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第二章 中級編開始
第333話 魔術師リアムの中級編五日目の温泉街の続き
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ずっと一緒にいたいと思っているか。
今、確かに祐介はそうリアムに尋ねてきた。リアムは思わず祐介の目を真っ直ぐに見てしまい、それが失敗だったことに気が付いた。
祐介は、いつものにこにこで穏やかな笑顔はしておらず、狂おしいまでに切なそうな表情をしていたのだ。リアムがむずむずとしてしまって居心地が悪くなる、あの顔だった。
そしてここで目を逸してしまったら、一緒にいたくないと言ってしまうも同義である。いたい。リアムは祐介とまだまだ一緒にいたい。でも、祐介には未来があって、他の女子と知り合う機会をこの中途半端なリアムが奪っていい訳もなく、だが。
「ゆ……」
「ゆ?」
立ち止まってリアムを見つめる祐介の目が真剣過ぎて、リアムの心に焦りが生まれる。落ち着け、落ち着くのだリアム!
「祐介が、私といたいと思う限りは」
相手に判断を任せるだけの非常に狡い言葉が、口から飛び出てきた。祐介はリアムのその言葉の意味について考えているのだろうか、暫し無言になった後、ふ、と笑顔に戻った。
「ん、まあ今はそれでいいや」
「今は?」
「うん、今は」
にっこりと笑う様はいつも通りだが、手に籠もる力だけはいつもよりも強かった。
「何か会社にもお土産買わないとだね。明日帰りに買うけど、目星付けておこうか」
「あ、ああ、そうだな」
祐介はそう言うと、土産物が並ぶ店舗の中へと踏み入った。その背中が少し怒っている様に見えるのは、リアムの気の所為であろうか。
土産物を祐介に手を引かれながら眺めつつ、リアムはつらつらと考える。祐介は本当にいい奴だ。こんなどうしようもない状況に陥ったリアムに手を差し伸べてくれ、羽田からも身を呈して守ってくれ、今だとてこうやってリアムの我儘に付き合って温泉まで連れてきてくれている。
祐介は、きっと寂しいのだろう。リアムがパーティーのメンバーに囲まれながらもどこか常に寂しさを感じていた様に、祐介も職場の人間と日々を過ごしながらも、心の中に空虚を抱えていたのかもしれない。
リアムに足りなかったのは大切な物の存在だ。半生を共に生きた師はもうなく、帰宅しても目に映るのは師との思い出ばかり。見るとつい思い出す。それ程に色んなとんでもないことを次から次へとやらかした師だったから、それは記憶に強烈に彫り込まれていたから。
だから逃げるかの様にダンジョンに潜った。潜って潜って、その結果ドラゴンに焼かれ、ここに辿り着いた。
まるで、祐介の空虚に導かれたかの様に。
そしてふと、リアムは疑問を感じた。最後に放った氷の魔法。確かに放った筈だったが、目に見た記憶がなかったのだ。魔力が尽きかけようとしていたからだと思っていたが。
「いや、まさかな」
すると、祐介が振り返った。
「何が?」
「いや、何でもない。――祐介、これは一体何という食べ物だ?」
「温泉饅頭。甘いよ」
「うむ……」
「サツキちゃんなら塩辛とかがいいかもねー」
塩辛。如何にもリアムが好きそうな名前である。祐介が手を引っ張って連れて行くのを、リアムはわくわくしてついて行くことにしたのだった。
今、確かに祐介はそうリアムに尋ねてきた。リアムは思わず祐介の目を真っ直ぐに見てしまい、それが失敗だったことに気が付いた。
祐介は、いつものにこにこで穏やかな笑顔はしておらず、狂おしいまでに切なそうな表情をしていたのだ。リアムがむずむずとしてしまって居心地が悪くなる、あの顔だった。
そしてここで目を逸してしまったら、一緒にいたくないと言ってしまうも同義である。いたい。リアムは祐介とまだまだ一緒にいたい。でも、祐介には未来があって、他の女子と知り合う機会をこの中途半端なリアムが奪っていい訳もなく、だが。
「ゆ……」
「ゆ?」
立ち止まってリアムを見つめる祐介の目が真剣過ぎて、リアムの心に焦りが生まれる。落ち着け、落ち着くのだリアム!
「祐介が、私といたいと思う限りは」
相手に判断を任せるだけの非常に狡い言葉が、口から飛び出てきた。祐介はリアムのその言葉の意味について考えているのだろうか、暫し無言になった後、ふ、と笑顔に戻った。
「ん、まあ今はそれでいいや」
「今は?」
「うん、今は」
にっこりと笑う様はいつも通りだが、手に籠もる力だけはいつもよりも強かった。
「何か会社にもお土産買わないとだね。明日帰りに買うけど、目星付けておこうか」
「あ、ああ、そうだな」
祐介はそう言うと、土産物が並ぶ店舗の中へと踏み入った。その背中が少し怒っている様に見えるのは、リアムの気の所為であろうか。
土産物を祐介に手を引かれながら眺めつつ、リアムはつらつらと考える。祐介は本当にいい奴だ。こんなどうしようもない状況に陥ったリアムに手を差し伸べてくれ、羽田からも身を呈して守ってくれ、今だとてこうやってリアムの我儘に付き合って温泉まで連れてきてくれている。
祐介は、きっと寂しいのだろう。リアムがパーティーのメンバーに囲まれながらもどこか常に寂しさを感じていた様に、祐介も職場の人間と日々を過ごしながらも、心の中に空虚を抱えていたのかもしれない。
リアムに足りなかったのは大切な物の存在だ。半生を共に生きた師はもうなく、帰宅しても目に映るのは師との思い出ばかり。見るとつい思い出す。それ程に色んなとんでもないことを次から次へとやらかした師だったから、それは記憶に強烈に彫り込まれていたから。
だから逃げるかの様にダンジョンに潜った。潜って潜って、その結果ドラゴンに焼かれ、ここに辿り着いた。
まるで、祐介の空虚に導かれたかの様に。
そしてふと、リアムは疑問を感じた。最後に放った氷の魔法。確かに放った筈だったが、目に見た記憶がなかったのだ。魔力が尽きかけようとしていたからだと思っていたが。
「いや、まさかな」
すると、祐介が振り返った。
「何が?」
「いや、何でもない。――祐介、これは一体何という食べ物だ?」
「温泉饅頭。甘いよ」
「うむ……」
「サツキちゃんなら塩辛とかがいいかもねー」
塩辛。如何にもリアムが好きそうな名前である。祐介が手を引っ張って連れて行くのを、リアムはわくわくしてついて行くことにしたのだった。
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