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第一章 初級編開始
第114話 OLサツキ、初級編二日目終了
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ラムと手を繋いで炊事場に向かうと、楽しそうな話し声がする。アールとウルスラももう風呂から出たのだろう。
「女湯、広くて最高だったわー」
「なあ、この間行ったダンジョンの初めの方にあった風呂、覚えてるか?」
「あれだろ、アールが足滑らせて頭打って素っ裸で気絶したやつ」
「あれは驚いたわよ! ユラとリアムが腰にタオル巻きつけてアールの足持って引きずってて、あそこは丸見えだし絵面が間抜けすぎてもう傑作だったわー」
「ウルスラ俺の大事なとこ見たの? え?」
「リアムがさ、『アールには黙っておいた方が良かろう』って言うからさ」
「今の真似似てる、ユラ!」
ぎゃははは、と三人楽しそうに話している。思わず、サツキの足が止まった。ラムの足も止まっている。
サツキがラムを見ると、薄暗い中そこだけ明るい三人がいる場所を、物欲しそうに見つめていた。
多分、自分も今、ラムと同じ表情をしているに違いない。
自分の知らない、三人の思い出。サツキがいる時にああいった話題が出てこないのは、皆それなりにサツキに気を遣っているからだろう。
サツキはあそこに入れない。でも仕方のないことだ。
「ラム、私も一緒」
ラムがサツキを見上げる。
「一緒だから、大丈夫だよ」
ラムは少しの間の後、にっこりと笑うと頷いた。サツキも笑顔になった。
「さ、戻ろう」
二人は再び歩き始めた。ウルスラがサツキに気付いて手を振る。サツキも手を振ると、声を掛けた。
「ねえ、これって食べられる?」
ラムの身体の中に浮遊する果物を皆にも見せる。ラムが頷くと、自分の手をずぼっと中に突っ込み果物を一つずつ取り出してはサツキに渡す。ユラが手を出してきたので、サツキはそれをユラに手渡した。
「ありがとうラムちゃん」
サツキが礼を言うと、アールが首を傾げた。
「ラムちゃん? あれ? 何か顔が違う? あれ、別の子?」
「同じ子だよ。さっき名前を付けてあげたら、レベルアップして少し弾力が増えたの」
「スライム、す、ら、い、む、ラム……?」
ウルスラが尋ねるので、サツキは苦笑いしつつ頷いた。
「うん、そう。全然思いつかなくて、そしたらラムちゃんがそれがいいってうんうんするから」
ユラは果物をひとつずつ丹念に確認している。
アールの足元に、緑のスライムがニタニタ笑いながら近付いてきた。アールの服の裾を引っ張ってアピールしている。
「うん? どうした?」
「名前を付けて欲しいんだと思うよ」
「え! サツキ、モンスターの言うことが分かるのか!?」
「え……分からないけどこの場合明らかに……」
ウルスラがケラケラと笑った。
「アールは鈍感だから」
「うわ、傷つくなあ」
「事実だろ」
ユラはアールにも容赦ない。アールは腕組みをしつつ首を傾げると、緑のスライムに言った。
「明日までに考えておく! 格好いいの用意するからな!」
緑のスライムが人相の悪い笑顔ではずんだのだった。
「女湯、広くて最高だったわー」
「なあ、この間行ったダンジョンの初めの方にあった風呂、覚えてるか?」
「あれだろ、アールが足滑らせて頭打って素っ裸で気絶したやつ」
「あれは驚いたわよ! ユラとリアムが腰にタオル巻きつけてアールの足持って引きずってて、あそこは丸見えだし絵面が間抜けすぎてもう傑作だったわー」
「ウルスラ俺の大事なとこ見たの? え?」
「リアムがさ、『アールには黙っておいた方が良かろう』って言うからさ」
「今の真似似てる、ユラ!」
ぎゃははは、と三人楽しそうに話している。思わず、サツキの足が止まった。ラムの足も止まっている。
サツキがラムを見ると、薄暗い中そこだけ明るい三人がいる場所を、物欲しそうに見つめていた。
多分、自分も今、ラムと同じ表情をしているに違いない。
自分の知らない、三人の思い出。サツキがいる時にああいった話題が出てこないのは、皆それなりにサツキに気を遣っているからだろう。
サツキはあそこに入れない。でも仕方のないことだ。
「ラム、私も一緒」
ラムがサツキを見上げる。
「一緒だから、大丈夫だよ」
ラムは少しの間の後、にっこりと笑うと頷いた。サツキも笑顔になった。
「さ、戻ろう」
二人は再び歩き始めた。ウルスラがサツキに気付いて手を振る。サツキも手を振ると、声を掛けた。
「ねえ、これって食べられる?」
ラムの身体の中に浮遊する果物を皆にも見せる。ラムが頷くと、自分の手をずぼっと中に突っ込み果物を一つずつ取り出してはサツキに渡す。ユラが手を出してきたので、サツキはそれをユラに手渡した。
「ありがとうラムちゃん」
サツキが礼を言うと、アールが首を傾げた。
「ラムちゃん? あれ? 何か顔が違う? あれ、別の子?」
「同じ子だよ。さっき名前を付けてあげたら、レベルアップして少し弾力が増えたの」
「スライム、す、ら、い、む、ラム……?」
ウルスラが尋ねるので、サツキは苦笑いしつつ頷いた。
「うん、そう。全然思いつかなくて、そしたらラムちゃんがそれがいいってうんうんするから」
ユラは果物をひとつずつ丹念に確認している。
アールの足元に、緑のスライムがニタニタ笑いながら近付いてきた。アールの服の裾を引っ張ってアピールしている。
「うん? どうした?」
「名前を付けて欲しいんだと思うよ」
「え! サツキ、モンスターの言うことが分かるのか!?」
「え……分からないけどこの場合明らかに……」
ウルスラがケラケラと笑った。
「アールは鈍感だから」
「うわ、傷つくなあ」
「事実だろ」
ユラはアールにも容赦ない。アールは腕組みをしつつ首を傾げると、緑のスライムに言った。
「明日までに考えておく! 格好いいの用意するからな!」
緑のスライムが人相の悪い笑顔ではずんだのだった。
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