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第二章 中級編開始
第303話 魔術師リアムの中級編五日目の波乱の続き
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羽田の叫びには、悪意が詰まっている様に聞こえた。リアムに何か害を及ぼしてやろうという悪意だ。酔っ払っているだけではこんな目にならないだろう、そう思える位、リアムを見る羽田の目にも悪意が見えて取れた。
羽田がにやりと口の端を歪ませる。後ろで、頭を強く打ったのだろう、更にぼたぼたと大量の鼻血を出しながら咳き込んでいる祐介を一瞬振り返り、リアムに向かって更に近付いてきた。ゆっくりと、獲物を追い詰める猛獣の様に。
「俺が初めての男になってやろうと思ってたのによ。あ、でも今からでも別にいいか。丁度いい部屋も目の前にあるし」
「やめろ!!」
壁に血だらけの手を付きながら、祐介が立ち上がった。立ち上がるな祐介、こちらは何とかして見せる、そう言いたかったが声が出てこなかった。何故なら、声を出した途端に別の言葉が口から飛び出てしまうのが分かっていたからだ。
祐介助けて、と。
ゆらりと羽田が振り返ると、立ち上がった祐介の髪を掴むと思い切り腹に膝蹴りを入れた。ドン! とまた祐介が壁にぶつかった。
「グアッ!」
「てんで弱えじゃねえか、格好つけやがってだっせえの」
「サツキちゃんに……手を出すな!」
祐介の声ははっきりとしているが、どうも先程から目線が定まっていない。恐らく始めに殴られた時に、軽く脳震盪を起こしているのかもしれなかった。このままだと拙い。祐介が危ない。何とかしたいのはやまやまだが、咄嗟に思いつく初級魔法が皆羽田を殺してしまいそうなやつばかりだ。何か……何かないか。焦りがリアムを襲う。
羽田がまた振り向くと、悪魔の形相で笑った。
「さあサツキちゃん、どっちの部屋がお好みかい? どうせなら彼氏の部屋にしようか? 山岸と俺とどっちがうまいかさ、比べてみたらいいんじゃねえか? あははははっ」
「お前は……お前は一体何でそんなことを!!」
時間稼ぎに、疑問を投げかけた。羽田には、サツキを狙っていた理由がある筈だ。中身がリアムになり、祐介と付き合っていることになってから羽田が気が狂った様な行動を取る様になったのには、何かが思い通りにいかなくなったからではないのか。
「何で? じゃあ教えてあげようか」
羽田がにたにたと笑う。
「あんたを俺がやって、その写真を撮る為だよ!」
「……は?」
「あれー? 分からない? 写真だよ? あ、映像もいいよねー。ばら撒いちゃうって言ったらさ、サツキちゃん言うこと聞いてくれそうじゃない? そうしたらさ、俺のお願いも何でも聞いてくれるだろ?」
「お……お願い?」
羽田が何を言っているのかが分からなかった。
「そう。社長のお相手にどうかなって」
リアムは目を見張った。にたにた顔の羽田が酒臭い息を吐きながら近付いてくると、リアムの手首を掴んだ。
「離せ!」
「離す訳ねえだろうが」
羽田がそう言った、その瞬間。
「そこまでよ!」
アパートの二階へ繋がっている階段から、高らかな声が鳴り響いた。
羽田がにやりと口の端を歪ませる。後ろで、頭を強く打ったのだろう、更にぼたぼたと大量の鼻血を出しながら咳き込んでいる祐介を一瞬振り返り、リアムに向かって更に近付いてきた。ゆっくりと、獲物を追い詰める猛獣の様に。
「俺が初めての男になってやろうと思ってたのによ。あ、でも今からでも別にいいか。丁度いい部屋も目の前にあるし」
「やめろ!!」
壁に血だらけの手を付きながら、祐介が立ち上がった。立ち上がるな祐介、こちらは何とかして見せる、そう言いたかったが声が出てこなかった。何故なら、声を出した途端に別の言葉が口から飛び出てしまうのが分かっていたからだ。
祐介助けて、と。
ゆらりと羽田が振り返ると、立ち上がった祐介の髪を掴むと思い切り腹に膝蹴りを入れた。ドン! とまた祐介が壁にぶつかった。
「グアッ!」
「てんで弱えじゃねえか、格好つけやがってだっせえの」
「サツキちゃんに……手を出すな!」
祐介の声ははっきりとしているが、どうも先程から目線が定まっていない。恐らく始めに殴られた時に、軽く脳震盪を起こしているのかもしれなかった。このままだと拙い。祐介が危ない。何とかしたいのはやまやまだが、咄嗟に思いつく初級魔法が皆羽田を殺してしまいそうなやつばかりだ。何か……何かないか。焦りがリアムを襲う。
羽田がまた振り向くと、悪魔の形相で笑った。
「さあサツキちゃん、どっちの部屋がお好みかい? どうせなら彼氏の部屋にしようか? 山岸と俺とどっちがうまいかさ、比べてみたらいいんじゃねえか? あははははっ」
「お前は……お前は一体何でそんなことを!!」
時間稼ぎに、疑問を投げかけた。羽田には、サツキを狙っていた理由がある筈だ。中身がリアムになり、祐介と付き合っていることになってから羽田が気が狂った様な行動を取る様になったのには、何かが思い通りにいかなくなったからではないのか。
「何で? じゃあ教えてあげようか」
羽田がにたにたと笑う。
「あんたを俺がやって、その写真を撮る為だよ!」
「……は?」
「あれー? 分からない? 写真だよ? あ、映像もいいよねー。ばら撒いちゃうって言ったらさ、サツキちゃん言うこと聞いてくれそうじゃない? そうしたらさ、俺のお願いも何でも聞いてくれるだろ?」
「お……お願い?」
羽田が何を言っているのかが分からなかった。
「そう。社長のお相手にどうかなって」
リアムは目を見張った。にたにた顔の羽田が酒臭い息を吐きながら近付いてくると、リアムの手首を掴んだ。
「離せ!」
「離す訳ねえだろうが」
羽田がそう言った、その瞬間。
「そこまでよ!」
アパートの二階へ繋がっている階段から、高らかな声が鳴り響いた。
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