212 / 731
第二章 中級編開始
第211話 魔術師リアムの中級編二日目夜の治療
しおりを挟む
蕎麦なる食べ物は非常に美味であったが、やや塩みが多い様な気がした。すると、「通はちょんちょんと付ける程度らしいよ」と祐介が言った。蕎麦の食べ方一つにも流儀があるのか。侮りがたし、和食。
蕎麦にかき揚げ、天ぷらに、今日の味噌汁は玉ねぎ、人参、キャベツ入り。祐介曰く、余っていた野菜をぶっ込んだとのことだが、それにしても恐ろしくしっくりくる味噌のこの調整力。豆腐とワカメの日本の心とやらも素晴らしいが、それよりも素晴らしいのはこの味噌という代物であろう。この汎用性というか懐の広さは、祐介を思い起こさせた。
「祐介は味噌だな」
「は? ごめん意味が全然分かんない」
「祐介、映画の前にもう一度頬を治そうか」
「え、うん、それは嬉しいけど僕の質問」
「気恥ずかしいではないか、流してくれ」
「味噌が何故気恥ずかしいのかを是非知りたいんだけど……」
「いいから!」
「……はい」
リアムが祐介を尊敬の念で見ていることを知られてしまうと、何というか自分が若造に戻ったかの様に感じ少し照れるのだ。いや実際サツキという祐介よりも年下の身体になってしまった以上は祐介よりも確実に若造な訳であるが、そういうことではなく。
「日本の心とは、奥深いものだな……」
「うん、まあいいや。片付けようね」
「今日は私がやるぞ!」
「じゃあ、お願いしようかな。僕は映画の準備をしておこう」
各々役割を分担し、最短で目的に達することが出来る現状。つい先日までのリアムの足手まといっぷりからすると大成長だと我ながら思うのだが、果たして祐介もそう思ってくれているのだろうか。祐介はすぐに些細なことでも褒めてくるので、それがどこまで本当か分からなくなってくるのだ。でも、嬉しいは嬉しい。人に褒められて怒る者などそうそういないだろう。
洗い物が一通り済むと、リアムは祐介が待つベッドの上に上がった。祐介の頬を覗いてみる。まだ少し痛々しい青痣が確認出来た。
「祐介、私の方を向いて」
「……うん」
「口の中はどうだ? まだ痛いか?」
「いや、もう殆ど。外側の方が若干痛い位で」
「やはり一回では完全にはいかぬか。適性がないとここまでとは」
「そういうものなんだ?」
「そういうものだ。――よし、集中するぞ」
「お願いします」
リアムは祐介の口元にほど近い頬に手のひらを当てる。目を閉じ、全てを手のひらに集中する。ふー、と息を吐き、唱えた。
「ヒールライト!」
魔力が流れていくのを感じる。祐介を怪我させてしまったのはリアムだ。これ以上祐介に痛い思いはさせたくなかった。治れ、治ってくれ。
「あ、痛くなくなった」
「本当か? 良かった!」
リアムがほっとして笑顔になると、祐介もにっこり笑顔になった。
「じゃあ次はサツキちゃんの番だよ。髪の毛乾かすから座って」
「そうだった、暑かったから忘れていた」
「僕の楽しみだから、させてね」
「本当にシャンプ―の香りが好きなのだな」
「うん、好き」
好きを語る祐介は子供みたいで、純粋に可愛いな、と思ったリアムだった。
蕎麦にかき揚げ、天ぷらに、今日の味噌汁は玉ねぎ、人参、キャベツ入り。祐介曰く、余っていた野菜をぶっ込んだとのことだが、それにしても恐ろしくしっくりくる味噌のこの調整力。豆腐とワカメの日本の心とやらも素晴らしいが、それよりも素晴らしいのはこの味噌という代物であろう。この汎用性というか懐の広さは、祐介を思い起こさせた。
「祐介は味噌だな」
「は? ごめん意味が全然分かんない」
「祐介、映画の前にもう一度頬を治そうか」
「え、うん、それは嬉しいけど僕の質問」
「気恥ずかしいではないか、流してくれ」
「味噌が何故気恥ずかしいのかを是非知りたいんだけど……」
「いいから!」
「……はい」
リアムが祐介を尊敬の念で見ていることを知られてしまうと、何というか自分が若造に戻ったかの様に感じ少し照れるのだ。いや実際サツキという祐介よりも年下の身体になってしまった以上は祐介よりも確実に若造な訳であるが、そういうことではなく。
「日本の心とは、奥深いものだな……」
「うん、まあいいや。片付けようね」
「今日は私がやるぞ!」
「じゃあ、お願いしようかな。僕は映画の準備をしておこう」
各々役割を分担し、最短で目的に達することが出来る現状。つい先日までのリアムの足手まといっぷりからすると大成長だと我ながら思うのだが、果たして祐介もそう思ってくれているのだろうか。祐介はすぐに些細なことでも褒めてくるので、それがどこまで本当か分からなくなってくるのだ。でも、嬉しいは嬉しい。人に褒められて怒る者などそうそういないだろう。
洗い物が一通り済むと、リアムは祐介が待つベッドの上に上がった。祐介の頬を覗いてみる。まだ少し痛々しい青痣が確認出来た。
「祐介、私の方を向いて」
「……うん」
「口の中はどうだ? まだ痛いか?」
「いや、もう殆ど。外側の方が若干痛い位で」
「やはり一回では完全にはいかぬか。適性がないとここまでとは」
「そういうものなんだ?」
「そういうものだ。――よし、集中するぞ」
「お願いします」
リアムは祐介の口元にほど近い頬に手のひらを当てる。目を閉じ、全てを手のひらに集中する。ふー、と息を吐き、唱えた。
「ヒールライト!」
魔力が流れていくのを感じる。祐介を怪我させてしまったのはリアムだ。これ以上祐介に痛い思いはさせたくなかった。治れ、治ってくれ。
「あ、痛くなくなった」
「本当か? 良かった!」
リアムがほっとして笑顔になると、祐介もにっこり笑顔になった。
「じゃあ次はサツキちゃんの番だよ。髪の毛乾かすから座って」
「そうだった、暑かったから忘れていた」
「僕の楽しみだから、させてね」
「本当にシャンプ―の香りが好きなのだな」
「うん、好き」
好きを語る祐介は子供みたいで、純粋に可愛いな、と思ったリアムだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる