333 / 731
第二章 中級編開始
第331話 魔術師リアムの中級編五日目の温泉街
しおりを挟む
改札を降りると、そこには異国情緒溢れる街並みが広がっていた。
「少し歩いてみようか?」
「ああ、そうしよう」
人が多いので、祐介の影に隠れる様にして歩道を行く。すれ違う女性達の視線がやたらと祐介にいっているのは、気の所為だろうか。
「祐介、お前はこの辺りでは有名なのか?」
「はい?」
祐介が素っ頓狂な声を出して振り返った。
「なに言ってんのサツキちゃん」
「先程から皆祐介のことをチラチラと見ているではないか。あ、ほら今も!」
三人程の若い女性のグループが祐介を見ていたが、こちらがそれに気付くとさっと目線を逸らした。
「……あー」
祐介は分かった様だ。
「ていうかさ、サツキちゃんイケメンだって豪語する位なんだからこういう視線って感じてたんじゃないの?」
「こういう視線?」
リアムは基本、道を行く時は前を向いて歩く。よって周りの人間の視線は入らない。
「はて」
「……うん、まあそうだと思った。そうだよね、サツキちゃんてそういう感じだもんね」
何か含みのある言い方の様に聞こえるのは気の所為だろうか。
「基本私は口頭で伝えてもらいたい方ではある」
「読めるは読めるけどね、読み方微妙だしね」
「何の話だ?」
「鈍感って話」
「鈍感!? 私がか!?」
心外だったので、反論することにした。
「私だって気付くぞ! 電車に乗ると男達が私の胸に視線を集中させるのも知っているしな!」
リアムがそう高らかに言うと、祐介の顔が思い切り歪んだ。
「うわ……それまじ?」
「祐介は気付かなかったのか?」
「……うん。え、そんな見られてるの? うっわー嫌だな」
心底嫌そうな顔をしている。
「何故祐介が嫌なのだ」
「嫌でしょ」
「まあ気持ちのいいものではないな」
「じゃあ僕も嫌」
成程、リアムが嫌だろうと思ってのこの表情か。やはり祐介は思いやりのある人間だ。
「サツキちゃんはさ、僕が通りがかりの人にジロジロ見られるとどう思う?」
祐介がリアムを見下ろして聞いた。微かに感じる、何かを期待しているかの様な雰囲気。さて何を期待しているのだろうか。
「それが羨望の眼差しであれば、隣にいる者としては誇らしい。それが蔑みの眼差しであれば、隣にいる者として戦うことも辞さない」
「戦うの? 見てる人と?」
「当然だ」
リアムは祐介を真っ直ぐに見た。
「私は祐介の隣にいることに誇りを持っている。それを馬鹿にする様な者がいたら怒るのは当然であろう」
「サツキちゃん……」
祐介は感動した風に瞳を輝かせているが、祐介は自己評価が低いのではないか。
なのでリアムは言った。
「祐介、自信を持て。祐介はとても素晴らしい人間でいい男だ」
祐介が驚いた顔をし、暫く黙っていたが。
「……サツキちゃん、ずっと一緒に居たいと思ってくれてるってことかな?」
少し頬を赤らめた祐介が、ボソボソと言った。
「少し歩いてみようか?」
「ああ、そうしよう」
人が多いので、祐介の影に隠れる様にして歩道を行く。すれ違う女性達の視線がやたらと祐介にいっているのは、気の所為だろうか。
「祐介、お前はこの辺りでは有名なのか?」
「はい?」
祐介が素っ頓狂な声を出して振り返った。
「なに言ってんのサツキちゃん」
「先程から皆祐介のことをチラチラと見ているではないか。あ、ほら今も!」
三人程の若い女性のグループが祐介を見ていたが、こちらがそれに気付くとさっと目線を逸らした。
「……あー」
祐介は分かった様だ。
「ていうかさ、サツキちゃんイケメンだって豪語する位なんだからこういう視線って感じてたんじゃないの?」
「こういう視線?」
リアムは基本、道を行く時は前を向いて歩く。よって周りの人間の視線は入らない。
「はて」
「……うん、まあそうだと思った。そうだよね、サツキちゃんてそういう感じだもんね」
何か含みのある言い方の様に聞こえるのは気の所為だろうか。
「基本私は口頭で伝えてもらいたい方ではある」
「読めるは読めるけどね、読み方微妙だしね」
「何の話だ?」
「鈍感って話」
「鈍感!? 私がか!?」
心外だったので、反論することにした。
「私だって気付くぞ! 電車に乗ると男達が私の胸に視線を集中させるのも知っているしな!」
リアムがそう高らかに言うと、祐介の顔が思い切り歪んだ。
「うわ……それまじ?」
「祐介は気付かなかったのか?」
「……うん。え、そんな見られてるの? うっわー嫌だな」
心底嫌そうな顔をしている。
「何故祐介が嫌なのだ」
「嫌でしょ」
「まあ気持ちのいいものではないな」
「じゃあ僕も嫌」
成程、リアムが嫌だろうと思ってのこの表情か。やはり祐介は思いやりのある人間だ。
「サツキちゃんはさ、僕が通りがかりの人にジロジロ見られるとどう思う?」
祐介がリアムを見下ろして聞いた。微かに感じる、何かを期待しているかの様な雰囲気。さて何を期待しているのだろうか。
「それが羨望の眼差しであれば、隣にいる者としては誇らしい。それが蔑みの眼差しであれば、隣にいる者として戦うことも辞さない」
「戦うの? 見てる人と?」
「当然だ」
リアムは祐介を真っ直ぐに見た。
「私は祐介の隣にいることに誇りを持っている。それを馬鹿にする様な者がいたら怒るのは当然であろう」
「サツキちゃん……」
祐介は感動した風に瞳を輝かせているが、祐介は自己評価が低いのではないか。
なのでリアムは言った。
「祐介、自信を持て。祐介はとても素晴らしい人間でいい男だ」
祐介が驚いた顔をし、暫く黙っていたが。
「……サツキちゃん、ずっと一緒に居たいと思ってくれてるってことかな?」
少し頬を赤らめた祐介が、ボソボソと言った。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる