上 下
136 / 731
第一章 初級編開始

第135話 魔術師リアム、初級編三日目午後のメイク講座の後は遊ばれる

しおりを挟む
 カミソリの使い方、眉毛はピンセットなる摘む物で整えるよりも眉毛カッターという何だか恐ろしげな物で整えた方が将来皮膚が垂れないとか、脇も腕も足もそれぞれの使い方、利点や欠点を説明された後、祐介がさっと置いていった鞄を郁姉が漁りだした。

「シンプルだけど、この黒のワンピースなんかいいかも! 私じゃちょっと貧相に見えるから着なかったんだよねー。サツキちゃんならこの襟のV字から覗く谷間が、ふふふふ」

 郁姉がワキワキしながらワンピースなる一枚のペラッペラの服を手に近付いてきた。祐介……はいない。ああ! 逃げられん! こんなぴらぴらの服など着用したら、絶対スースーする。風でも吹いたら丸見えではないか!

「じゃ、脱ごうか」
「……はい」

 諦めた。無理だ。この女からは逃げることは敵わないのが本能で理解出来た。恐るべし祐介の姉。しかし、この上にいるしず姉とかいう者には隠せと言っていたことを考えると、しず姉は一体どういった人物なのか。知るのが恐ろしかった。

 大人しく服を脱ぐと、うへ、うへへ、という笑い声が聞こえる。怖い。

「はい、これ着て」

 大人しく上から被ると、胸で引っかかった。

「うおお……そこで引っかかるんだ……堪んないねえ」
「あの、あんまり見ないで……」

 服の裾を引っ張り整えて完成だ。郁姉が、ない袖を捲くった。

「よし! 髪の毛はアップにして、つけまつげして、ちょっと綺麗系目指して、うふふ」

 リアムは心を無にすることにした。別のことを考えるのだ。

 リアムが観念している間に、郁姉が髪を弄り、まつげを盛り、唇にいやにベタベタする物を塗りたくり、目と眉毛を弄くり回されること三十分程度か。

「――うほおおお」

 目を滅茶苦茶輝かせた郁姉が、スマホで電話を掛けた。

「あ、祐介? 今すぐ来い」

 そして返事も待たずブチッと会話を終了した。隣の家から、祐介が移動する音が聞こえる。

「壁うっすいねえ」
「同感だ……です」
「これ周りにやってる声聞こえちゃうんじゃない? なーんてね、あはは!」

 何のことを言っているかは分かった。まあ郁姉はリアムの中身が男なことを知らない。リアムは羞恥にただひたすら耐えることにした。

 職場でも付き合っているということを開示するということは、こういったことを言われるということだ。

 しかしあれだ、これは祐介が言うところのセクハラというものにはならないのだろうか。

「お邪魔しまーす……あっ」

 祐介が鍵を開けて入ってくると、為す術もなくただ突っ立っていたリアムを見、止まった。口を開けて見ている。そういえばリアムはまだ自分の姿を見ていない。呆れるほどおかしな姿なのか。

「どう?」
「……いいです」
「姉に言う言葉は?」
「感謝します、お姉様」
「あの、祐介、今どんな格好に……」

 すると、祐介が言った。

「やばい」
「は?」
「とりあえず写真撮っていいですか」
「……は?」

 祐介はリアムの手を取ると、ベッドに座らせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの… 乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。 乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い! 原作小説?1巻しか読んでない! 暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。 だったら我が道を行くしかないじゃない? 両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。 本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。 ※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました) ※残虐シーンは控えめの描写です ※カクヨム、小説家になろうでも公開中です

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました! 定番の転生しました、前世アラサー女子です。 前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。 ・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで? どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。 しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前? ええーっ! まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。 しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる! 家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。 えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動? そんなの知らなーい! みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす! え?違う? とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。 R15は保険です。 更新は不定期です。 「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。 2021/8/21 改めて投稿し直しました。

貧乏男爵家の四男に転生したが、奴隷として売られてしまった

竹桜
ファンタジー
 林業に従事していた主人公は倒木に押し潰されて死んでしまった。  死んだ筈の主人公は異世界に転生したのだ。  貧乏男爵四男に。  転生したのは良いが、奴隷商に売れてしまう。  そんな主人公は何気ない斧を持ち、異世界を生き抜く。

侯爵夫人の嫁探し~不細工な平民でもお嫁に行けますか?

ひよこ1号
恋愛
平民の商家に生まれたアリーナは不細工である。愛嬌はあるけれど、美人ではない。母と妹は絶世の、と修飾語が付くくらい美人なのに。母親に見下され、妹には励まされ、日々働いていたアリーナに、運命の転機が訪れる。 美人の妹が断った侯爵夫人が息子の為に行う花嫁探しの試験を、不細工な姉が受ける事に!叔父の伯爵の元へ養女に行き、従姉に馬鹿にされつつも、花嫁募集のファルネス侯爵家へ……勿論そこには、美人な恋敵達がうようよ。不細工なのに、何故か侯爵夫人に気に入られてしまい…?もう花嫁じゃなくて、使用人でよくない?とポジティブに生きる残念ヒロインが幸せになるまで。 ※40話で完結です(終了まで毎日更新)

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花
ファンタジー
 15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。  どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。  そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。  しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。 「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」  だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。  受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。  アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。 2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。

処理中です...