203 / 731
第二章 中級編開始
第202話 OLサツキの中級編二日目、春祭りの落とし物探索完了
しおりを挟む
イヤリングとネックレスに付いていた埃を払い、サツキはそれらを身につける。が、ネックレスがうまく付けられない。サツキが知るタイプの留め金ではなく、鉤を引っかかるタイプなのだが、はまる側の穴に入らないのだ。
「貸せ」
見かねたユラが交代する。
「すみません……」
「サツキって不器用なのか?」
「うっ言葉が胸につき刺さる……」
「不器用なんだな。はい、出来上がり」
「ありがとう」
へへ、と胸元のネックレスの飾りに触れた。取り戻せて、本当によかった。そんなサツキの様子をユラが呆れた様に眺める。
「しっかしえろいアクセサリー貰ってんな。一体誰に貰ったんだ?」
「え? 貸衣装屋の人がくれたよ」
「男?」
「女の人」
「ふーん。あ、サツキ明日は予定あるか?」
話がころころ変わる。ユラがまたラムを抱え、サツキに腕を差し出したのでサツキはそれを掴んだ。
「衣装を返そうかな、と思ってた位であとは特に。何で?」
「アン・ビンデル! ……ほら、鑑定士紹介してくれって言ってただろ。明日行くか?」
リアムの二つ名というやつだ。特にすることもないので、サツキは頷いた。
「お願い出来る?」
「分かった」
ユラがそう言ったその時、パァン! と高い破裂音がしたかと思うと、空に昨日見たのと同じ様な花火が上がった。ピンクと赤の、可愛らしい花火だ。落ちてくる火花はチカチカと金色に瞬いている。
「綺麗だね」
「ありゃあラーメニアの薬酒配るぞって合図だよ」
「え? お祭りの開始の合図じゃないの? 昨日貸衣装の人がそう言ってたよ」
「まあある意味祭りではある」
意味が分からない。ユラが冷めた目つきでサツキを至近距離で見下ろし、聞いた。
「そのアクセサリーをわざわざくれた貸衣装屋の奴は、説明してくれなかったのか?」
「奴って……気のいいおばちゃんだったよ」
「説明しなかったのか?」
何だか雰囲気が怖い。何か怒ってるのだろうか? 全然そんな内容はなかったと思うが。
「あー……怖がるな、悪い。言い方がきつかった」
「え、いや、別に」
今度は急に謝る。訳が分からない。
ユラが聞き直してきた。
「その人は、ラーメニアの薬酒については何か言ってなかったのか?」
あ、そういうことか。サツキが質問を理解してなかったのだ。
「飲むなら一杯までとは言ってたけど、余りにもよく喋るから聞くに聞けず、あはは」
「ふーん」
「ユラは飲んだことある? 美味しいの? 無料で配られてるって聞いたけど、随分気前いいよね」
昨日は若者は皆グラスを持って彷徨いていた。興味がないといえば嘘になる。実はそこそこ気になっていた。
「飲みたいの?」
「美味しいなら。昨日は皆飲んでたし」
ユラはじいっとサツキを見ている。
「な、なに?」
すると、ふ、と笑った。
「まあ一杯なら大丈夫かな。俺もいるし」
「? うん、じゃあ飲もうか」
「はいはい」
二人は昨日ラーメニアの薬酒を配っていた場所に向かった。
「貸せ」
見かねたユラが交代する。
「すみません……」
「サツキって不器用なのか?」
「うっ言葉が胸につき刺さる……」
「不器用なんだな。はい、出来上がり」
「ありがとう」
へへ、と胸元のネックレスの飾りに触れた。取り戻せて、本当によかった。そんなサツキの様子をユラが呆れた様に眺める。
「しっかしえろいアクセサリー貰ってんな。一体誰に貰ったんだ?」
「え? 貸衣装屋の人がくれたよ」
「男?」
「女の人」
「ふーん。あ、サツキ明日は予定あるか?」
話がころころ変わる。ユラがまたラムを抱え、サツキに腕を差し出したのでサツキはそれを掴んだ。
「衣装を返そうかな、と思ってた位であとは特に。何で?」
「アン・ビンデル! ……ほら、鑑定士紹介してくれって言ってただろ。明日行くか?」
リアムの二つ名というやつだ。特にすることもないので、サツキは頷いた。
「お願い出来る?」
「分かった」
ユラがそう言ったその時、パァン! と高い破裂音がしたかと思うと、空に昨日見たのと同じ様な花火が上がった。ピンクと赤の、可愛らしい花火だ。落ちてくる火花はチカチカと金色に瞬いている。
「綺麗だね」
「ありゃあラーメニアの薬酒配るぞって合図だよ」
「え? お祭りの開始の合図じゃないの? 昨日貸衣装の人がそう言ってたよ」
「まあある意味祭りではある」
意味が分からない。ユラが冷めた目つきでサツキを至近距離で見下ろし、聞いた。
「そのアクセサリーをわざわざくれた貸衣装屋の奴は、説明してくれなかったのか?」
「奴って……気のいいおばちゃんだったよ」
「説明しなかったのか?」
何だか雰囲気が怖い。何か怒ってるのだろうか? 全然そんな内容はなかったと思うが。
「あー……怖がるな、悪い。言い方がきつかった」
「え、いや、別に」
今度は急に謝る。訳が分からない。
ユラが聞き直してきた。
「その人は、ラーメニアの薬酒については何か言ってなかったのか?」
あ、そういうことか。サツキが質問を理解してなかったのだ。
「飲むなら一杯までとは言ってたけど、余りにもよく喋るから聞くに聞けず、あはは」
「ふーん」
「ユラは飲んだことある? 美味しいの? 無料で配られてるって聞いたけど、随分気前いいよね」
昨日は若者は皆グラスを持って彷徨いていた。興味がないといえば嘘になる。実はそこそこ気になっていた。
「飲みたいの?」
「美味しいなら。昨日は皆飲んでたし」
ユラはじいっとサツキを見ている。
「な、なに?」
すると、ふ、と笑った。
「まあ一杯なら大丈夫かな。俺もいるし」
「? うん、じゃあ飲もうか」
「はいはい」
二人は昨日ラーメニアの薬酒を配っていた場所に向かった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる