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第二章 中級編開始
第268話 OLサツキの中級編三日目の酒盛り後半
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一瞬一瞬を、一所懸命生きる。
ユラのその言葉は、サツキの胸に突き刺さった。
すると、ユラが困った様な顔になった。
「何で泣くんだよ」
「泣いてないよ」
涙は出ていない筈だ。指で目元を触ってみるが、やはり濡れていない。
「泣いてないもん」
「……あー」
そう言うと、ユラはまた目を擦りだした。
「また目がおかしいの?」
「いや、おかしくはないから大丈夫だ。心配するな」
「心配なんかしてないよ」
「嘘つけ」
ユラがはは、と小さく笑った。心配なんか、していない。何でもないことの様な顔をしてみせているんだから。
「……悪いな、俺の言い方はきついらしいから」
「別に平気だよ」
「平気な顔じゃねえだろうが」
「平気だってば、しつこいな」
平気だ。だってただ気付かされただけだから。サツキはちっとも一所懸命になんか生きていなかったことに。嫌なことから逃げられないから、目を逸してただ怠惰に生きてきただけなことに。何一つ、頑張ってこなかった。それにすら気付かずにこれまで生きてきたことに、我ながら驚いただけのことだ。
でもそうか、自分は一旦死んだのだ。死んで、だから今ここにいるサツキはリアムに転生した別人という見方も出来るかもしれない。だから前のサツキとは違って、少し頑張ってみようとか楽しんでみようとか思う気持ちが生まれたのかもしれない。
ユラがサツキをじっと見つめている。何か言えばいいのに。普段は余計なことばかり口にする癖に、人の顔色を窺って黙り込んだりするなんてユラらしくないったらありゃしない。
「……パチパチスライムワインおかわり欲しい」
居心地が悪すぎて、全く別のことが口から飛び出してきた。でもユラはそれに安心したのか、無防備な程の優しい笑顔を見せた。
「ほら、飲め飲め」
「私も今日は飲むもんね」
「明日はギルトは午前中集合だっけか? ま、リアムは酒強いし大丈夫だろ」
「この身体になってそれは本当に嬉しいな」
「なに? 弱かったの?」
「うん。もう滅茶苦茶弱かった。二杯飲んたら次の日頭痛したし、三杯飲むと記憶が吹っ飛ぶし」
「お前それ何もされなかったのか?」
「んー、多分」
「多分、て」
ユラが眉を顰めた。まあ、そう思うのも分かる。
「服が大丈夫だったから多分大丈夫かな。それに私暗い子だったし、職場のおじさん達はベタベタ触ってきたけど、幸いお隣さんが実は庇ってくれてたみたいだし」
「誰、お隣さんて」
「ほら、ダンジョンに行く前にウルスラが変身してた人だよ」
「男じゃねえか」
「いい人だったよ。いっつも困った顔して、それでもいやらしいおじさん達から守ってくれてたな、と今思えば思う」
羽田からは明らかに守ってくれていた。まあ隣の家のよしみもあるのだろうが、嫌な飲み会の帰りはよく潮崎と三人で帰ったものだ。サツキは殆ど後ろをついて行くだけだったけど。
あの人には迷惑ばかりかけた。今頃、何をしているのだろうか。
懐かしく思ったその時、ユラがリアムの手首をぎゅっと掴んだ。
ユラのその言葉は、サツキの胸に突き刺さった。
すると、ユラが困った様な顔になった。
「何で泣くんだよ」
「泣いてないよ」
涙は出ていない筈だ。指で目元を触ってみるが、やはり濡れていない。
「泣いてないもん」
「……あー」
そう言うと、ユラはまた目を擦りだした。
「また目がおかしいの?」
「いや、おかしくはないから大丈夫だ。心配するな」
「心配なんかしてないよ」
「嘘つけ」
ユラがはは、と小さく笑った。心配なんか、していない。何でもないことの様な顔をしてみせているんだから。
「……悪いな、俺の言い方はきついらしいから」
「別に平気だよ」
「平気な顔じゃねえだろうが」
「平気だってば、しつこいな」
平気だ。だってただ気付かされただけだから。サツキはちっとも一所懸命になんか生きていなかったことに。嫌なことから逃げられないから、目を逸してただ怠惰に生きてきただけなことに。何一つ、頑張ってこなかった。それにすら気付かずにこれまで生きてきたことに、我ながら驚いただけのことだ。
でもそうか、自分は一旦死んだのだ。死んで、だから今ここにいるサツキはリアムに転生した別人という見方も出来るかもしれない。だから前のサツキとは違って、少し頑張ってみようとか楽しんでみようとか思う気持ちが生まれたのかもしれない。
ユラがサツキをじっと見つめている。何か言えばいいのに。普段は余計なことばかり口にする癖に、人の顔色を窺って黙り込んだりするなんてユラらしくないったらありゃしない。
「……パチパチスライムワインおかわり欲しい」
居心地が悪すぎて、全く別のことが口から飛び出してきた。でもユラはそれに安心したのか、無防備な程の優しい笑顔を見せた。
「ほら、飲め飲め」
「私も今日は飲むもんね」
「明日はギルトは午前中集合だっけか? ま、リアムは酒強いし大丈夫だろ」
「この身体になってそれは本当に嬉しいな」
「なに? 弱かったの?」
「うん。もう滅茶苦茶弱かった。二杯飲んたら次の日頭痛したし、三杯飲むと記憶が吹っ飛ぶし」
「お前それ何もされなかったのか?」
「んー、多分」
「多分、て」
ユラが眉を顰めた。まあ、そう思うのも分かる。
「服が大丈夫だったから多分大丈夫かな。それに私暗い子だったし、職場のおじさん達はベタベタ触ってきたけど、幸いお隣さんが実は庇ってくれてたみたいだし」
「誰、お隣さんて」
「ほら、ダンジョンに行く前にウルスラが変身してた人だよ」
「男じゃねえか」
「いい人だったよ。いっつも困った顔して、それでもいやらしいおじさん達から守ってくれてたな、と今思えば思う」
羽田からは明らかに守ってくれていた。まあ隣の家のよしみもあるのだろうが、嫌な飲み会の帰りはよく潮崎と三人で帰ったものだ。サツキは殆ど後ろをついて行くだけだったけど。
あの人には迷惑ばかりかけた。今頃、何をしているのだろうか。
懐かしく思ったその時、ユラがリアムの手首をぎゅっと掴んだ。
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