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第二章 中級編開始
第169話 魔術師リアムの中級編初日、ようやく仕事
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朝から羽田の騒動がありざわついていた執務エリアは、九時を過ぎ始業開始してようやく落ち着きを取り戻した。
木佐ちゃんは、祐介の言葉通り、きちんと全て一つ一つ手取り足取り教えてくれていた。
かつてこれ程女性に丁寧に何かを教わったことなどあろうか。リアムは木佐ちゃんの説明を一所懸命頭に叩き込みながらも、時折ちらりとその唇に視線が行くのを止められなかった。
「野原さん、聞いてる?」
「はっ! す、済まない……つい木佐ちゃん殿に見惚れてしまった」
「はい?」
木佐ちゃんが聞き返すと、斜め向かいの席からゴホン! というわざとらしい咳払いが聞こえた。
顔を上げると、祐介がむすっとした顔でリアムを見ている。仕事をしろ、仕事を。
「……僕の彼女なんですけど」
「木佐ちゃん殿、気にせず続けて欲しい」
「え、あ、うん、じゃあとりあえず次はメールを片付けていくから」
「頼む」
木佐ちゃんは、丁寧に真っ黒になっていたリアムのメールボックスなる物を一つ一つ解説しながら片付けていった。お陰で、何となくどういったことが仕事内容なのか、リアムでも分かってきた。
木佐ちゃんは、頭がいい。サツキがどういった人物だったのか正確にはリアムには分からないが、質問をすればきちっと欲しい答えが返ってくるところをみる限り、うまくいかなかった原因は祐介が言っていた通り、サツキが聞けなかった所為かと思われる。
恐らく、怖かったのだろう。木佐ちゃんの話し方はかなり直接的だ。リアムは何とも思わないが、きつい言い方に萎縮してしまう人間がいることも理解している。
「えーと、午前はここまで。午後は私の方の仕事も片付けたいから、その間は簡単な作業を振るから」
「木佐ちゃん殿、大変助かった。午後も宜しく頼む」
「あ、うん」
「早く貴女のお役に立てる様努力するので見捨てずにいてもらえると嬉しい」
「あ……うん」
「貴女は非常に優秀な女性であることが分かった。しかも美し……」
「サツキちゃーん! お昼! 行くよ!」
いつの間にか祐介が真後ろに立っていた。笑顔だが、明らかに怒っているのが分かった。
「祐介、何故怒る」
「怒ってないし」
「いや、どう見ても怒っている。何か不快なことでもあったのか?」
「……いやそりゃもう嫌って程午前中ずっと」
「腹でも痛いのか? では昼は暖かい物でも」
「あーもーそうじゃないんですけどね」
すると、それまで二人のやり取りを見ていた木佐ちゃんが、ぷっと吹き出した。
「山岸くん……滅茶苦茶振り回されてるじゃないの。ふふ、あはははっ」
それは、リアムが初めて見る木佐ちゃんの笑顔で。
「うむ。貴女はやはり笑顔が似合うな」
そう言った瞬間、木佐ちゃんの顔は赤くなり、祐介の顔には怒りの表情が張り付いた。
木佐ちゃんは、祐介の言葉通り、きちんと全て一つ一つ手取り足取り教えてくれていた。
かつてこれ程女性に丁寧に何かを教わったことなどあろうか。リアムは木佐ちゃんの説明を一所懸命頭に叩き込みながらも、時折ちらりとその唇に視線が行くのを止められなかった。
「野原さん、聞いてる?」
「はっ! す、済まない……つい木佐ちゃん殿に見惚れてしまった」
「はい?」
木佐ちゃんが聞き返すと、斜め向かいの席からゴホン! というわざとらしい咳払いが聞こえた。
顔を上げると、祐介がむすっとした顔でリアムを見ている。仕事をしろ、仕事を。
「……僕の彼女なんですけど」
「木佐ちゃん殿、気にせず続けて欲しい」
「え、あ、うん、じゃあとりあえず次はメールを片付けていくから」
「頼む」
木佐ちゃんは、丁寧に真っ黒になっていたリアムのメールボックスなる物を一つ一つ解説しながら片付けていった。お陰で、何となくどういったことが仕事内容なのか、リアムでも分かってきた。
木佐ちゃんは、頭がいい。サツキがどういった人物だったのか正確にはリアムには分からないが、質問をすればきちっと欲しい答えが返ってくるところをみる限り、うまくいかなかった原因は祐介が言っていた通り、サツキが聞けなかった所為かと思われる。
恐らく、怖かったのだろう。木佐ちゃんの話し方はかなり直接的だ。リアムは何とも思わないが、きつい言い方に萎縮してしまう人間がいることも理解している。
「えーと、午前はここまで。午後は私の方の仕事も片付けたいから、その間は簡単な作業を振るから」
「木佐ちゃん殿、大変助かった。午後も宜しく頼む」
「あ、うん」
「早く貴女のお役に立てる様努力するので見捨てずにいてもらえると嬉しい」
「あ……うん」
「貴女は非常に優秀な女性であることが分かった。しかも美し……」
「サツキちゃーん! お昼! 行くよ!」
いつの間にか祐介が真後ろに立っていた。笑顔だが、明らかに怒っているのが分かった。
「祐介、何故怒る」
「怒ってないし」
「いや、どう見ても怒っている。何か不快なことでもあったのか?」
「……いやそりゃもう嫌って程午前中ずっと」
「腹でも痛いのか? では昼は暖かい物でも」
「あーもーそうじゃないんですけどね」
すると、それまで二人のやり取りを見ていた木佐ちゃんが、ぷっと吹き出した。
「山岸くん……滅茶苦茶振り回されてるじゃないの。ふふ、あはははっ」
それは、リアムが初めて見る木佐ちゃんの笑顔で。
「うむ。貴女はやはり笑顔が似合うな」
そう言った瞬間、木佐ちゃんの顔は赤くなり、祐介の顔には怒りの表情が張り付いた。
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