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第二章 中級編開始
第275話 魔術師リアムの中級編四日目の飲み会は本題へ
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羽田の話題が出てくるとは思っていなかったのだろうか? とすると馬鹿な男である。
リアムは続けた。足が変わらずぐいぐい押し付けられているのは正直気に食わないが、今はそこよりも早く羽田のことを聞き出したい。
「久住社長もご存知じで……すよね? 先日私の家にいきなり来て、祐介……山岸さんの家の扉を蹴り飛ばしたこと」
「……ああ、聞いたよ」
久住社長がぐびっとビールを飲んだ。もうあまり残っていない。リアムがちらりと山口を見ると、小さく頷いて急いで次を頼みに行った。ここで酒を切らして逃してはならん。それは直感だった。
く
祐介の視線を感じるが、敢えて無視した。
「山岸さんを殴ったことは」
「あああれ? 聞いてるけど、本当? 見たところ怪我とかないみたいだけど」
しまった、痛々しそうだったから治してしまったが、あれは証拠として取っておくべきものだったのか!?
すると、祐介がガサガサとポケットからスマホを取り出し、何やら操作を始めた。
「久住社長、これが証拠ですよ」
祐介が社長に見せたものは、祐介の血が滲んだ口の端と痣になった頬の写真だった。いつの間に撮っていたのか。
祐介がにっこりと笑った。
「それにこの場にいる皆さんは目撃者ですけど、自分の会社の社員の言葉を信じないなんてこと、まさか久住社長がされる訳ないですよね?」
「は、はは、勿論だよ。……なあ皆、山岸くんの言ってることは正しいのかな? ほら僕、潮崎さんの話しか聞いてないから」
「嫌だなあ社長、僕が嘘つく訳ないでしょうが」
潮崎がゆるりと反論した。
ビールの追加が届いたので、久住社長の前に置く。
潮崎の隣にいる田端が、いつものあの可もなく不可もなく感情の読みにくい顔で、しれっと言った。
「そういえば小耳に挟んだんですけど、その羽田さん。久住社長の弱み握ってるから言うこと聞くって豪語しているらしいですよねえ」
そう言ってビールを飲み干すと、「おかわり頼んで!」と山口に頼んだ。
いきなり核心をついてきた田端に、リアムは性急過ぎはしないかとも思ったが、他の社員達も談話を止めてこちらに注目している。ここまで来たら今がその時だろう。
潮崎がそれに乗る。
「ああそれ、僕は直接言われたなあ」
「私も聞いてましたよ、それ」
木佐ちゃんが即座に援護する。さすがだ木佐ちゃん。
「で、どうなんです? 久住社長」
「どうなのって」
ひく、と久住社長の頬が引き攣った。すると、それまで静かにビールをちびちびと飲んでいた元ラガーマンの橋本が、低いいい声で言った。
「今週、私が展示場の当番で数日外している内に、彼は随分と騒いだみたいですね」
口調はとても穏やかだ。だがとてつもない威圧感がそこにはあった。橋本はこの場にいる社員を軽く見回した後、久住社長に視線を戻して言った。
「皆、私に彼が何をやったか報告しにくるんですよね。何故か分かります?」
橋本の有無を言わせない雰囲気に、隣の久住社長が思わず唾を飲み込む音が聞こえた。
リアムは続けた。足が変わらずぐいぐい押し付けられているのは正直気に食わないが、今はそこよりも早く羽田のことを聞き出したい。
「久住社長もご存知じで……すよね? 先日私の家にいきなり来て、祐介……山岸さんの家の扉を蹴り飛ばしたこと」
「……ああ、聞いたよ」
久住社長がぐびっとビールを飲んだ。もうあまり残っていない。リアムがちらりと山口を見ると、小さく頷いて急いで次を頼みに行った。ここで酒を切らして逃してはならん。それは直感だった。
く
祐介の視線を感じるが、敢えて無視した。
「山岸さんを殴ったことは」
「あああれ? 聞いてるけど、本当? 見たところ怪我とかないみたいだけど」
しまった、痛々しそうだったから治してしまったが、あれは証拠として取っておくべきものだったのか!?
すると、祐介がガサガサとポケットからスマホを取り出し、何やら操作を始めた。
「久住社長、これが証拠ですよ」
祐介が社長に見せたものは、祐介の血が滲んだ口の端と痣になった頬の写真だった。いつの間に撮っていたのか。
祐介がにっこりと笑った。
「それにこの場にいる皆さんは目撃者ですけど、自分の会社の社員の言葉を信じないなんてこと、まさか久住社長がされる訳ないですよね?」
「は、はは、勿論だよ。……なあ皆、山岸くんの言ってることは正しいのかな? ほら僕、潮崎さんの話しか聞いてないから」
「嫌だなあ社長、僕が嘘つく訳ないでしょうが」
潮崎がゆるりと反論した。
ビールの追加が届いたので、久住社長の前に置く。
潮崎の隣にいる田端が、いつものあの可もなく不可もなく感情の読みにくい顔で、しれっと言った。
「そういえば小耳に挟んだんですけど、その羽田さん。久住社長の弱み握ってるから言うこと聞くって豪語しているらしいですよねえ」
そう言ってビールを飲み干すと、「おかわり頼んで!」と山口に頼んだ。
いきなり核心をついてきた田端に、リアムは性急過ぎはしないかとも思ったが、他の社員達も談話を止めてこちらに注目している。ここまで来たら今がその時だろう。
潮崎がそれに乗る。
「ああそれ、僕は直接言われたなあ」
「私も聞いてましたよ、それ」
木佐ちゃんが即座に援護する。さすがだ木佐ちゃん。
「で、どうなんです? 久住社長」
「どうなのって」
ひく、と久住社長の頬が引き攣った。すると、それまで静かにビールをちびちびと飲んでいた元ラガーマンの橋本が、低いいい声で言った。
「今週、私が展示場の当番で数日外している内に、彼は随分と騒いだみたいですね」
口調はとても穏やかだ。だがとてつもない威圧感がそこにはあった。橋本はこの場にいる社員を軽く見回した後、久住社長に視線を戻して言った。
「皆、私に彼が何をやったか報告しにくるんですよね。何故か分かります?」
橋本の有無を言わせない雰囲気に、隣の久住社長が思わず唾を飲み込む音が聞こえた。
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