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第二章 中級編開始
第217話 魔術師リアムの中級編三日目突入
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祐介といることで、心が落ち着いた。祐介もリアムのその様子を見てもう大丈夫だと思ったのか、その日は早めにサツキの家へとリアムを送っていった。
扉の前でリアムが鍵を開けるのを待ってくれているその姿は、見守られている様で心底安心出来た。朝から幾度となく失態を見せたリアムだったが、それでもこうして温かい目で見てもらえている事実がリアムを勇気付けた。
鍵を開け扉を開き玄関に入ると、祐介が腕で扉を押さえ、上半身だけ家の中に入れて言った。
「サツキちゃん、僕は親じゃないけどさ」
「うん?」
「子供っぽいかもしれないけど、親っぽいことなら出来るよ」
「どういうことだ?」
「ちょっとこっち来て」
祐介が呼ぶので振り向きつつ近付くと、祐介が頭にポンと手を乗せた。これはいつもやっていることだが。
すると、おでこに軽いキスをした。
「……へ?」
祐介が少し照れた様な顔で、頭に置いていた手を離した。
「世の中の親って子供にこういうおやすみの挨拶をするんじゃないかなって」
「祐介はされたのか?」
「記憶にない」
祐介はそう言うと、ふふ、と笑った。
「おやすみ。いい夢見てね」
そして、手を振りながら扉を閉めた。リアムは呆然としながら、それでも鍵を掛けた。歯磨きをし、目覚まし時計を設定し、部屋の電気を暗くして布団を被った。
これは一体どういう感情によるものか。リアムの顔からは、なかなか笑みが消えなかった。
そして見る、夢。リアムの世界にいる時は、殆どが一人でいる夢だった。あれをしなければ、これをしよう。追い詰められている様な焦りを覚える様な夢ばかりだった記憶しかない。だがこちらの世界に来てからは、よく祐介が出てくる様になった。
振り返ると祐介がにこにこと笑ってくれている。だからリアムはまた前を向いて進むのだ。
その日見た夢にも祐介はいて、リアムはそれを嬉しく思った。
◇
目覚まし時計の音と共に起床すると、まずは顔を洗う。昨日散々泣いてしまったが、瞼は多少腫れぼったいものの化粧をすれば何とか誤魔化せる程度だったことに少し安心した。出社も三日目ともなると、慣れたものだ。昨日の内に用意しておいたスーツを着用し、今日こそやってみせる、ストッキング。
リアムはふう、と息を一つ吐き精神統一すると、おもむろにストッキングを手に取り爪先を通し始めた。昨日祐介がやっていたあの指の向き。あれを参考にするのだ。爪を立ててはならない。その瞬間、このジャイアントウォームの幼体が吐き出す糸の様な儚い物体は裂かれる。それだけはもう避けねばならない。
何度か拳で手繰り上げ、腹までぴったりと納まった時のこの達成感。リアムは両方の拳をぐっと握り締めた。すると、ガチャ、と鍵が開けられる音。拙い、廊下でやるのではなかった。
「サツキちゃんおはよう、入って……」
リアムの捲られたスカートの中を、祐介はがっつりと見た。
扉の前でリアムが鍵を開けるのを待ってくれているその姿は、見守られている様で心底安心出来た。朝から幾度となく失態を見せたリアムだったが、それでもこうして温かい目で見てもらえている事実がリアムを勇気付けた。
鍵を開け扉を開き玄関に入ると、祐介が腕で扉を押さえ、上半身だけ家の中に入れて言った。
「サツキちゃん、僕は親じゃないけどさ」
「うん?」
「子供っぽいかもしれないけど、親っぽいことなら出来るよ」
「どういうことだ?」
「ちょっとこっち来て」
祐介が呼ぶので振り向きつつ近付くと、祐介が頭にポンと手を乗せた。これはいつもやっていることだが。
すると、おでこに軽いキスをした。
「……へ?」
祐介が少し照れた様な顔で、頭に置いていた手を離した。
「世の中の親って子供にこういうおやすみの挨拶をするんじゃないかなって」
「祐介はされたのか?」
「記憶にない」
祐介はそう言うと、ふふ、と笑った。
「おやすみ。いい夢見てね」
そして、手を振りながら扉を閉めた。リアムは呆然としながら、それでも鍵を掛けた。歯磨きをし、目覚まし時計を設定し、部屋の電気を暗くして布団を被った。
これは一体どういう感情によるものか。リアムの顔からは、なかなか笑みが消えなかった。
そして見る、夢。リアムの世界にいる時は、殆どが一人でいる夢だった。あれをしなければ、これをしよう。追い詰められている様な焦りを覚える様な夢ばかりだった記憶しかない。だがこちらの世界に来てからは、よく祐介が出てくる様になった。
振り返ると祐介がにこにこと笑ってくれている。だからリアムはまた前を向いて進むのだ。
その日見た夢にも祐介はいて、リアムはそれを嬉しく思った。
◇
目覚まし時計の音と共に起床すると、まずは顔を洗う。昨日散々泣いてしまったが、瞼は多少腫れぼったいものの化粧をすれば何とか誤魔化せる程度だったことに少し安心した。出社も三日目ともなると、慣れたものだ。昨日の内に用意しておいたスーツを着用し、今日こそやってみせる、ストッキング。
リアムはふう、と息を一つ吐き精神統一すると、おもむろにストッキングを手に取り爪先を通し始めた。昨日祐介がやっていたあの指の向き。あれを参考にするのだ。爪を立ててはならない。その瞬間、このジャイアントウォームの幼体が吐き出す糸の様な儚い物体は裂かれる。それだけはもう避けねばならない。
何度か拳で手繰り上げ、腹までぴったりと納まった時のこの達成感。リアムは両方の拳をぐっと握り締めた。すると、ガチャ、と鍵が開けられる音。拙い、廊下でやるのではなかった。
「サツキちゃんおはよう、入って……」
リアムの捲られたスカートの中を、祐介はがっつりと見た。
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