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第二章 中級編開始
第352話 OLサツキの中級編四日目、買い出しへ
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ラムがぐいぐいとユラの足を揺らすので、観念したユラがようやくサツキを降ろした。
「ラムはしつこいんだよ、いいじゃねえかこれ位」
明らかに恋人でもない相手にやるにはこれ位では収まらないことを散々やったユラが、言い切った。
「なーサツキ」
「同意を求めないでくれる?」
「つれねえなあ」
そう言ってユラはいつも通りに笑うのだ。
サツキは切りっぱなしでまな板の上に放置されているアオイロカイモドキを指差して言った。
「あれ、どうするの?」
「あ、忘れてた」
「忘れてた……」
「いやー、つい夢中になっちまって」
はは、と笑われても、どう反応すればいいものやら。夢中になるにしても、相手が違う。
「ちと待ってろ、こいつは暫く塩水につけておかないと苦味が出るから」
ユラはそう言うと、ザルに刻んだアオイロカイモドキを入れると水に浸けた。え? 今言ってることおかしくなかったか? さっきはたまに苦いやつがある位のことを言っていた筈だ。いやいやいやいや。
「いやちょっと待って」
「ん?」
ユラらしい、涼しげなイケメン顔で言われても、今言った内容は明らかにおかしい。
「塩水に付けておかないと、苦味が出るって言った?」
「言ったけど?」
けど、じゃない。
「じゃあ何で私に味見を……」
すると、ユラがあっさりと白状した。
「そんなの、あわよくばああいった感じになりてえなって思ったからに他ねえだろうが」
サツキは絶句した。この人、本当に誰でもいいのかな。本気で思った。だっておかしいだろう。いくらアールとの関係がまだまだ未発展な状態だったにしても、同じパーティーのメンバーにこうも堂々と身体目的であれこれやらかすだろうか。曲がりなりにも仲間なのに。
サツキの呆れ果てた視線をどう理解したのか、ユラが言った。
「言っとくけどな、多分お前が考えてることは間違ってる」
「へ? 何で私の考えを読んでるみたいに言う訳?」
「見れば何となく分かる」
「嘘ばっかり」
「嘘じゃねえよ」
ユラが手を洗って手ぬぐいで拭くと、サツキの肩を抱いて言った。
「ほら、買い物行くんだろ? そう不貞腐れた顔してないで、楽しくいこうぜ」
もうこの人は滅茶苦茶だ。訳が分からない。訳が分からないから混乱しない様に出来るだけ離れていたらきっと楽なのに、なのに。
隣で見上げた時に見える横顔を、自分だけのものにしたいと思う。笑う時に少し前かがみになる姿勢も愛おしいと思う。でも自分の方は向いてもらえないのは分かっている。こんな男だか女だかも分からない、そもそもが何の主張も出来ないモブキャラのサツキなど、イケメンの相手にはなりはしないのだから。
ユラがサツキの手を握った。
「ほら、いくぞ」
でもどっちつかずだ。離れてとも言えず、でも好きだとも言えない。揺れて揺れて、結局どこにもいけない、それがサツキの現状だ。
「……泣くなよ」
「泣いてないよ?」
精一杯、笑って言った。何でこの人はサツキの心が泣いているのが分かるのだろうか。自分に自信を持って、こんな私を好きになってと言えたらどんなにかいいだろう。でも、そんな自信は皆無だから。
「サツキ、泣くな」
「泣いてないってば」
困った顔をしたユラを見て、サツキは更に自己嫌悪に陥った。
「ラムはしつこいんだよ、いいじゃねえかこれ位」
明らかに恋人でもない相手にやるにはこれ位では収まらないことを散々やったユラが、言い切った。
「なーサツキ」
「同意を求めないでくれる?」
「つれねえなあ」
そう言ってユラはいつも通りに笑うのだ。
サツキは切りっぱなしでまな板の上に放置されているアオイロカイモドキを指差して言った。
「あれ、どうするの?」
「あ、忘れてた」
「忘れてた……」
「いやー、つい夢中になっちまって」
はは、と笑われても、どう反応すればいいものやら。夢中になるにしても、相手が違う。
「ちと待ってろ、こいつは暫く塩水につけておかないと苦味が出るから」
ユラはそう言うと、ザルに刻んだアオイロカイモドキを入れると水に浸けた。え? 今言ってることおかしくなかったか? さっきはたまに苦いやつがある位のことを言っていた筈だ。いやいやいやいや。
「いやちょっと待って」
「ん?」
ユラらしい、涼しげなイケメン顔で言われても、今言った内容は明らかにおかしい。
「塩水に付けておかないと、苦味が出るって言った?」
「言ったけど?」
けど、じゃない。
「じゃあ何で私に味見を……」
すると、ユラがあっさりと白状した。
「そんなの、あわよくばああいった感じになりてえなって思ったからに他ねえだろうが」
サツキは絶句した。この人、本当に誰でもいいのかな。本気で思った。だっておかしいだろう。いくらアールとの関係がまだまだ未発展な状態だったにしても、同じパーティーのメンバーにこうも堂々と身体目的であれこれやらかすだろうか。曲がりなりにも仲間なのに。
サツキの呆れ果てた視線をどう理解したのか、ユラが言った。
「言っとくけどな、多分お前が考えてることは間違ってる」
「へ? 何で私の考えを読んでるみたいに言う訳?」
「見れば何となく分かる」
「嘘ばっかり」
「嘘じゃねえよ」
ユラが手を洗って手ぬぐいで拭くと、サツキの肩を抱いて言った。
「ほら、買い物行くんだろ? そう不貞腐れた顔してないで、楽しくいこうぜ」
もうこの人は滅茶苦茶だ。訳が分からない。訳が分からないから混乱しない様に出来るだけ離れていたらきっと楽なのに、なのに。
隣で見上げた時に見える横顔を、自分だけのものにしたいと思う。笑う時に少し前かがみになる姿勢も愛おしいと思う。でも自分の方は向いてもらえないのは分かっている。こんな男だか女だかも分からない、そもそもが何の主張も出来ないモブキャラのサツキなど、イケメンの相手にはなりはしないのだから。
ユラがサツキの手を握った。
「ほら、いくぞ」
でもどっちつかずだ。離れてとも言えず、でも好きだとも言えない。揺れて揺れて、結局どこにもいけない、それがサツキの現状だ。
「……泣くなよ」
「泣いてないよ?」
精一杯、笑って言った。何でこの人はサツキの心が泣いているのが分かるのだろうか。自分に自信を持って、こんな私を好きになってと言えたらどんなにかいいだろう。でも、そんな自信は皆無だから。
「サツキ、泣くな」
「泣いてないってば」
困った顔をしたユラを見て、サツキは更に自己嫌悪に陥った。
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