上 下
162 / 731
第二章 中級編開始

第161話 魔術師リアムの中級編初日出社後

しおりを挟む
 祐介が、会社の受付の鍵を開けて入る。中には、先程のカフェの様な雰囲気の室内が広がっていた。違いは、各々の机の上にパソコンが置いてあることか。

「僕の席はここ」

 祐介が入り口から入って右側の席のひとつつに鞄を置く。

「で、サツキちゃんの席がここ」

 祐介が向かい合いになっている机の入り口から見て手前側、祐介の席からは斜め向かいの席にリアムを呼ぶと、座らせた。

「パソコンの立ち上げはここ。パスワードって書いてあるのが暗証番号のこと」
「よし、『キリ・リース』!」

 すると、ブォン、とアルファベットと数字の羅列が浮かび上がる。

「Idollover329……まさかこれ、アイドルラバーサツキ……」
「どういうことだ?」
「うん、僕には難易度が高過ぎるからまた今度。先を急ごう」
「あ、ああ」

 よく分からないが、ここは祐介の指示に従うべきだろう。祐介に打つ場所を教わりながら、確実に入力していく。

「で、メールの立ち上げがここで」

 指を差された所にカーソルなるものを移動しようとするが、上手くいかない。

「動かし方はこう」

 マウスを掴むリアムの手の上から祐介がマウスを握り、誘導する。おお、動いた。

「ダブルクリック、えーと二回ぽちぽちっとやる」

 メールソフトなるものが開くと、太く強調されたものがブワッと流れて行った。

「……えげつない量のメールだなあ。心配」

 祐介はそう言うと、またリアムを後ろから抱き締める。落ち着け祐介。何だか昨日からやたらと接触が多くはないか? なのでリアムは言った。

「落ち着け祐介」
「落ち着く為にやってます」
「祐介、会社では駄目なのではなかったのか」
「まだ誰もいないし」

 とりつく島もない。

「ねえ、お昼ご飯は一緒に行こうね」
「無論だ、私にはまだ何もよく分からぬ」
「困ったらすぐ探して」
「分かっている、私が頼れるのは祐介しかいないのだから」
「……くおお……あ。呼び方だけ。僕先輩だからさ、一応さ」

 祐介が何か言いかけたその時。ガタタ!! と物凄い音が入り口の方からした。リアムがそちらを見ると、驚愕の表情でこちらを見ているあの顔は。

「木佐ちゃん殿?」
「やっぱりその呼び方でいくのね」
「どうもしっくりきていてな」

 祐介がようやくリアムを解放する。しかし、祐介の両手は肩に乗せられたままだ。

「え? え? 何あんた達、いつの間に、え?」

 混乱の表情でこちらを見ている木佐ちゃんは、リアム的に見ればそこそこの美人である。少しくたびれた雰囲気はあるが、キリッとしてスッキリとした顔である。

 祐介がにっこりと笑った。

「木佐さん、おはようございます」
「お、おはよう……え? 今の何? 幻?」
「あはは、幻って。僕達付き合ってるんですよ。やだなあ見られちゃった、ねえサツキちゃん?」

 抱きついてきたのは祐介だが、とりあえずリアムはこくこくと頷いた。

 祐介が続ける。

「サツキちゃんはちょっと待ってて。僕、木佐さんと話があるんだ」

 恐ろしい圧の笑顔を振り撒き、祐介が言い放った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...