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第二章 中級編開始
第171話 魔術師リアムの中級編初日の昼
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先程から祐介は無言だ。無言でそれでもリアムの手を掴んで離さないのは、羽田を警戒しているからに違いない。
日差しはジリジリと暑く、長袖を着ていると触れた所が汗ばんでくる。
皆食事に向かうのか、人が多く歩きにくいが、祐介の歩みは今日はやけに早い。早過ぎて、こけそうだ。先程からただでさえ脱げやすいパンプスがパカパカといっていて、非常に歩きにくい。
と、歩道の少し出っ張った部分に爪先が引っかかった。
「あっ」
いかん転ぶ、このストッキングが破けてしまったら職場の狭いトイレの中で履き替えられる自信はまだない。よろめく僅か一瞬の間にそう考えると。
振り向いた祐介が、リアムを正面から受け止めた。
「大丈夫?」
ふう、と息を吐く祐介の顔はもう怒ってはいなかった。リアムはそれを知り、自分でも驚く程ほっとしてしまった。
「悪いが、靴がパカパカなのだ。もう少しゆっくり歩いて欲しい」
「あ……ごめん」
ずれた靴を履き直す。今度は、祐介はリアムの速度に合わせて隣を歩き始めた。
「もう怒ってはいない様だな。よかった」
「怒っては……」
「いただろう?」
あそこまであからさまだと、いくら人の心の動きに鈍感なリアムでも分かる。
「ラーメンでいい?」
「大歓迎だ」
「じゃあ裏にある僕の行きつけに連れて行ってあげるね」
「祐介、誤魔化すな」
「……ばれたか」
「私を何だと思っている」
「だってさ」
祐介がいじけた様な表情になった。
「僕、自分でもびっくりしたから」
「何がだ?」
「……やっぱり分かってないよね、そうだよね……」
「はっきり言った方がスッキリするぞ、祐介」
祐介が横道に一本入る。途端人の数が一気に減った。
「あそこの暖簾がある店。裏にあるからお客さん少ないけど、美味しいんだ」
言ってはなんだが大分汚らしい店構えのラーメン店であるが、祐介が言うなら間違いないのだろう。今まで祐介に勧められた物でいただけなかったのはコーラだけだ。
「三人待ち。ちょっと外で待つけど回転早いから待とうか」
「うむ。それは構わぬが、何にその様に驚いたのだ?」
「続けるの? 今必死で誤魔化したんだけど」
「魔術師は探究心が旺盛なのだ」
「なのだ……」
列の最後尾に並ぶと、祐介が観念した様にぼそぼそと話し始めた。
「その、やきもちを焼きました」
「……へ?」
午前中のあの状況で、一体何にやきもちを焼いたのだろうか。祐介が実に言いにくそうに、ちらちらとリアムを時折見ながら続けた。
「だってサツキちゃん、僕にはあんな態度取らないじゃない」
「どんな態度だ? お前は一体誰に何のやきもちを焼いているのだ? さっぱり分からん」
「木佐さんと話してるサツキちゃん、すごく楽しそうで嬉しそうで、羨ましくなりました」
「誰にだ? 祐介も木佐ちゃん殿と話したかったのか? それは気付かず済まなかった」
「違う」
祐介が即答した。
「そっちじゃないよ」
祐介の目は真剣だった。
日差しはジリジリと暑く、長袖を着ていると触れた所が汗ばんでくる。
皆食事に向かうのか、人が多く歩きにくいが、祐介の歩みは今日はやけに早い。早過ぎて、こけそうだ。先程からただでさえ脱げやすいパンプスがパカパカといっていて、非常に歩きにくい。
と、歩道の少し出っ張った部分に爪先が引っかかった。
「あっ」
いかん転ぶ、このストッキングが破けてしまったら職場の狭いトイレの中で履き替えられる自信はまだない。よろめく僅か一瞬の間にそう考えると。
振り向いた祐介が、リアムを正面から受け止めた。
「大丈夫?」
ふう、と息を吐く祐介の顔はもう怒ってはいなかった。リアムはそれを知り、自分でも驚く程ほっとしてしまった。
「悪いが、靴がパカパカなのだ。もう少しゆっくり歩いて欲しい」
「あ……ごめん」
ずれた靴を履き直す。今度は、祐介はリアムの速度に合わせて隣を歩き始めた。
「もう怒ってはいない様だな。よかった」
「怒っては……」
「いただろう?」
あそこまであからさまだと、いくら人の心の動きに鈍感なリアムでも分かる。
「ラーメンでいい?」
「大歓迎だ」
「じゃあ裏にある僕の行きつけに連れて行ってあげるね」
「祐介、誤魔化すな」
「……ばれたか」
「私を何だと思っている」
「だってさ」
祐介がいじけた様な表情になった。
「僕、自分でもびっくりしたから」
「何がだ?」
「……やっぱり分かってないよね、そうだよね……」
「はっきり言った方がスッキリするぞ、祐介」
祐介が横道に一本入る。途端人の数が一気に減った。
「あそこの暖簾がある店。裏にあるからお客さん少ないけど、美味しいんだ」
言ってはなんだが大分汚らしい店構えのラーメン店であるが、祐介が言うなら間違いないのだろう。今まで祐介に勧められた物でいただけなかったのはコーラだけだ。
「三人待ち。ちょっと外で待つけど回転早いから待とうか」
「うむ。それは構わぬが、何にその様に驚いたのだ?」
「続けるの? 今必死で誤魔化したんだけど」
「魔術師は探究心が旺盛なのだ」
「なのだ……」
列の最後尾に並ぶと、祐介が観念した様にぼそぼそと話し始めた。
「その、やきもちを焼きました」
「……へ?」
午前中のあの状況で、一体何にやきもちを焼いたのだろうか。祐介が実に言いにくそうに、ちらちらとリアムを時折見ながら続けた。
「だってサツキちゃん、僕にはあんな態度取らないじゃない」
「どんな態度だ? お前は一体誰に何のやきもちを焼いているのだ? さっぱり分からん」
「木佐さんと話してるサツキちゃん、すごく楽しそうで嬉しそうで、羨ましくなりました」
「誰にだ? 祐介も木佐ちゃん殿と話したかったのか? それは気付かず済まなかった」
「違う」
祐介が即答した。
「そっちじゃないよ」
祐介の目は真剣だった。
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