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第二章 中級編開始
第339話 魔術師リアムの中級編五日目、宿到着
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祐介は顔を真っ赤にして、暫く無言でリアムの手を引っ張り上げていた。坂を更に登ったその先に、その宿はあった。
「サツキちゃん、あそこだよ」
「おお、なかなか風情がある宿だな」
「ね。写真より大分古びてる、それがネット予約」
祐介がぽつりと言った。
「どういうことだ?」
「中は綺麗だと思うよ。最近改築したって書いてあるから」
「なに、散々ダンジョンで雑魚寝してきた私だ、多少古びてようがむしろ趣があっていいというものだ」
「逞しい……」
「でなければ冒険者などやってられん」
「何かその話詳しく聞きたいかも。面白そう」
「そうか? では今夜たっぷりと話してやろう」
「やった」
祐介が嬉しそうに笑ったので、リアムも嬉しくなって笑った。ダンジョンであった出来事の話は、腐る程あった。いつか誰かに話したいと思った面白かった出来事も、師が亡くなってからは話す相手がおらず言わずにいたものが山の様にあった。
「ここだね。チェックイン……えーと、受付は僕がするから、サツキちゃんまだ顔色悪いから椅子に座って待ってて」
リアムは大人しくそれに従うことにした。寝て少しはマシになったものの、まだ何だかふわふわしていた。もしかしたらサツキの身体は湿気に弱いのか? と思い始めていた。他に思い当たる節がない。
宿に入ってすぐの所に受付があり、その少し奥側に座り心地の良さそうなソファーが並んでいた。中は焦茶の木造で、全体的に落ち着いた雰囲気である。
ソファーの前まで来ると、祐介はそこにリアムを座らせ、荷物を置き、リアムの頭をくしゃ、と撫でると「待ってて」と言って受付に向かった。リアムはその頼もしい後ろ姿を眺めつつ、ソファーの背もたれに深くもたれかかった。想像通り、ふかふかだった。
祐介が受付で宿の者とにこやかに会話を交わしているのが見えた。何やら楽しそうである。一体何を話しているのだろうか。祐介は駅のキオスクの年配女性にすら好かれる朗らかな性格の持ち主である。あの受付の女性も、きっと祐介のことはすぐに気に入ってしまうに違いない。
「まーた笑っておる」
不貞腐れた声が自分の身体から漏れ、リアムは驚いた。
「え?」
何だ、今のは。にこやかな祐介がいいと思っているのに、何故今リアムは笑っている祐介を眺めていて苛ついたのか。
リアムは冷静に分析することにした。分析も魔術師の大事な仕事の一つである。
リアムは考えに考えた。そして一つの結論に達する。というか、どう考えても答えはそれしかない。その自分の心の動きが、たとえ理解不能だとしても。
リアムは、祐介が笑いかけているのが、楽しそうに話している相手が自分でないことが嫌であったらしい。これは言い換えるならば、嫉妬であろう。
嫉妬。祐介に……?
リアムの首がかあっと熱くなった。
祐介が笑顔のまま軽く会釈すると、鍵らしき物を手に持ちリアムの方に駆け足で戻ってきた。そして、リアムの顔を見て言った。
「顔色、赤みが増してるね。よかった」
「う、うむ」
「じゃあ部屋に行こうか」
「うむ」
祐介は荷物を持つと、にっこりと笑った。
「サツキちゃん、あそこだよ」
「おお、なかなか風情がある宿だな」
「ね。写真より大分古びてる、それがネット予約」
祐介がぽつりと言った。
「どういうことだ?」
「中は綺麗だと思うよ。最近改築したって書いてあるから」
「なに、散々ダンジョンで雑魚寝してきた私だ、多少古びてようがむしろ趣があっていいというものだ」
「逞しい……」
「でなければ冒険者などやってられん」
「何かその話詳しく聞きたいかも。面白そう」
「そうか? では今夜たっぷりと話してやろう」
「やった」
祐介が嬉しそうに笑ったので、リアムも嬉しくなって笑った。ダンジョンであった出来事の話は、腐る程あった。いつか誰かに話したいと思った面白かった出来事も、師が亡くなってからは話す相手がおらず言わずにいたものが山の様にあった。
「ここだね。チェックイン……えーと、受付は僕がするから、サツキちゃんまだ顔色悪いから椅子に座って待ってて」
リアムは大人しくそれに従うことにした。寝て少しはマシになったものの、まだ何だかふわふわしていた。もしかしたらサツキの身体は湿気に弱いのか? と思い始めていた。他に思い当たる節がない。
宿に入ってすぐの所に受付があり、その少し奥側に座り心地の良さそうなソファーが並んでいた。中は焦茶の木造で、全体的に落ち着いた雰囲気である。
ソファーの前まで来ると、祐介はそこにリアムを座らせ、荷物を置き、リアムの頭をくしゃ、と撫でると「待ってて」と言って受付に向かった。リアムはその頼もしい後ろ姿を眺めつつ、ソファーの背もたれに深くもたれかかった。想像通り、ふかふかだった。
祐介が受付で宿の者とにこやかに会話を交わしているのが見えた。何やら楽しそうである。一体何を話しているのだろうか。祐介は駅のキオスクの年配女性にすら好かれる朗らかな性格の持ち主である。あの受付の女性も、きっと祐介のことはすぐに気に入ってしまうに違いない。
「まーた笑っておる」
不貞腐れた声が自分の身体から漏れ、リアムは驚いた。
「え?」
何だ、今のは。にこやかな祐介がいいと思っているのに、何故今リアムは笑っている祐介を眺めていて苛ついたのか。
リアムは冷静に分析することにした。分析も魔術師の大事な仕事の一つである。
リアムは考えに考えた。そして一つの結論に達する。というか、どう考えても答えはそれしかない。その自分の心の動きが、たとえ理解不能だとしても。
リアムは、祐介が笑いかけているのが、楽しそうに話している相手が自分でないことが嫌であったらしい。これは言い換えるならば、嫉妬であろう。
嫉妬。祐介に……?
リアムの首がかあっと熱くなった。
祐介が笑顔のまま軽く会釈すると、鍵らしき物を手に持ちリアムの方に駆け足で戻ってきた。そして、リアムの顔を見て言った。
「顔色、赤みが増してるね。よかった」
「う、うむ」
「じゃあ部屋に行こうか」
「うむ」
祐介は荷物を持つと、にっこりと笑った。
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