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第二章 中級編開始
第271話 魔術師リアムの中級編四日目の飲み会開始から暫くの後
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ビールのジョッキが全員に行き渡ると、松田が「社長! 乾杯のご挨拶を!」とお膳立てた。久住社長はそれを聞くと、ちょっと遠慮する様な雰囲気を醸し出しつつ当然自分がやることだと言わんばかりに堂々と乾杯の挨拶を始めた。
「今日は久々のお誘いありがとう。僕から幹事の佐川くんに気持ちを渡してあるから、皆思う存分食べて飲んで下さい。乾杯!」
「「乾杯!」」
すると皆が当然の様に立ち上がって社長の元へと真っ先に向かい、グラスを合わせていく。リアムはその光景に正直なところかなり、いや大分ドン引きしたが、これも羽田の行ないを正す為の一環と思えば平然とした顔をするしか道はない。元々が愛想笑いなど無縁だったリアムだが、ここは目的の為、社員一丸となって事に取り組むべきである。
ということで、頑張って笑顔を作ってまずは隣の席の久住社長と乾杯をすると、久住社長の周りに群がっていた社員達に次々と乾杯の挨拶をされてしまい一向に祐介とも木佐ちゃんとも乾杯が出来ない。社員達の腕の間から時折見える祐介は、男性の中では一番年が下だからだろうか、わざわざ立ち上がって会釈をしつつ一人ひとり乾杯をして行っている。そしてその間、誰一人としてビールに口を付けていない。
これでは泡が消えてしまう。
全員が一通り乾杯の挨拶をし終わると、立っていた祐介が隣に戻ってきてリアムに向かって微笑んだ。
「サツキちゃん、乾杯」
「……乾杯」
ようやく始めの一口である。飲み会というものは、かくも始めの一口まで時間が掛かるものなのか。リアムは内心驚いていたが、周りを見ると誰一人それに疑問を感じている者はいないようだ。これが文化というものなのだろう。
大分泡の消えてしまったビールをぐびっと飲む。喉をこの少し苦味がある液体が通る瞬間、これが最高だ。リアムの世界でもこのビールに似た様な色味のものはあったが、甘かった。あまり甘い物が得意ではないリアムが好んで飲んでいたのはもっぱらワインである。
このサツキの身体では、ワインの様な強い酒はきっと受け付けない。それが惜しまれた。
祐介も相当喉が乾いていたのだろう、ネクタイを緩めながらビールのジョッキを一気に半分程飲み干すと、唇の上に白い泡が付いている。
「祐介、泡が付いているぞ……ではなく付いてる、よ」
「はは、一気に飲んじゃったから」
「子供みたいだ……ね、祐介」
「そう?」
リアムがそう言いながらおしぼりを手に持ち祐介の口元を拭いてやろうとし、祐介も顔を近付けたその瞬間。
ぐい、と肩を引き寄せる手があった。久住社長だった。
「今日は久々のお誘いありがとう。僕から幹事の佐川くんに気持ちを渡してあるから、皆思う存分食べて飲んで下さい。乾杯!」
「「乾杯!」」
すると皆が当然の様に立ち上がって社長の元へと真っ先に向かい、グラスを合わせていく。リアムはその光景に正直なところかなり、いや大分ドン引きしたが、これも羽田の行ないを正す為の一環と思えば平然とした顔をするしか道はない。元々が愛想笑いなど無縁だったリアムだが、ここは目的の為、社員一丸となって事に取り組むべきである。
ということで、頑張って笑顔を作ってまずは隣の席の久住社長と乾杯をすると、久住社長の周りに群がっていた社員達に次々と乾杯の挨拶をされてしまい一向に祐介とも木佐ちゃんとも乾杯が出来ない。社員達の腕の間から時折見える祐介は、男性の中では一番年が下だからだろうか、わざわざ立ち上がって会釈をしつつ一人ひとり乾杯をして行っている。そしてその間、誰一人としてビールに口を付けていない。
これでは泡が消えてしまう。
全員が一通り乾杯の挨拶をし終わると、立っていた祐介が隣に戻ってきてリアムに向かって微笑んだ。
「サツキちゃん、乾杯」
「……乾杯」
ようやく始めの一口である。飲み会というものは、かくも始めの一口まで時間が掛かるものなのか。リアムは内心驚いていたが、周りを見ると誰一人それに疑問を感じている者はいないようだ。これが文化というものなのだろう。
大分泡の消えてしまったビールをぐびっと飲む。喉をこの少し苦味がある液体が通る瞬間、これが最高だ。リアムの世界でもこのビールに似た様な色味のものはあったが、甘かった。あまり甘い物が得意ではないリアムが好んで飲んでいたのはもっぱらワインである。
このサツキの身体では、ワインの様な強い酒はきっと受け付けない。それが惜しまれた。
祐介も相当喉が乾いていたのだろう、ネクタイを緩めながらビールのジョッキを一気に半分程飲み干すと、唇の上に白い泡が付いている。
「祐介、泡が付いているぞ……ではなく付いてる、よ」
「はは、一気に飲んじゃったから」
「子供みたいだ……ね、祐介」
「そう?」
リアムがそう言いながらおしぼりを手に持ち祐介の口元を拭いてやろうとし、祐介も顔を近付けたその瞬間。
ぐい、と肩を引き寄せる手があった。久住社長だった。
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