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第一章 初級編開始
第103話 魔術師リアム、初級編二日目夜は
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祐介が作ってくれた料理は、納豆スパゲッティという代物だ。見た目に反して非常に美味で、リアムは感動しながらあっという間に完食してしまった。
始め白い小箱に入った茶色い糸を引く豆を見た時はぞっとし、匂いを嗅ぎこんな物が食べ物なのかと驚いたが、火を通すと驚くほどまろやかになった。
スパゲッティの他は、お湯を入れる仕様のワカメスープだ。祐介はワカメが余程好きなのかもしれない。まああれだけの熱量で語っていたくらいだ、あながち間違いではなかろう。こちらも美味だった。
「じゃあ昨日と同じく、それぞれお風呂に入って、それから僕が迎えに行くね」
「分かった」
祐介が確認後先に外へ出る。リアムが中に入って鍵を閉めるまでは、外で待機するのだろう。毎回毎回、大変そうだ。
「祐介」
「はい」
「合鍵は作ってはならないのか?」
「……どういうことでしょう」
「複製は禁止されているのかどうかが気になってな」
「いやまあ別に鍵屋に行けば作れるけど」
「ならば明日、合鍵を作りたい」
「駅前にあるからいいけど……」
リアムは、自分の家の前に立ち寄りかかっている祐介に笑いかけた。
「そうしたら、私がまだ風呂に入っている間でも入って待っていられるだろう?」
「え、あ、もしかして僕に渡す合鍵?」
「それ以外に何がある」
「……はい、有り難く頂戴します」
祐介は、手で口を覆っている。
「じゃあ後程」
リアムが中に入ろうとすると。
「サツキちゃん!」
「何だ」
リアムが振り返る。
「僕の家の合鍵も、一緒に作って渡すから」
「お? そうか?」
羽田の用心の為には一人では行動出来ない。従ってリアムが祐介宅の合鍵を必要とする機会は当面なさそうであったが。
「……もらって下さい」
「うむ、ではいただこう」
では、と再度挨拶をして家の中に入った。扉を閉じ、後ろ手で鍵を掛ける。背中を扉に付くと、力が抜けてずるずるとしゃがんでしまった。
胸に手を当てる。
心臓までは少し距離がある筈なのに、ここにあるぞと激しく主張してくる。
必要ないではないか、とは、あんな懇願する様な表情で言われたら言える訳がなかった。
「分からないことは分からない、横に置くのだリアム」
自分に言い聞かせている内に、少し落ち着いてきた。
そうだ、今日は酒が飲めるのだ。こんなことをしている場合ではない!
リアムは勢いよく立ち上がると、急ぎ服を取り出す。パジャマは乾きすでに畳んであるが、昨日より今日の方がやや暑い気がする。初日に着たTシャツを出してみて、いやこれは透ける筈、と戻し別の少し大きめの紺色のTシャツを取り出した。あの時は正座で説教されたが、次はもしかしたらされないのでは、とふと思ったのだ。
今朝の近過ぎる距離を思い出した。
「考えても分からないことは横に置くのだ、リアム!」
頬をぱん! と叩くと、リアム風呂場へと向かったのだった。
始め白い小箱に入った茶色い糸を引く豆を見た時はぞっとし、匂いを嗅ぎこんな物が食べ物なのかと驚いたが、火を通すと驚くほどまろやかになった。
スパゲッティの他は、お湯を入れる仕様のワカメスープだ。祐介はワカメが余程好きなのかもしれない。まああれだけの熱量で語っていたくらいだ、あながち間違いではなかろう。こちらも美味だった。
「じゃあ昨日と同じく、それぞれお風呂に入って、それから僕が迎えに行くね」
「分かった」
祐介が確認後先に外へ出る。リアムが中に入って鍵を閉めるまでは、外で待機するのだろう。毎回毎回、大変そうだ。
「祐介」
「はい」
「合鍵は作ってはならないのか?」
「……どういうことでしょう」
「複製は禁止されているのかどうかが気になってな」
「いやまあ別に鍵屋に行けば作れるけど」
「ならば明日、合鍵を作りたい」
「駅前にあるからいいけど……」
リアムは、自分の家の前に立ち寄りかかっている祐介に笑いかけた。
「そうしたら、私がまだ風呂に入っている間でも入って待っていられるだろう?」
「え、あ、もしかして僕に渡す合鍵?」
「それ以外に何がある」
「……はい、有り難く頂戴します」
祐介は、手で口を覆っている。
「じゃあ後程」
リアムが中に入ろうとすると。
「サツキちゃん!」
「何だ」
リアムが振り返る。
「僕の家の合鍵も、一緒に作って渡すから」
「お? そうか?」
羽田の用心の為には一人では行動出来ない。従ってリアムが祐介宅の合鍵を必要とする機会は当面なさそうであったが。
「……もらって下さい」
「うむ、ではいただこう」
では、と再度挨拶をして家の中に入った。扉を閉じ、後ろ手で鍵を掛ける。背中を扉に付くと、力が抜けてずるずるとしゃがんでしまった。
胸に手を当てる。
心臓までは少し距離がある筈なのに、ここにあるぞと激しく主張してくる。
必要ないではないか、とは、あんな懇願する様な表情で言われたら言える訳がなかった。
「分からないことは分からない、横に置くのだリアム」
自分に言い聞かせている内に、少し落ち着いてきた。
そうだ、今日は酒が飲めるのだ。こんなことをしている場合ではない!
リアムは勢いよく立ち上がると、急ぎ服を取り出す。パジャマは乾きすでに畳んであるが、昨日より今日の方がやや暑い気がする。初日に着たTシャツを出してみて、いやこれは透ける筈、と戻し別の少し大きめの紺色のTシャツを取り出した。あの時は正座で説教されたが、次はもしかしたらされないのでは、とふと思ったのだ。
今朝の近過ぎる距離を思い出した。
「考えても分からないことは横に置くのだ、リアム!」
頬をぱん! と叩くと、リアム風呂場へと向かったのだった。
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