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第二章 中級編開始
第185話 魔術師リアムの中級編二日目、ようやく出勤
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何一つ満足に出来ぬこの身が情けない。
祐介がふくらはぎにストッキングを履かせている間、リアムは更に凹んでいた。何故一度も履いたことのない祐介の方が、うまく履かせることが出来るのか。祐介は手先はかなり器用な様だが、自分の不甲斐なさに拍車がかかる。
「あの、サツキちゃん」
「なんだ」
膝まで履かせた状態で、祐介がおもむろに言った。
「昨日の様なことがない様に、目を開けててもいいでしょうか」
昨日の様なこと。普段であれば触れてはならぬ部分に触れたあのことだ。リアムは覚悟を決めた。
「致し方ない。頼んだのは私だからな。――しっかりと頼む」
「任せて下さい」
心なしか祐介の表情が弾んでいる様に見えるが、これは状況的に見て仕方のないことだろう。ふー、と息を吐いている。頼む、そこで溜めないでくれ。
祐介はリアムを立たせると、昨日と同じ様にスカートを捲くり、今度は手をなるべく触れない様にストッキングを履かせていく。うまい。成程、こうやるのか。爪を内側に向け、ストッキングに当たらない様にしている。これなら、明日から破かずに履けそうだ。
足の付け根のところまでストッキングが上がってきた。
「祐介、ここまでで大丈夫だ。あとは自分で出来る」
「……はい」
祐介が手を離したので、リアムはそのままお腹の上まできちんと履くと、スカートを直した。
「髪の匂い、嗅がせて下さい」
背後の祐介がぼそりと言うと、今日は背後から抱きすくめられた。くんくんと頭の匂いを嗅いでいる。風呂に入ったのは昨晩で寝汗もかいていそうだが、シャンプーの匂いなど残っているのだろうか。微かに残るその匂いを嗅ぎ当てる為ここまでくんくんしているのかもしれないが、随分と難儀なことだ。
「祐介は本当にシャンプーの匂いが好きなのだな」
思わず苦笑が出ると、祐介も笑う気配がした。
「うん、そう、好き」
「このシャンプーに特別な思い入れでもあるのか?」
「最近出来た」
「よく分からんが、そうしたら祐介もこのシャンプーを自分で使えばいいのではないか?」
「僕にはちょっとしっとり過ぎるので」
「成程、色々と種類があるのだな」
「シャンプー変えないでね」
「はは、分かった分かった」
子供みたいだ。ようやく落ち着いたのか、祐介がリアムを解放した。玄関に向かい靴を履くと、外はすでに暑い。今日もいい天気になりそうだった。
「さ、行こうか。今日も珈琲飲む?」
「飲む。しかしあの会社の珈琲は不味かった。あれは確かに珈琲風のお湯だな」
「でしょ」
「それでも飲んでいる奴がいるのだから分からん」
「好みはそれぞれなんでしょ」
手を繋いで駅へと向かう。すぐに汗ばんで来て滑ってしまう。すると、祐介が指の間に指を入れてきた。
「これなら滑らない」
「羽田はさすがに会社に向かっているのではないか?」
「あの人さぼり常習犯だから、いるかもしれないよ」
「うむ……何故社長はそんな奴を野放しにしているのだろうか」
「何かあるみたいだけどね、僕も詳しくは」
「ふむ……」
何とかストーカー行為を止めさせたいものだ。何かいい案はないか、観察していこうとリアムは決めた。
祐介がふくらはぎにストッキングを履かせている間、リアムは更に凹んでいた。何故一度も履いたことのない祐介の方が、うまく履かせることが出来るのか。祐介は手先はかなり器用な様だが、自分の不甲斐なさに拍車がかかる。
「あの、サツキちゃん」
「なんだ」
膝まで履かせた状態で、祐介がおもむろに言った。
「昨日の様なことがない様に、目を開けててもいいでしょうか」
昨日の様なこと。普段であれば触れてはならぬ部分に触れたあのことだ。リアムは覚悟を決めた。
「致し方ない。頼んだのは私だからな。――しっかりと頼む」
「任せて下さい」
心なしか祐介の表情が弾んでいる様に見えるが、これは状況的に見て仕方のないことだろう。ふー、と息を吐いている。頼む、そこで溜めないでくれ。
祐介はリアムを立たせると、昨日と同じ様にスカートを捲くり、今度は手をなるべく触れない様にストッキングを履かせていく。うまい。成程、こうやるのか。爪を内側に向け、ストッキングに当たらない様にしている。これなら、明日から破かずに履けそうだ。
足の付け根のところまでストッキングが上がってきた。
「祐介、ここまでで大丈夫だ。あとは自分で出来る」
「……はい」
祐介が手を離したので、リアムはそのままお腹の上まできちんと履くと、スカートを直した。
「髪の匂い、嗅がせて下さい」
背後の祐介がぼそりと言うと、今日は背後から抱きすくめられた。くんくんと頭の匂いを嗅いでいる。風呂に入ったのは昨晩で寝汗もかいていそうだが、シャンプーの匂いなど残っているのだろうか。微かに残るその匂いを嗅ぎ当てる為ここまでくんくんしているのかもしれないが、随分と難儀なことだ。
「祐介は本当にシャンプーの匂いが好きなのだな」
思わず苦笑が出ると、祐介も笑う気配がした。
「うん、そう、好き」
「このシャンプーに特別な思い入れでもあるのか?」
「最近出来た」
「よく分からんが、そうしたら祐介もこのシャンプーを自分で使えばいいのではないか?」
「僕にはちょっとしっとり過ぎるので」
「成程、色々と種類があるのだな」
「シャンプー変えないでね」
「はは、分かった分かった」
子供みたいだ。ようやく落ち着いたのか、祐介がリアムを解放した。玄関に向かい靴を履くと、外はすでに暑い。今日もいい天気になりそうだった。
「さ、行こうか。今日も珈琲飲む?」
「飲む。しかしあの会社の珈琲は不味かった。あれは確かに珈琲風のお湯だな」
「でしょ」
「それでも飲んでいる奴がいるのだから分からん」
「好みはそれぞれなんでしょ」
手を繋いで駅へと向かう。すぐに汗ばんで来て滑ってしまう。すると、祐介が指の間に指を入れてきた。
「これなら滑らない」
「羽田はさすがに会社に向かっているのではないか?」
「あの人さぼり常習犯だから、いるかもしれないよ」
「うむ……何故社長はそんな奴を野放しにしているのだろうか」
「何かあるみたいだけどね、僕も詳しくは」
「ふむ……」
何とかストーカー行為を止めさせたいものだ。何かいい案はないか、観察していこうとリアムは決めた。
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