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第一章 初級編開始
第85話 魔術師リアム、初級編二日目の特訓は順調
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銀行カードの暗証番号を入手し、リアムは満面の笑みを浮かべた。
「どうだ! 魔力の殆どないこの身体でも、知識があれば道はあるのだ!」
「うんうん、偉い」
「そうであろう!」
ややふんぞり返り気味で言うと、祐介が褒めてくれた。やはり出来る魔術師は違うのだ。恐らく祐介もそれを認めたのに違いない。
リアムは解錠が必要な次の物、ガラケーに手を伸ばす。すると、祐介が上からそっと手を握った。
「何だ?」
「サツキちゃん、暗証番号を調べられるのは凄いけど、よその人のまでやっちゃ駄目だからね?」
にっこり笑顔が怖い。どうしたというのだろう。
「やっていいのは自分のだけ。ね? 間違っても僕のケータイの暗証番号とか調べちゃ駄目だよ。ね?」
どんどん近付いてくる。
「わ、分かった、分かったから落ち着け」
今朝、祐介に半ば追い詰められる様に距離を縮められたのを唐突に思い出した。祐介に限って、とは思うが、驚いたのは確かだ。
リアムがこくこくと頷くと、ようやく手を離した。ふう、と心の中で息をついた。焦った。
「あ、それと、魔法が使えることは絶対にばれちゃ駄目だよ」
「え!? 何故だ!」
「簡単に暗証番号調べたり鍵を開けたり出来るのがばれると、例えば何かがなくなったりした時にサツキちゃんが真っ先に疑われる様になるから」
「あ……」
そうか、この世界には魔法がない。だから、魔法で解錠されるのを想定して罠を準備しておいたりはしていないのだ。
「……魔術師なのだがなあ」
隠さないといけないとは。理由が分かるだけに反論は出来ないが、自分の存在意義について思わず考えてしまう。
祐介が、俯くリアムの顔を覗き上げてきた。
「僕の前では使っていいよ」
「祐介……」
祐介は、言いたくないこともちゃんと言ってくれて、且つリアムに最大限の譲歩を見せてくれているのだ。
「ありがとう」
微笑みかけると、祐介が拳を作って祐介の胸をドン! と叩いた。
「どうした」
「何でもないです」
「やはり心の臓に何かあるのではないか」
「健康です」
「そうか? ならばいいが……」
「キュン死にしそうになっただけです」
「キュン……?」
「何でもないから、さ、続きを」
キリッとした顔で祐介がガラケーの暗証番号入力画面をリアムの前に持ってきた。そう、今日もまだまだやることがあるのだ、ここで挫けている場合ではない。
「よし! キリ・リース!」
すると、先程と同様番号が浮き出てきた。
「我に何とかとかいう台詞、いらないんじゃん……」
暗証番号をひとつずつ真剣に入力していく。
「ん? 何か言ったか?」
「独り言です」
「独り言の多い奴だ。やはり人間寂しいと問題が」
「すぐそれ」
「あ、開いたぞ祐介!」
解錠成功だ。リアムはガラケーの画面を祐介に見せ、自信満々に微笑んだ。
「どうだ! 魔力の殆どないこの身体でも、知識があれば道はあるのだ!」
「うんうん、偉い」
「そうであろう!」
ややふんぞり返り気味で言うと、祐介が褒めてくれた。やはり出来る魔術師は違うのだ。恐らく祐介もそれを認めたのに違いない。
リアムは解錠が必要な次の物、ガラケーに手を伸ばす。すると、祐介が上からそっと手を握った。
「何だ?」
「サツキちゃん、暗証番号を調べられるのは凄いけど、よその人のまでやっちゃ駄目だからね?」
にっこり笑顔が怖い。どうしたというのだろう。
「やっていいのは自分のだけ。ね? 間違っても僕のケータイの暗証番号とか調べちゃ駄目だよ。ね?」
どんどん近付いてくる。
「わ、分かった、分かったから落ち着け」
今朝、祐介に半ば追い詰められる様に距離を縮められたのを唐突に思い出した。祐介に限って、とは思うが、驚いたのは確かだ。
リアムがこくこくと頷くと、ようやく手を離した。ふう、と心の中で息をついた。焦った。
「あ、それと、魔法が使えることは絶対にばれちゃ駄目だよ」
「え!? 何故だ!」
「簡単に暗証番号調べたり鍵を開けたり出来るのがばれると、例えば何かがなくなったりした時にサツキちゃんが真っ先に疑われる様になるから」
「あ……」
そうか、この世界には魔法がない。だから、魔法で解錠されるのを想定して罠を準備しておいたりはしていないのだ。
「……魔術師なのだがなあ」
隠さないといけないとは。理由が分かるだけに反論は出来ないが、自分の存在意義について思わず考えてしまう。
祐介が、俯くリアムの顔を覗き上げてきた。
「僕の前では使っていいよ」
「祐介……」
祐介は、言いたくないこともちゃんと言ってくれて、且つリアムに最大限の譲歩を見せてくれているのだ。
「ありがとう」
微笑みかけると、祐介が拳を作って祐介の胸をドン! と叩いた。
「どうした」
「何でもないです」
「やはり心の臓に何かあるのではないか」
「健康です」
「そうか? ならばいいが……」
「キュン死にしそうになっただけです」
「キュン……?」
「何でもないから、さ、続きを」
キリッとした顔で祐介がガラケーの暗証番号入力画面をリアムの前に持ってきた。そう、今日もまだまだやることがあるのだ、ここで挫けている場合ではない。
「よし! キリ・リース!」
すると、先程と同様番号が浮き出てきた。
「我に何とかとかいう台詞、いらないんじゃん……」
暗証番号をひとつずつ真剣に入力していく。
「ん? 何か言ったか?」
「独り言です」
「独り言の多い奴だ。やはり人間寂しいと問題が」
「すぐそれ」
「あ、開いたぞ祐介!」
解錠成功だ。リアムはガラケーの画面を祐介に見せ、自信満々に微笑んだ。
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