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第二章 中級編開始
第177話 魔術師リアムの中級編初日の夜の予定
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混雑している電車で一駅、社宅のある駅へと到着すると、祐介と共にスーパーに立ち寄る。こちらもかなり混雑しており、どこもかしこも人だらけで、リアムは少し参ってしまった。
「疲れちゃった?」
祐介が心配そうに尋ねる、家路。リアムは目をぎゅっと指で押さえた。
「うむ。あのパソコンというものは目が疲れるな。それにどこにいっても人、人、人。私の世界はここまで人口が多くなくてな、まだ慣れぬ」
「日本も田舎にいくとスッカスカだよ」
「どこの世界もそういうものか」
「まあ首都圏の人口密度半端ないけどね」
ふう、と息を吐いて祐介が慰める様に笑う。
「じゃあさ、僕がごはん作っている間にお風呂ゆっくり浸かったら? それで、ご飯食べたら髪の毛乾かして、肩と頭のマッサージ……えーと、揉んであげるよ」
「ほ、本当か?」
正直、肩がガチガチで辛かったのだ。余計な力が入っているのだとは思うが、こればかりは慣れるまではどうしようもないのだろうと思う。
「僕はいつもの一日だったし、外出もなかったし」
「そういえば祐介は電話ばかりしていたな」
「営業の電話。若造だから愚痴聞いてあげることばっかだけど、聞いてあげると結構皆喜ぶんだよね。で、僕からならって買ってくれたりするし」
成程、うまいものだ。
「家具なんてさ、特にこういうお洒落家具は贅沢品だからね、必須の物じゃないし」
「ほお」
「ショールームがあるんだよ、今度一緒に行こうよ。よく羽田さんが暇つぶしに行ってるから、羽田さんが会社に行る時を狙って」
「ショールーム?」
「あ、展示場」
「楽しそうだな」
「自分が売ってる商品を見ると実感湧くよ」
「では今度連れて行ってくれ」
お互いにこっと笑い合う。午前中の苛立ちが嘘の様な笑顔だ。
家の前に着くと、祐介が言った。
「ご飯の支度したらサツキちゃんちに行って待ってるから、その、着替え忘れないでね」
「あ……分かった」
二晩連続裸を見るのは祐介も辛かろう。今日はしっかりと服を持ち込むぞ。リアムは深く頷いた。
帰宅し、風呂を沸かしつつ支度をする。やはりこのストッキングというのは苦しいもので、何度かトイレに行った時にうまく引っ張れず、爪が刺さって穴が空いてしまっていた。内側だったので何とか誤魔化しつつ帰ってきたが、これはもう履けないだろう。
「なんと儚き命よ……」
そして今朝、祐介が目を瞑って自分を膝の上に乗せストッキングを履かせてくれたことをふと思い出す。誤って触られてしまい、思わず過剰反応してしまって自分でも驚いた。
やはりこれはサツキという一人の女の身体なのだ。
「……難しい問題だ」
リアムはぽつりと呟いた。
「疲れちゃった?」
祐介が心配そうに尋ねる、家路。リアムは目をぎゅっと指で押さえた。
「うむ。あのパソコンというものは目が疲れるな。それにどこにいっても人、人、人。私の世界はここまで人口が多くなくてな、まだ慣れぬ」
「日本も田舎にいくとスッカスカだよ」
「どこの世界もそういうものか」
「まあ首都圏の人口密度半端ないけどね」
ふう、と息を吐いて祐介が慰める様に笑う。
「じゃあさ、僕がごはん作っている間にお風呂ゆっくり浸かったら? それで、ご飯食べたら髪の毛乾かして、肩と頭のマッサージ……えーと、揉んであげるよ」
「ほ、本当か?」
正直、肩がガチガチで辛かったのだ。余計な力が入っているのだとは思うが、こればかりは慣れるまではどうしようもないのだろうと思う。
「僕はいつもの一日だったし、外出もなかったし」
「そういえば祐介は電話ばかりしていたな」
「営業の電話。若造だから愚痴聞いてあげることばっかだけど、聞いてあげると結構皆喜ぶんだよね。で、僕からならって買ってくれたりするし」
成程、うまいものだ。
「家具なんてさ、特にこういうお洒落家具は贅沢品だからね、必須の物じゃないし」
「ほお」
「ショールームがあるんだよ、今度一緒に行こうよ。よく羽田さんが暇つぶしに行ってるから、羽田さんが会社に行る時を狙って」
「ショールーム?」
「あ、展示場」
「楽しそうだな」
「自分が売ってる商品を見ると実感湧くよ」
「では今度連れて行ってくれ」
お互いにこっと笑い合う。午前中の苛立ちが嘘の様な笑顔だ。
家の前に着くと、祐介が言った。
「ご飯の支度したらサツキちゃんちに行って待ってるから、その、着替え忘れないでね」
「あ……分かった」
二晩連続裸を見るのは祐介も辛かろう。今日はしっかりと服を持ち込むぞ。リアムは深く頷いた。
帰宅し、風呂を沸かしつつ支度をする。やはりこのストッキングというのは苦しいもので、何度かトイレに行った時にうまく引っ張れず、爪が刺さって穴が空いてしまっていた。内側だったので何とか誤魔化しつつ帰ってきたが、これはもう履けないだろう。
「なんと儚き命よ……」
そして今朝、祐介が目を瞑って自分を膝の上に乗せストッキングを履かせてくれたことをふと思い出す。誤って触られてしまい、思わず過剰反応してしまって自分でも驚いた。
やはりこれはサツキという一人の女の身体なのだ。
「……難しい問題だ」
リアムはぽつりと呟いた。
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