110 / 731
第一章 初級編開始
第109話 魔術師リアム、初級編二日目の夜は更ける
しおりを挟む
リアムの喉を、ビールが通過して行った。ぷはっ! というこの爽快感。
「旨い!」
「あー……飲んじゃった」
祐介が深い溜息をついた。
「よいではないか」
「悪代官みたいな言い方止めて」
「あくだいかんとは?」
「説明してあげるから、僕の上からどこうか」
「やだ! どいたらビールを飲んでしまうつもりだろう!」
「……これ僕のなんだけど……」
「飲み終わるまではどかないぞ!」
リアムはグラスを持つ祐介の手を両手で掴み、祐介の胸に思い切り寄りかかり、もうひと口。
「全然ひと口じゃないじゃん」
「私のひと口は大きいのだ!」
「のだ! ってさ……あの、飲む時腕に押し付けるの止めてもらえませんか」
「はあー旨い」
「聞いちゃいねえ……」
リアムが後ろの祐介を振り返り見上げる。
「祐介も飲むか?」
「そもそも僕のだし」
「要らないなら私が」
「飲む! 飲むから貸して!」
「全部飲まれたら溜まったものではない。私が飲ます!」
「酔っぱらい……勘弁して……」
「ははは! 楽しいな、祐介!」
すぐ近くの祐介の顔は、赤かった。ぐび、と飲むと喉仏が動く。
「飲み過ぎではないか? 顔が赤いぞ」
「サツキちゃんに言われたくないよ」
「私は強いぞ、問題ない」
「いや、相当酔っ払ってるから。……やっぱり絡み酒だった……」
「祐介は酔った様だから、残りは私がいただこう」
「焦点の合ってない目で言われると怖いんだけど」
「いただきだ!」
リアムは、奪い取る様にして残りを一気に飲み干した。ぽふ、とまた祐介に寄り掛かる。
「全部飲んじゃったよ……サツキちゃん? 飲み終わったし降りない? ちょっとほら、色々拙いし、ね?」
すると、リアムは囁く様な声で祐介を呼んだ。
「祐介……」
「……はい」
ごくり、と祐介は唾を呑んだ。
「うるさい、少し静かにしろ」
「うっわー」
「寝る」
「え? 嘘でしょサツキちゃん、人の上乗ったまま寝ないでさ、今日こそ自分のベッドで寝なよ」
「祐介が連れてってくれ……」
リアムはそれだけ絞り出す様に言うと、目を閉じた。急に辺りが暗く感じ始めた。身体は重いが、ここは温かくてなかなか悪くない。
「……生殺し……」
膝を伸ばし背もたれに寄りかかる祐介の上にちょこんと乗り、祐介に思い切りもたれかかる。リアムは、祐介のグラスを持った方の腕に両腕を絡ませたまま、すう、と寝てしまった。
「サツキちゃーん? 腕掴まれたままだと動けないよー」
心底困った様子で祐介がリアムに話しかけるが、反応は一切ない。
祐介はふう、と息を吐くと、空いた方の手にグラスを持ち替え、床にグラスを置く。足で毛布をたぐり寄せると、リアムの上に掛けた。
リアムの口に入った髪の毛に気付き、指で取ってやる。
「全く……ようやく僕に懐いてくれたってことかな?」
祐介はくすりと笑うと、リアムを抱えたまま暫く天井を見つめていた。
「旨い!」
「あー……飲んじゃった」
祐介が深い溜息をついた。
「よいではないか」
「悪代官みたいな言い方止めて」
「あくだいかんとは?」
「説明してあげるから、僕の上からどこうか」
「やだ! どいたらビールを飲んでしまうつもりだろう!」
「……これ僕のなんだけど……」
「飲み終わるまではどかないぞ!」
リアムはグラスを持つ祐介の手を両手で掴み、祐介の胸に思い切り寄りかかり、もうひと口。
「全然ひと口じゃないじゃん」
「私のひと口は大きいのだ!」
「のだ! ってさ……あの、飲む時腕に押し付けるの止めてもらえませんか」
「はあー旨い」
「聞いちゃいねえ……」
リアムが後ろの祐介を振り返り見上げる。
「祐介も飲むか?」
「そもそも僕のだし」
「要らないなら私が」
「飲む! 飲むから貸して!」
「全部飲まれたら溜まったものではない。私が飲ます!」
「酔っぱらい……勘弁して……」
「ははは! 楽しいな、祐介!」
すぐ近くの祐介の顔は、赤かった。ぐび、と飲むと喉仏が動く。
「飲み過ぎではないか? 顔が赤いぞ」
「サツキちゃんに言われたくないよ」
「私は強いぞ、問題ない」
「いや、相当酔っ払ってるから。……やっぱり絡み酒だった……」
「祐介は酔った様だから、残りは私がいただこう」
「焦点の合ってない目で言われると怖いんだけど」
「いただきだ!」
リアムは、奪い取る様にして残りを一気に飲み干した。ぽふ、とまた祐介に寄り掛かる。
「全部飲んじゃったよ……サツキちゃん? 飲み終わったし降りない? ちょっとほら、色々拙いし、ね?」
すると、リアムは囁く様な声で祐介を呼んだ。
「祐介……」
「……はい」
ごくり、と祐介は唾を呑んだ。
「うるさい、少し静かにしろ」
「うっわー」
「寝る」
「え? 嘘でしょサツキちゃん、人の上乗ったまま寝ないでさ、今日こそ自分のベッドで寝なよ」
「祐介が連れてってくれ……」
リアムはそれだけ絞り出す様に言うと、目を閉じた。急に辺りが暗く感じ始めた。身体は重いが、ここは温かくてなかなか悪くない。
「……生殺し……」
膝を伸ばし背もたれに寄りかかる祐介の上にちょこんと乗り、祐介に思い切りもたれかかる。リアムは、祐介のグラスを持った方の腕に両腕を絡ませたまま、すう、と寝てしまった。
「サツキちゃーん? 腕掴まれたままだと動けないよー」
心底困った様子で祐介がリアムに話しかけるが、反応は一切ない。
祐介はふう、と息を吐くと、空いた方の手にグラスを持ち替え、床にグラスを置く。足で毛布をたぐり寄せると、リアムの上に掛けた。
リアムの口に入った髪の毛に気付き、指で取ってやる。
「全く……ようやく僕に懐いてくれたってことかな?」
祐介はくすりと笑うと、リアムを抱えたまま暫く天井を見つめていた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる