上 下
118 / 731
第一章 初級編開始

第117話 魔術師リアム、初級編三日目の午前開始

しおりを挟む
 祐介がベッドにうつ伏せになり目隠しをしている間に、リアムはとうとう自分ひとりの力でブラジャーを着けることに成功した。

 昨日祐介に言われたやり方でやってみたところ、あっさりと出来たのだ。

「着られた……着られたぞ!」
「サツキちゃん、想像しちゃうから黙ってようか」
「あ……済まぬ」
「うん」

 先程祐介に叱られた後から、どうも祐介の発言が大分直接的になってきた様だ。

 リアムが呑気にしている間、気付かぬ内に祐介は我慢を強いられてきたのだろう。恐るべしサツキの悩殺力。

 リアムがあまり意識せずやっていることで、祐介を困らせていることがあるのかもしれない。

 服を着ると、ベッドに腰掛け祐介の前髪を掬う。片目が合った。

「祐介、着替えたぞ。待たせたな」
「……うん」

 祐介が起き上がったので、リアムは直接尋ねることにした。

「祐介、私はどうも無頓着の様でな、恋人なる者も殆どいた試しがなかったので、いまいち男女のそういったことが分からん」
「いきなり何言ってんの」
「勿論経験はあるがな、娼館ではなかなか次もまた来いと言われず、結構傷ついたものだ」
「これ何? 何始まったの?」

 リアムは続ける。

「一般の女性でも好いてくれる者はいたが、先日話した様にやや特殊な傾向の者に好かれることが多くてな」
「血文字とか」
「そう、そういうのだ。だから積極的な女性は少々怖かった。ははは」
「笑ってるよこの人」
「なのでな、祐介」
「はい」

 肝心な質問はこの先だ。

「私がどうすると、祐介は欲情してしまうのだ?」
「これ何の拷問?」

 リアムは真剣な眼差しで祐介の両肩に手を乗せ、言った。

「遠慮なく言ってくれ、祐介」
「勘弁して」
「遠慮しなくていいのだぞ?」
「遠慮させて下さい、お願いします」

 祐介は頑なだ。リアムは首を傾げた。

「もしや……性癖が特殊なのか?」
「特殊……」

 祐介が頬を引き攣らせた。この表情。きっとそうなのだろう。であれば言いにくいのも仕方あるまい。リアムはうんうんと頷いた。

「分かった、余程言いにくいことなのであれば仕方ない。私もなるべく祐介を刺激しない様には心がけるが、如何せん無意識にやってしまうこともあるだろうから、その時は遠慮せず言って欲しい」

 祐介は頭を抱えてしまっている。前髪を手で退かすと、赤い顔が出てきた。

「済まなかった、元気を出してくれ」
「とっても元気ですけど」
「そうか、ならば今日も一日宜しく頼むぞ」
「はいはい」

 ようやく祐介に笑顔が戻った。祐介が立ち上がる。

「職場の人の写真がうちにあるから、うちで説明するよ。パソコンの使い方も、会社のとちょっと違うけど大体一緒だから、うちのを触ってみて」
「うむ……じゃない、はい」

 祐介が玄関の扉を開け周囲を確認すると、あ、と言ってリアムを振り返った。

「やっぱり、特殊かもね」
「うん?」
「僕の性癖。確かに言われてみれば特殊。教えないけど」

 逆光の中、最高級の笑顔を見せる祐介だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...