265 / 731
第二章 中級編開始
第264話 OLサツキの中級編三日目の夕飯
しおりを挟む
ユラは手際良くアルゴ蜥蜴の肉入り野菜煮込みを皿に盛りつけた。見た目はポトフである。
少し前のサツキなら、蜥蜴を食べるなんてとんでもない、と拒否をしてしまっていたかもしれないが、あのダンジョンという特殊な雰囲気の中で初めて食べたからだろうか、殆ど抵抗なく食べることが出来た。
一度食べてしまえば、あとはこの旨さに肉の前身が何だったかなどもう関係なくなった。
食事は取らないラムも一人は寂しいのか、食卓の椅子に座るとにこにこしながら足をぷらぷらさせている。
ユラがもう一度酒を二人のグラスに注ぐと言った。
「じゃあ食おうぜ」
「うん! いただきます!」
まずはひと口。うおお、美味しい! 塩味の中に甘みのある出汁が滲み出て、堪らなく美味しい。
サツキはあまりの美味しさに幸せいっぱいになり、思わず笑みを浮かべてしまった。するとそんなサツキの様子を眺めていたユラが苦笑する。
「お前って本当分かり易いよな」
それは単純だという意味ではなかろうか。
サツキは反論した。
「そんなことないよ。私だって色々考えてるんだから」
言いながらパンを千切って口に放り込む。うーん、美味。
「よく言うよ。今だってパンが美味いって喜んでるじゃねえか」
「心読まないでくれる?」
そんなに顔に出ているだろうか。リアムの渋いイケメン顔でそんなに分かり易い顔をしてしまったら、イメージが崩れてしまうかもしれない。少し渋そうな顔をしてみようか。
「今度は百面相やってるしさ」
ユラが可笑しそうにケラケラと笑う。ここに来てからのユラはご機嫌だ。変なことをすることもなく、まあスライム風呂には入ってたけど、にこやかだしこのユラなら好きだ。
サツキの視線に気付いたのか、傾けていたグラスが止まった。
「なに」
「いや、ご機嫌だなと思って」
「そりゃ当然だろ。マグノリアの家だぞ? 俺が長年憧れ続けた人の家にいられる、もうそれだけで飯が食えるもんな」
「あはは、本当にマグノリアが好きなんだねえ」
「だってさ」
真面目な顔に戻ると、ユラは身を乗り出してきた。これから語るぞ感が半端ない。
「あの人発想が独特だろ?」
「確かに」
サツキは即答した。独特というか紙一重というか子供っぽいというか。
「実験なんて口実じゃないかってこともバンバンやってたしさ、凄えなこの人って思ったんだよ」
「ある意味凄いよね、あの思い切りの良さ」
「だろー? 本当リアムが羨ましかったなあ」
くい、と酒を飲み干すと、ユラが少し悔しそうに言った。
「一緒のパーティーになったから、色々と聞いてやろうと思ったんだけどな。リアムにあれこれ聞くと、答えてくれるんだけどその後すっごい寂しそうな顔をするから、段々聞き辛くなっちゃってさ」
「淋しそう?」
ユラが頷いた。
「リアムは親に半ば捨てられたみたいなもんでさ、家族はマグノリアだけだったんだよ。そのマグノリアも死んじゃって、この家は思い出だらけだろうし。だから聞くのを止めた」
そう言うユラも、寂しそうだった。
少し前のサツキなら、蜥蜴を食べるなんてとんでもない、と拒否をしてしまっていたかもしれないが、あのダンジョンという特殊な雰囲気の中で初めて食べたからだろうか、殆ど抵抗なく食べることが出来た。
一度食べてしまえば、あとはこの旨さに肉の前身が何だったかなどもう関係なくなった。
食事は取らないラムも一人は寂しいのか、食卓の椅子に座るとにこにこしながら足をぷらぷらさせている。
ユラがもう一度酒を二人のグラスに注ぐと言った。
「じゃあ食おうぜ」
「うん! いただきます!」
まずはひと口。うおお、美味しい! 塩味の中に甘みのある出汁が滲み出て、堪らなく美味しい。
サツキはあまりの美味しさに幸せいっぱいになり、思わず笑みを浮かべてしまった。するとそんなサツキの様子を眺めていたユラが苦笑する。
「お前って本当分かり易いよな」
それは単純だという意味ではなかろうか。
サツキは反論した。
「そんなことないよ。私だって色々考えてるんだから」
言いながらパンを千切って口に放り込む。うーん、美味。
「よく言うよ。今だってパンが美味いって喜んでるじゃねえか」
「心読まないでくれる?」
そんなに顔に出ているだろうか。リアムの渋いイケメン顔でそんなに分かり易い顔をしてしまったら、イメージが崩れてしまうかもしれない。少し渋そうな顔をしてみようか。
「今度は百面相やってるしさ」
ユラが可笑しそうにケラケラと笑う。ここに来てからのユラはご機嫌だ。変なことをすることもなく、まあスライム風呂には入ってたけど、にこやかだしこのユラなら好きだ。
サツキの視線に気付いたのか、傾けていたグラスが止まった。
「なに」
「いや、ご機嫌だなと思って」
「そりゃ当然だろ。マグノリアの家だぞ? 俺が長年憧れ続けた人の家にいられる、もうそれだけで飯が食えるもんな」
「あはは、本当にマグノリアが好きなんだねえ」
「だってさ」
真面目な顔に戻ると、ユラは身を乗り出してきた。これから語るぞ感が半端ない。
「あの人発想が独特だろ?」
「確かに」
サツキは即答した。独特というか紙一重というか子供っぽいというか。
「実験なんて口実じゃないかってこともバンバンやってたしさ、凄えなこの人って思ったんだよ」
「ある意味凄いよね、あの思い切りの良さ」
「だろー? 本当リアムが羨ましかったなあ」
くい、と酒を飲み干すと、ユラが少し悔しそうに言った。
「一緒のパーティーになったから、色々と聞いてやろうと思ったんだけどな。リアムにあれこれ聞くと、答えてくれるんだけどその後すっごい寂しそうな顔をするから、段々聞き辛くなっちゃってさ」
「淋しそう?」
ユラが頷いた。
「リアムは親に半ば捨てられたみたいなもんでさ、家族はマグノリアだけだったんだよ。そのマグノリアも死んじゃって、この家は思い出だらけだろうし。だから聞くのを止めた」
そう言うユラも、寂しそうだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる