為じゃない?」
ユラは、自分の所為でサツキが悲しんでいるんじゃないかと思ってしまったらしい。ユラの温かい胸の中にいると、ユラの心臓の音が聞こえてくる。少し早い鼓動がまた子供みたいだな、と思った。
そして思った。この人はやることは滅茶苦茶だが、本当に優しい人なのだと。自分のやりたいことを優先してしまう傾向にはあるが、何だかんだ言ってサツキの為に動いてくれている。お人好しなのかもしれない。だから安心させる様に言った。
「ちょっと考えちゃっただけだよ」
「もうさ、余計なこと考えるなよ」
「そんなこと言われても」
すると、ユラが「あ」と言って顔を上げ、サツキを覗き込んだ。
「そうだ、きっとサツキは暇なんだよ」
「暇……暇? はい?」
また突拍子もないことを。先程までの表情はどこへやら、目がキラキラしている。水色の吸い込まれそうな瞳を見て、目が離せなくなってしまった。綺麗過ぎて。
「だから余計なこと考えるんじゃねえの? よし、そしたら帰ったら中級魔法の暗記といこうか。ぎりぎりまで詰め込んでさ、俺が要所要所で補足説明してやるから、それで明日からバンバン実践といこうぜ」
やっぱりこれは帰るつもりがなさそうだ、ということに気が付いた。ここは釘を刺しておかねばならないだろう。
「ユラ、法衣を取りに行ったり、ユラだって荷物まとめたりあるでしょ? 今夜は私一人で頑張って詰め込んでみるから、ユラはちゃんと一回は家に帰りなよ?」
「じゃあこの後家に寄るからついてきてよ」
「いや、そういうことじゃなくてね」
「なんだよ、俺の親切を無下にすると泣くぞ」
「じゃあ今日は泣いてて下さい」
「何でそうつれないこと言うんだよ。嫌だね。絶対嫌だ」
これじゃまるで駄々っ子だ。どれだけマグノリアの家にいたいんだろうか。本当、子供みたいだ。そう思って、つい笑ってしまった。すると、ユラもつられた様に笑った。
「俺の勝ちだな」
しまった。またやってしまった。サツキが怒った顔を作ってみせると、ユラが鼻の頭に軽くキスをした。……この人はもう、どうしてこうなんだ。
「やった、嬉しそう」
「え、嬉しくないけど」
「嘘つけ。笑ってんじゃねえか」
「え? 笑ってなんか……」
まだ怒った顔を作っているのに、何でこの人は分かるんだろう。今にも頬が緩みそうなことを。
「ほら、機嫌も直ったとこだし、見よう」
ユラはそう言うと、サツキに防具を見せてきた。
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