上 下
163 / 731
第二章 中級編開始

第162話 OLサツキの中級編初日の予定はまさかの

しおりを挟む
 ほくほくとした顔でようやくこちらに戻って来たウルスラが、サツキに挨拶をした。

「おはようサツキ。よく寝れた?」

 言いつつ、空いた席に座る。

「うん、お陰様で。ウルスラもちゃんと休めた?」
「ばっちりよ! と、言いたいところなんだけど、昨晩問題が起きちゃってさあ」
「問題? どうしたの?」

 ウルスラがはあー、と大袈裟な溜息をついた。

「うちの女子寮、私も含めて割とつぶ揃いな訳よ」
「ゴリラ女が何か言い出したぞ」
「サツキ、こいつ燃やしてもいいわよ」
「あ、あはは……で?」

 キッとユラを睨み付けたウルスラが、気を取り直した様ににっこり笑顔をサツキに見せた。そしてすぐに暗い顔に戻る。忙しない。

「春祭りが今日からなのをまあすっかり忘れていた訳だけど、毎年不届き者が侵入しようとするから用心棒してくれないか、と依頼されちゃった訳」
「別に断ればいいじゃないか」

 アールが、珍しく真っ当な意見を述べた。

「私も初めは断ったのよ。だってサツキと春祭りで飲み食いしまくりたいと思ってたしさ。だけど、祭りの所為で誰も雇えないらしいし、報酬も釣り上げられてさ、つい……」
「え、ウルスラ引き受けちゃったの?」

 一緒に春祭りを楽しもうと思ってたのに。

「そもそもさ、金はあるだろ? 何でそんなに金金言ってんの?」

 ユラが尋ねる。そう、ドラゴン討伐でもそこそこの金額が入金するって言ってた筈なのに。

 ウルスラが、深刻な表情で皆を見渡した。

「ドラゴン討伐代、思っていたよりも少なかったでしょ?」
「まあ、確かに思った」

 ユラが頷く。そうだったんだ。

「でもまあそれでも、て思ってたらさ、昨日戻って口座を確認したら、残高が物凄い減ってた訳」
「え? 何で?」

 アールが身を乗り出す。

 ウルスラが頭を抱えた。

「前に別のパーティーで大型ゴブリン討伐の任務を受けた時に、別の街の中で戦うことになっちゃって、その時に壊した教会の補修金がごっそりと寄付って名目で引かれてたのよおおおっ」
「それは酷い。教会の奴らがめついからな」

 ユラの顔が歪む。ウルスラが更に叫んだ。

「他のパーティーメンバーの奴ら、私がドラゴン討伐したからって分担分全部私に押し付けやがって、しかもトンズラこいてもうこの街にはいないのが昨日追いかけまくって判明して! ああもうっ!」
「あー。ご愁傷様……」

 アールが、哀れなものを見る目付きになった。

「てことで、お金あんまりなくなっちゃったから、また稼がないとなの。サツキ、一緒に春祭りでうふうふしたかったけど、ごめん!」

 ウルスラが頭を深々と下げた。うふうふって、一体何をするつもりだったんだろうか。

 でも事情が事情だ、仕方ない。ラムが不安そうにきゅ、と手を握ってきたので、サツキはひとつ頷くと、宣言する。

「大丈夫! 私、ラムちゃんと二人で参加してみる!」

 ラムがぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...