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第二章 中級編開始
第297話 魔術師リアムの中級編五日目の朝
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目を開けると、祐介のベッドに横になっていた。横には祐介が丸まってすうすう寝ている。
リアムが身体を起こそうとすると、頭がズキっと痛んだ。二日酔いだ。リアムは横になったまま、昨夜のことを思い返してみた。木佐ちゃんが真っ赤になって潮崎と次の店に行ったのは覚えている。その後タクシーなる物に乗り込み、祐介と何か話した様な。何だっただろうか。
祐介の家に上がった記憶は一切ない。タクシーの中で寝てしまったのだろうか?
すると、祐介が薄らと目を開けた。その目は何かを言いたそうである。
多分、文句を。
「おはようサツキちゃん。どこまで覚えてる?」
「おはよう、祐介。あの、木佐ちゃん達と別れた辺りから……」
「え、そんな前から? じゃあ僕の決め台詞は……」
祐介が愕然とした表情をしてみせた。
「決め台詞とは何のことだ?」
「……今この場ではもうちょっと恥ずかしいというか」
「何か恥ずかしい様なことを白状したのか?」
「まあそうとも言えます」
「一体何を言ったのだ」
「……いや、今はちょっと」
「それ程恥ずべきことを口にしたのか? それは問題だぞ祐介」
「……いや別に恥ずべきこととかじゃないんだけど。あ! ていうかサツキちゃん今誤魔化そうとしてるでしょ!」
祐介が眉間に皺を寄せて指摘した。どうしてバレたのだろうか。
「……何故分かった」
「矢継ぎ早にポンポン言葉が返ってくるから怪しいなって」
「やるな祐介」
「やるなじゃないよサツキちゃん」
祐介はそう言うと起き上がり、その場で正座をした。激しい寝癖が付いているが、指摘したくとも出来ない恐ろしげな雰囲気がそこにはあった。
「座る」
「……はい」
リアムが布団から這い出ると、見慣れない服を着ていることに気が付いた。大きめの黒のTシャツ。下は下着一枚だ。
正座をしつつ、リアムは祐介を見た。
「まさか祐介と……?」
「前後不詳の子を襲う程落ちぶれてません」
むすっとした顔をして祐介が言った。リアムは確かスーツを着ていた筈だ。スーツは……あった。祐介のハンガーラックにきちんと掛けてあった。ブラジャーと共に。
「あれは祐介が脱がせたのか?」
「同意なしにはしません」
「私は同意したのか?」
「勝手に脱いだのを、僕が掛けた」
「なんと」
恐らく早く脱ぎたかったのだろう。あれらは非常に肩の凝る代物である。酒を飲んでいなくとも、家に着いた途端脱ぎたくなるのだ。こればかりは祐介には分かるまい。
「窮屈だったのだろう」
リアムはしみじみと言った。だが祐介はお構いなしだ。
「だからって脱ぐ? 僕んちで堂々とパンツ一丁になったよ? 僕が慌ててTシャツ着せたけどさ、それもなかなか腕通さないから僕が着せてあげてさ、もう拷問だったよあれ」
「禁欲とは時に拷問に近いものがあるからな」
「からな、じゃないよ」
段々足が痺れてきた。そろそろおしまいにしたい。
「それは大変申し訳なかった。肝に銘じ以後同じ過ちを犯さぬ様心がける」
「あのさ」
「うん?」
「もう次こそ、次はないからね」
頬を赤らめながら、祐介が言った。
リアムが身体を起こそうとすると、頭がズキっと痛んだ。二日酔いだ。リアムは横になったまま、昨夜のことを思い返してみた。木佐ちゃんが真っ赤になって潮崎と次の店に行ったのは覚えている。その後タクシーなる物に乗り込み、祐介と何か話した様な。何だっただろうか。
祐介の家に上がった記憶は一切ない。タクシーの中で寝てしまったのだろうか?
すると、祐介が薄らと目を開けた。その目は何かを言いたそうである。
多分、文句を。
「おはようサツキちゃん。どこまで覚えてる?」
「おはよう、祐介。あの、木佐ちゃん達と別れた辺りから……」
「え、そんな前から? じゃあ僕の決め台詞は……」
祐介が愕然とした表情をしてみせた。
「決め台詞とは何のことだ?」
「……今この場ではもうちょっと恥ずかしいというか」
「何か恥ずかしい様なことを白状したのか?」
「まあそうとも言えます」
「一体何を言ったのだ」
「……いや、今はちょっと」
「それ程恥ずべきことを口にしたのか? それは問題だぞ祐介」
「……いや別に恥ずべきこととかじゃないんだけど。あ! ていうかサツキちゃん今誤魔化そうとしてるでしょ!」
祐介が眉間に皺を寄せて指摘した。どうしてバレたのだろうか。
「……何故分かった」
「矢継ぎ早にポンポン言葉が返ってくるから怪しいなって」
「やるな祐介」
「やるなじゃないよサツキちゃん」
祐介はそう言うと起き上がり、その場で正座をした。激しい寝癖が付いているが、指摘したくとも出来ない恐ろしげな雰囲気がそこにはあった。
「座る」
「……はい」
リアムが布団から這い出ると、見慣れない服を着ていることに気が付いた。大きめの黒のTシャツ。下は下着一枚だ。
正座をしつつ、リアムは祐介を見た。
「まさか祐介と……?」
「前後不詳の子を襲う程落ちぶれてません」
むすっとした顔をして祐介が言った。リアムは確かスーツを着ていた筈だ。スーツは……あった。祐介のハンガーラックにきちんと掛けてあった。ブラジャーと共に。
「あれは祐介が脱がせたのか?」
「同意なしにはしません」
「私は同意したのか?」
「勝手に脱いだのを、僕が掛けた」
「なんと」
恐らく早く脱ぎたかったのだろう。あれらは非常に肩の凝る代物である。酒を飲んでいなくとも、家に着いた途端脱ぎたくなるのだ。こればかりは祐介には分かるまい。
「窮屈だったのだろう」
リアムはしみじみと言った。だが祐介はお構いなしだ。
「だからって脱ぐ? 僕んちで堂々とパンツ一丁になったよ? 僕が慌ててTシャツ着せたけどさ、それもなかなか腕通さないから僕が着せてあげてさ、もう拷問だったよあれ」
「禁欲とは時に拷問に近いものがあるからな」
「からな、じゃないよ」
段々足が痺れてきた。そろそろおしまいにしたい。
「それは大変申し訳なかった。肝に銘じ以後同じ過ちを犯さぬ様心がける」
「あのさ」
「うん?」
「もう次こそ、次はないからね」
頬を赤らめながら、祐介が言った。
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