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第二章 中級編開始
第178話 OLサツキの中級編初日の春祭り散策、出会った人は
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ユラは鑑定士がいる占いの館から丁度出てきたところだった。目を擦りつつ、伸びをして首をこきこき鳴らす。
「うわ……人だらけ」
かなり長い時間占いの館に滞在していた為、空はすっかり暗くなり、知らない間に春祭りが開始している様だった。この後はギルドに寄る予定だったが、ギルドまでの道もかなり混み合っていそうだ。
「面倒くせえ……」
呟き、ギルドに行くのは止めようかと躊躇したその時。
「――はい!?」
目の前を、全速力で自分が走り抜けていった。時折人にぶつかっている。
「え? え?」
ユラはその後ろ姿に集中する。そして後ろから全速力で追いかけた。
「ラム! お前俺の格好で何やってんだ!」
「! ユラ! ユラ! サツキが!!」
同じ顔の同じ服を着た二人が肩を掴み合って叫び合っているので、当然目立つ。周りは何事かと遠巻きに見ていた。
「サツキがどうした!?」
「危ないお兄さんに! 助けて!」
ユラの顔つきがさっと変わる。
「どっちだ」
ポケットに手を突っ込み何かを探しながら尋ねると、ラムは来た方を指し示した。
「あっちの奥の、変な匂いのお酒があったところの近く」
「あー、ラーメニアの薬酒のとこか。知らないで行っちまったんだな」
ポケットから出てきたのは皺くちゃのフルールの羽根だった。それをラムに渡す。
「俺が探してくる。お前は俺んちに行ってろ。中で待っててくれ」
「分かった!」
「フォア・フルール・アレ! 俺んち!」
ユラが唱えると、フルールの羽根を持ったラムが一瞬で消えた。ユラは踵を返し全速力で人混みを駆け抜ける。
「サツキー!!」
必死で名前を呼びながら奥ヘ奥へと走って行った。
◇
「離して!」
「やだね」
男はニヤニヤしながらサツキの両手首を片手で掴みどんどん暗い方へと引っ張っていく。このままだと拙い。非常に拙い。怖がっている場合じゃない。だがどうも外に対する呪文は杖なしには効きにくい様で、攻撃魔法は無理そうだ。
今ここでリアムに戻ったらどうだろう? いや、ドレスでぎゅうぎゅうになっている時にリアムに戻ってもきつくて苦しくて吐くだけだ。だとすると、サツキよりも身体が小さくて抜け出し易い人。ラムなら。
ドレスは汚れにくいと言っていた。この際、脱ぎ捨てて後で取りに来ればいい。
「メタモラ! ラム!」
お願い、効いて! 祈る様な気持ちで唱えると、自分の身体が黄緑色になったのが分かった。ドレスが緩くなる。
「はあ!?」
男の手もスライムのラムの手は掴みにくいらしく、引っ張ると取れた。抜け出せた! サツキは半ば転げる様に走り出した。靴、ドレス、ついでにパンツも脱げたのが分かったが、もうこの際いい。こんな男に捕まる位ならノーパンの方がましだ。どうせラムだし。
「――サツキ!!」
離れた所から、聞き慣れた声が聞こえた。ユラの姿がそこにあった。何でラム、戻ってきちゃったの! 男がユラの姿を見てニヤリと笑う。
こっちに、こっちに引き寄せないと。
サツキはラムの姿で走り始めた。
「うわ……人だらけ」
かなり長い時間占いの館に滞在していた為、空はすっかり暗くなり、知らない間に春祭りが開始している様だった。この後はギルドに寄る予定だったが、ギルドまでの道もかなり混み合っていそうだ。
「面倒くせえ……」
呟き、ギルドに行くのは止めようかと躊躇したその時。
「――はい!?」
目の前を、全速力で自分が走り抜けていった。時折人にぶつかっている。
「え? え?」
ユラはその後ろ姿に集中する。そして後ろから全速力で追いかけた。
「ラム! お前俺の格好で何やってんだ!」
「! ユラ! ユラ! サツキが!!」
同じ顔の同じ服を着た二人が肩を掴み合って叫び合っているので、当然目立つ。周りは何事かと遠巻きに見ていた。
「サツキがどうした!?」
「危ないお兄さんに! 助けて!」
ユラの顔つきがさっと変わる。
「どっちだ」
ポケットに手を突っ込み何かを探しながら尋ねると、ラムは来た方を指し示した。
「あっちの奥の、変な匂いのお酒があったところの近く」
「あー、ラーメニアの薬酒のとこか。知らないで行っちまったんだな」
ポケットから出てきたのは皺くちゃのフルールの羽根だった。それをラムに渡す。
「俺が探してくる。お前は俺んちに行ってろ。中で待っててくれ」
「分かった!」
「フォア・フルール・アレ! 俺んち!」
ユラが唱えると、フルールの羽根を持ったラムが一瞬で消えた。ユラは踵を返し全速力で人混みを駆け抜ける。
「サツキー!!」
必死で名前を呼びながら奥ヘ奥へと走って行った。
◇
「離して!」
「やだね」
男はニヤニヤしながらサツキの両手首を片手で掴みどんどん暗い方へと引っ張っていく。このままだと拙い。非常に拙い。怖がっている場合じゃない。だがどうも外に対する呪文は杖なしには効きにくい様で、攻撃魔法は無理そうだ。
今ここでリアムに戻ったらどうだろう? いや、ドレスでぎゅうぎゅうになっている時にリアムに戻ってもきつくて苦しくて吐くだけだ。だとすると、サツキよりも身体が小さくて抜け出し易い人。ラムなら。
ドレスは汚れにくいと言っていた。この際、脱ぎ捨てて後で取りに来ればいい。
「メタモラ! ラム!」
お願い、効いて! 祈る様な気持ちで唱えると、自分の身体が黄緑色になったのが分かった。ドレスが緩くなる。
「はあ!?」
男の手もスライムのラムの手は掴みにくいらしく、引っ張ると取れた。抜け出せた! サツキは半ば転げる様に走り出した。靴、ドレス、ついでにパンツも脱げたのが分かったが、もうこの際いい。こんな男に捕まる位ならノーパンの方がましだ。どうせラムだし。
「――サツキ!!」
離れた所から、聞き慣れた声が聞こえた。ユラの姿がそこにあった。何でラム、戻ってきちゃったの! 男がユラの姿を見てニヤリと笑う。
こっちに、こっちに引き寄せないと。
サツキはラムの姿で走り始めた。
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