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第二章 中級編開始
第167話 魔術師リアムの中級編初日の一悶着の結果
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リアムが執務エリアに入って行くと、羽田がニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。
「なあにーサツキちゃん、珍しく怖い顔しちゃってー。あ、山岸がいるからってちょっと強気になってんのかなあ?」
リアムは言った。
「木佐ちゃん殿に置いた貴様の手を離せ」
「……はい?」
木佐ちゃんは身を捩っているが、それでも羽田は離さない。
「その汚い手を離せと言っている!」
リアムはスタスタと羽田に近寄ると、木佐ちゃんを掴んでいる方の腕を掴んだ。
力がなくとも、やり方が分かれば制することは出来る。
リアムは思い切り掴んだ腕を外側に捻った。
「あいてててててっ!!」
それでも羽田の力は強い。反対側の手でリアムに手を伸ばしてきたので、更に捻りつつ咄嗟に足払いをした。
パンプスがすっ飛んで行ったが、同時に羽田が床にドオオン! と盛大な音を立てて尻もちをついた。何が起きたか理解出来ていないのか、巻き込まれぬ様手を離したというのに目をパチクリとしているだけだ。
祐介がやって来ると、転がっていったパンプスを拾ってくるとリアムの前に片膝を付き、靴を支えた。
「どうぞ」
「済まん」
リアムがパンプスを履くと、それまでポカンと見ていた潮崎がぷっと笑い出した。
「野原さん、格好いいじゃない!」
「靴飛んでったけどね」
祐介もにっこりと笑うと、リアムの肩を掴み一歩羽田から距離を取らせた。
周りの社員の一人、あれは確か山口恭一だったか、がぽっちゃりとした身体を震わせながら拍手を始めた。
「よっ! やるね!」
祐介曰くお調子者でおっちょこちょい、三十路に入ったばかりの独身で秘書の早川ユメに惚れているとのことだ。社長の愛人に岡惚れするとは何とも剛気である。
「なっ何だよお前らまで! 畜生!」
羽田が真っ赤になって立ち上がると鞄を持ち部屋から出て行く。
「羽田さんどちらへ?」
潮崎が声を掛けると、
「営業に決まってんだろ! 今日は直帰!」
と言い捨てて行った。潮崎がやれやれ、といった風に肩をすくめてみせた。そして言った。
「それにしても野原さん、その喋り方どうし……」
「実はですね潮崎さん!」
祐介が食い気味に言うと、潮崎に思い切り近付いた。落ち着け、祐介。潮崎の目が泳いでしまっている。明らかに今一番おかしいのは祐介だ。
「サツキちゃん、週末に天空の城にいる大佐に滅茶苦茶はまっちゃって!」
確かにあれは非常に面白かったので、リアムはとりあえず頷いておいた。あれの真似というならば問題ない。それ位にはあの大佐に哀愁に似た同情を感じてもいる。
そういえば先程から木佐ちゃんが静かだが、大丈夫だろうか。
リアムはぼうっとしている木佐ちゃんの前に行き少し屈んで顔を覗き込む。
「……大丈夫か?」
まつ毛の上に横髪が引っかかっている。リアムはそれを取ってやった。可哀想に、余程怖かったに違いない。
すると、木佐ちゃんの顔がぽっと赤くなり、目を逸らされてしまった。
「なあにーサツキちゃん、珍しく怖い顔しちゃってー。あ、山岸がいるからってちょっと強気になってんのかなあ?」
リアムは言った。
「木佐ちゃん殿に置いた貴様の手を離せ」
「……はい?」
木佐ちゃんは身を捩っているが、それでも羽田は離さない。
「その汚い手を離せと言っている!」
リアムはスタスタと羽田に近寄ると、木佐ちゃんを掴んでいる方の腕を掴んだ。
力がなくとも、やり方が分かれば制することは出来る。
リアムは思い切り掴んだ腕を外側に捻った。
「あいてててててっ!!」
それでも羽田の力は強い。反対側の手でリアムに手を伸ばしてきたので、更に捻りつつ咄嗟に足払いをした。
パンプスがすっ飛んで行ったが、同時に羽田が床にドオオン! と盛大な音を立てて尻もちをついた。何が起きたか理解出来ていないのか、巻き込まれぬ様手を離したというのに目をパチクリとしているだけだ。
祐介がやって来ると、転がっていったパンプスを拾ってくるとリアムの前に片膝を付き、靴を支えた。
「どうぞ」
「済まん」
リアムがパンプスを履くと、それまでポカンと見ていた潮崎がぷっと笑い出した。
「野原さん、格好いいじゃない!」
「靴飛んでったけどね」
祐介もにっこりと笑うと、リアムの肩を掴み一歩羽田から距離を取らせた。
周りの社員の一人、あれは確か山口恭一だったか、がぽっちゃりとした身体を震わせながら拍手を始めた。
「よっ! やるね!」
祐介曰くお調子者でおっちょこちょい、三十路に入ったばかりの独身で秘書の早川ユメに惚れているとのことだ。社長の愛人に岡惚れするとは何とも剛気である。
「なっ何だよお前らまで! 畜生!」
羽田が真っ赤になって立ち上がると鞄を持ち部屋から出て行く。
「羽田さんどちらへ?」
潮崎が声を掛けると、
「営業に決まってんだろ! 今日は直帰!」
と言い捨てて行った。潮崎がやれやれ、といった風に肩をすくめてみせた。そして言った。
「それにしても野原さん、その喋り方どうし……」
「実はですね潮崎さん!」
祐介が食い気味に言うと、潮崎に思い切り近付いた。落ち着け、祐介。潮崎の目が泳いでしまっている。明らかに今一番おかしいのは祐介だ。
「サツキちゃん、週末に天空の城にいる大佐に滅茶苦茶はまっちゃって!」
確かにあれは非常に面白かったので、リアムはとりあえず頷いておいた。あれの真似というならば問題ない。それ位にはあの大佐に哀愁に似た同情を感じてもいる。
そういえば先程から木佐ちゃんが静かだが、大丈夫だろうか。
リアムはぼうっとしている木佐ちゃんの前に行き少し屈んで顔を覗き込む。
「……大丈夫か?」
まつ毛の上に横髪が引っかかっている。リアムはそれを取ってやった。可哀想に、余程怖かったに違いない。
すると、木佐ちゃんの顔がぽっと赤くなり、目を逸らされてしまった。
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