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第二章 中級編開始

第196話 OLサツキの中級編二日目、春祭りのご飯

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 三人は昨日サツキが慄いたタコが入った水槽があるエリアへとやって来た。

「これ、凄い見た目が怖くて昨日食べるのを躊躇したんだ」

 サツキがユラの影から水槽を見ると、ユラがああ、と頷いた。

「あれはアカイロタコモドキっていうイカでな、あの口で噛まれるとやばいらしい」
「やばい……」
「あ、でもあのタコモドキ焼きは歯は取ってあるから」
「タコモドキ焼き……」
「ん?」
「いえ、何でもないです」

 何だかユラがいつもより優しい気がして、少し緊張する。話している内容はちょっとあれ? ん? な内容も多いが、この間のダンジョンの様な刺々しさはない。

「あれ食うか」
「……食べてみる!」
「ははっ」

 見た目は大分あれだが、匂いはとても香ばしい。それにもう胃が限界に近付いてきていた。

「アン・ビンデル・フィン」

 ユラが解除の呪文を唱えた。

 ウルスラは魔力がなくそこまで魔術に詳しくはない。アールは魔力はあるが殆ど呪文を知らない。サツキだって魔力はあってもまだ初級しか殆ど覚えていない。すると、パーティーの中で魔術を一番知っているのはユラということだ。

 あれだけ次々とサツキに指示を出していた理由がようやく分かり、腑に落ちた。 

「おじさん、二人分頂戴」
「へい毎度!」

 ユラの手は埋まっているので、サツキが支払いを済まし、正に縁日のたこ焼きの様な代物が手渡された。

 道路脇に移動し蓋を開けると、実に香ばしい匂いが漂った。たこ焼きっていうか、やっぱりスルメ焼きの匂いだ。

 はふはふ言いながら食べる。熱いけど、美味しい。そして空っぽの胃に染み渡った。

 ユラはラムを肩に乗せつつはふはふしている。あち、と顰める顔に見惚れてしまっても、今日ばかりは許してもらいたかった。

 だって、こんなにユラと打ち解けられるとは思ってもいなかった。こんな風に、仲間としてちゃんと扱ってもらえるとも思っていなかったから。

 二人共タコモドキ焼きを食べ終わると、再び魔法を掛けてから次の食べ物を探す。ユラが言っていた通り、今日は昨日よりも人が少ない。

「初日が一番賑やかなんだね」
「初日で出来上がるペアが多いからじゃね?」
「あ、そういうこと……」
「皆ギラギラしてるからあんま好きじゃないんだよ、この祭り。折角うまい出店いっぱいあるのにさ」
「ギラギラ……」
「今回はサツキが隣にいるから害ないけど、一人で彷徨くと面倒臭い祭りなんだよ」

 まあこれだけのイケメンだ。寄ってこられる率も半端じゃないのかもしれない。ユラの狙いはあくまでアールだし、他に好きな人がいるのにギラギラな目をした人が次から次へとやって来たらそりゃあうざいだろう。

「イケメンも大変だね」

 サツキが笑うと、ユラが馬鹿にした様な顔で言い返してきた。

「そりゃお前だろ。少なくとも俺は拐われそうになったりしない」
「何であの人あんなにしつこかったんだろう?」
「お前それまじで言ってんのか」
「は?」
「……はあ」

 ユラが溜息をついた。
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