106 / 731
第一章 初級編開始
第105話 魔術師リアム、初級編二日目の風呂上がり
しおりを挟む
今日も祐介が髪の毛を丁寧に乾かしてくれた。頭に時折触れる指が、鳥肌を立たせる。気持ちいいのだが、このまま身を委ねてしまってはいけない。リアムは必死で気を引き締めた。
ドライヤーが終わると、今夜は映画を観ながらリアムお待ちかねの酒の時間だ。
「最後に飲んだパチパチスライムワイン、あれをまたいつか飲めたらいいのだが。それが惜しいな」
「何パチパチスライムワインて」
祐介が、グラスにビールなる黄金色の液体に白い泡が浮く酒を注ぎ、リアムに手渡した。
「黄色のスライムを白ワインで割るのだ。コーラと近いが、甘くなくさっぱりしていて旨い」
「スライム飲むんだ……」
「スライムは飲み物だぞ、祐介」
「うわー世界観」
「まあそれはどうでもいい、祐介、ほら乾杯だ乾杯」
「はいはい。――あ、サツキちゃん、飲む前に」
祐介がベッドの上で正座をした。何となく自分もしないといけないかと思い、リアムも向き合って正座をする。
「サツキちゃんの身体は、多分お酒は弱いから気を付けて」
「何と!」
「前にその、酔っ払って絡まれて正直面倒くさ……いやちょっと大変だった時が一度あって、ははは」
「何だ、サツキとは酒を酌み交わす仲だったのではないか」
「いや、そういうんじゃなくて、職場の飲み会でね。二人きりとか、決してそんな事実はありませんから!」
キリ! と祐介が断言した。サツキの身体に入っているリアムに必死に弁明する意味がよく分からなかったが、ビールの泡が減ってきている。早く飲みたいので流すことにした。
「でもまあ私は強かったからな、きっと平気ではないか」
「信用出来ない」
即答された。
「いいから乾杯だ! ほら泡が減ってきているではないか!」
「あーはいはい、飲みたいのね。乾杯」
「乾杯!」
リアムがビールを少量口に含み、舌で味わう。辛味と苦味があってなかなか旨い。ゴクリ、と喉が音を鳴らす。もうひと口、今度は少し多めだ。嚥下し、口の端に付いた泡を指の腹で拭った。旨い。
祐介と目が合った。
「何だ」
「いえ、何でもないです」
「はっきりしない奴はもてないぞ」
「別にもてなくていいです。ひとりに好かれればいいもんね」
「まあ一理あるな」
「でしょ?」
「うむ。さ、映画だ映画」
「今流したよね……はいはい」
祐介がグラスをリアムに預けると、DVDをセットする。ベッドに戻ってくると、リアムの足の上に毛布を掛けた。
「何だ? 寝ないから大丈夫だぞ」
「違うよ。目に毒なの」
つい癖で胡座をかいていたことに気付いた。そして今日は短パンだ。暑かったのだ、仕方なかろう。
祐介はグラスを受け取ると、再生ボタンを押した。何だか楽しそうな音楽が流れ始める。
「サツキちゃん、これも作り物のお話だけど、時代設定は少し前の日本だから参考になるかも」
「うむ。分かった。しかし祐介、今日は部屋を暗くしないのか?」
今日は部屋の電気は点いたままだ。すると、祐介がリアムの耳元で囁く様に言った。
「また抱きついて寝てもいいならだけど」
「お……理解した。点けたままでいこう」
「うん」
リアムは画面に集中した。時折触れる肩から、なるべく意識を逸しながら。
ドライヤーが終わると、今夜は映画を観ながらリアムお待ちかねの酒の時間だ。
「最後に飲んだパチパチスライムワイン、あれをまたいつか飲めたらいいのだが。それが惜しいな」
「何パチパチスライムワインて」
祐介が、グラスにビールなる黄金色の液体に白い泡が浮く酒を注ぎ、リアムに手渡した。
「黄色のスライムを白ワインで割るのだ。コーラと近いが、甘くなくさっぱりしていて旨い」
「スライム飲むんだ……」
「スライムは飲み物だぞ、祐介」
「うわー世界観」
「まあそれはどうでもいい、祐介、ほら乾杯だ乾杯」
「はいはい。――あ、サツキちゃん、飲む前に」
祐介がベッドの上で正座をした。何となく自分もしないといけないかと思い、リアムも向き合って正座をする。
「サツキちゃんの身体は、多分お酒は弱いから気を付けて」
「何と!」
「前にその、酔っ払って絡まれて正直面倒くさ……いやちょっと大変だった時が一度あって、ははは」
「何だ、サツキとは酒を酌み交わす仲だったのではないか」
「いや、そういうんじゃなくて、職場の飲み会でね。二人きりとか、決してそんな事実はありませんから!」
キリ! と祐介が断言した。サツキの身体に入っているリアムに必死に弁明する意味がよく分からなかったが、ビールの泡が減ってきている。早く飲みたいので流すことにした。
「でもまあ私は強かったからな、きっと平気ではないか」
「信用出来ない」
即答された。
「いいから乾杯だ! ほら泡が減ってきているではないか!」
「あーはいはい、飲みたいのね。乾杯」
「乾杯!」
リアムがビールを少量口に含み、舌で味わう。辛味と苦味があってなかなか旨い。ゴクリ、と喉が音を鳴らす。もうひと口、今度は少し多めだ。嚥下し、口の端に付いた泡を指の腹で拭った。旨い。
祐介と目が合った。
「何だ」
「いえ、何でもないです」
「はっきりしない奴はもてないぞ」
「別にもてなくていいです。ひとりに好かれればいいもんね」
「まあ一理あるな」
「でしょ?」
「うむ。さ、映画だ映画」
「今流したよね……はいはい」
祐介がグラスをリアムに預けると、DVDをセットする。ベッドに戻ってくると、リアムの足の上に毛布を掛けた。
「何だ? 寝ないから大丈夫だぞ」
「違うよ。目に毒なの」
つい癖で胡座をかいていたことに気付いた。そして今日は短パンだ。暑かったのだ、仕方なかろう。
祐介はグラスを受け取ると、再生ボタンを押した。何だか楽しそうな音楽が流れ始める。
「サツキちゃん、これも作り物のお話だけど、時代設定は少し前の日本だから参考になるかも」
「うむ。分かった。しかし祐介、今日は部屋を暗くしないのか?」
今日は部屋の電気は点いたままだ。すると、祐介がリアムの耳元で囁く様に言った。
「また抱きついて寝てもいいならだけど」
「お……理解した。点けたままでいこう」
「うん」
リアムは画面に集中した。時折触れる肩から、なるべく意識を逸しながら。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる