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第二章 中級編開始

第256話 OLサツキの中級編三日目の風呂はスライム

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 男同士とはいえ、中身はサツキである。素っ裸を見られるのは本意ではない。

 従って、咄嗟に後ろを向き、落ちたタオルを拾った。

「……あー、サツキ、その風呂さ」

 背後のユラも、さすがに戸惑っている様だった。

「……うん」
「詰まるから、流す時は上からお湯を足して薄めてくれ」
「詰まる……まあ詰まりそうだね」
「流すのに時間かかってさ」

 道理で長風呂だった訳だ。

「ちなみにそれで髪を洗うとベタベタになるから洗わない方がいい」
「うん、そんな気はしてた」

 そもそもどうしてそんなものを風呂に溜めようと思った。ユラもだが、マグノリアよ。

「ただ暑い時にはスーッとして風呂上がりは気持ちがいいから、暑い日に何かいい考えがないかとマグノリアが考え抜いた結果がこれだったんだ」
「考え抜いてこれ?」
「サツキ、これは男の浪漫だ」
「いやこれはただの子供の願望でしょ」
「サツキはまだまだだな」

 ふ、と格好つけて言われても。それにこれを理解出来る位なら、男の浪漫なんて理解出来なくて結構だった。

「じゃ、ま、俺酒買ってくるから、まあごゆっくり」
「はあ……」

 ふー、と長い息を吐きながら、ユラがドアの向こうに消えて行った。ほかほかのスライム風呂を見る。慌てて止めたので半分も溜まっていないのが救いだが。

 サツキはそうっと足を入れた。ぬるっと怪しげな感触がするが、でもまあ確かに言われてみれば肌がスースーして気持ちいいかもしれない。今はアールの家にいるだろうミニ怪獣スライムの須藤さんの中身だと思うと若干引くが、まあこれは須藤さんではない。

 そして、暫く浸かっていると、思ったよりも悪くなかった。

 マグノリアのどの本にこのことが書いてあるのだろうか。後でユラに聞いてみよう。少し、そうほんの少しだけ興味が湧いた、それだけだ。

 でも、と思わず笑みを漏らす。マグノリアはこれで楽しめただろうが、果たしてリアムの反応はどうだったんだろう。どうもリアムはサツキと似ていて真面目な様だったので、これも後でマグノリアを叱ったんじゃないか、そんな気がした。

 鑑定士のリュシカは、サツキとリアムが似通った波長を持つと言っていた。その二人が同時に死を認識したその時に、各々のいかりの元に導かれたとか何とか。

 そこでサツキは、その意味のおかしさにふと気が付いた。

 何故、サツキの碇はこちらの世界にあったのか。そして何故リアムの碇はサツキの世界にあったのか? 違う世界なのに、さも運命付けられたことの様に。

 ユラに意見を求めようか、そう思ってからすぐに首を横に振った。駄目だ、ユラは目に見えるものしか信じない主義だと繰り返し言っていたじゃないか。運命とかいう言葉を言った途端、あの冷たい目で何を言われるか分かったもんじゃない。

「碇を見つけて離さなければ、ここにいられる……」

 言い換えれば、碇を見つけなければいずれ元の世界に戻ってしまうということだ。リアムの方は碇に強く繋ぎ止められていると言っていた。そこにヒントがありそうだった。

 やはりリアムに直接会って、確認したかった。
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