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第一章 初級編開始
第83話 魔術師リアム、初級編二日目の特訓開始
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着替えも無事終わり、顔も洗って更に祐介にもう一度化粧水の上手い付け方を伝授してもらった。
時折目に入る祐介の口元が、緩みそうになると途端固く結ばれるのを何度か見たが、教わっている立場なので意見を述べるのは止めておく。
優秀な魔術師は、学習能力も高いのだ。
洗濯機を回してから、祐介の座る絨毯の隣に座った。
「では、今日は銀行カード、携帯電話、保険証等の説明をします」
「うむ、よろしく頼む」
リアムはサツキの財布をテーブルの上に置いた。
「じゃあ勝手に出すからね」
「問題ない」
財布に入っているカードを一枚一枚取り出し、テーブルに並べていく。
「これが銀行のカード。やっぱり僕と一緒だね、会社が指定してる銀行だ。これが健康保険証、後で詳しく説明するね。後は美容室のカードに、あ、サツキちゃん昨日行ったスーパーのポイントカード持ってたんだ、なんだ出せばよかったね。あ、あと運転免許証もあるんだ。サツキちゃんの運転ってちょっと怖そう」
「それは私のことか、それとも元々のサツキのことか?」
「ふふ、両方」
「……続きを頼む」
「これで全部。少ないね」
祐介がにっこりと笑った。運転免許証が一体何の運転なのか興味があったので、一番向こうに置かれたそれに手を伸ばす。……届かない。少し身体をテーブルの上に乗り出すと、ようやく届いた。
どうもまだリアムの身体の時の感覚で距離を測ってしまっているらしい。まだまだ慣れが必要そうだった。
リアムが手に取ったそのカードには、こちらを睨む様な視線の、少し若い頃のサツキが映っていた。何がそんなに気に食わなかったのだろうか。
「さ、サツキちゃん、その、胸がテーブルに乗ってるから」
「お? おお」
肩の負担が少し減ったな、と思っていたら、テーブルに胸が乗っていた様だ。
「おお、これは新たな発見だ! 楽だぞ!」
「いや、発見してないでさ、ほら、ね?」
もごもごと祐介が言う。リアムは笑って祐介の肩を叩いた。
「ふふふ、祐介は大きいのが好きか!」
「それ聞く?」
「だがあまり大きいのも大変だぞ、とにかく肩が凝るし足許は見えづらいしだな」
「え、そんなに視界遮っちゃうの? まじ?」
「階段は少々降りるのが怖い」
「僕がしっかりと手を繋がせていただきます」
「祐介はやはり親切だな」
「……まあ今はそれでいいや」
「どうした?」
「何でもありません。さ、続き続き」
祐介が改めて銀行の説明と、会社から振り込まれる給料、給料から天引きされる内容の説明を詳しく行なった後。
「サツキちゃん、出来そう?」
「五回までは出来るからな、まずはこの銀行カードにしよう」
リアムはカードに向けて指を向けると、呪文を唱えた。
「我に番号を示せ! キリ・リース!」
すると。
カードの上に、ポワンと数字が四つ浮き出て輝いたのだった。
時折目に入る祐介の口元が、緩みそうになると途端固く結ばれるのを何度か見たが、教わっている立場なので意見を述べるのは止めておく。
優秀な魔術師は、学習能力も高いのだ。
洗濯機を回してから、祐介の座る絨毯の隣に座った。
「では、今日は銀行カード、携帯電話、保険証等の説明をします」
「うむ、よろしく頼む」
リアムはサツキの財布をテーブルの上に置いた。
「じゃあ勝手に出すからね」
「問題ない」
財布に入っているカードを一枚一枚取り出し、テーブルに並べていく。
「これが銀行のカード。やっぱり僕と一緒だね、会社が指定してる銀行だ。これが健康保険証、後で詳しく説明するね。後は美容室のカードに、あ、サツキちゃん昨日行ったスーパーのポイントカード持ってたんだ、なんだ出せばよかったね。あ、あと運転免許証もあるんだ。サツキちゃんの運転ってちょっと怖そう」
「それは私のことか、それとも元々のサツキのことか?」
「ふふ、両方」
「……続きを頼む」
「これで全部。少ないね」
祐介がにっこりと笑った。運転免許証が一体何の運転なのか興味があったので、一番向こうに置かれたそれに手を伸ばす。……届かない。少し身体をテーブルの上に乗り出すと、ようやく届いた。
どうもまだリアムの身体の時の感覚で距離を測ってしまっているらしい。まだまだ慣れが必要そうだった。
リアムが手に取ったそのカードには、こちらを睨む様な視線の、少し若い頃のサツキが映っていた。何がそんなに気に食わなかったのだろうか。
「さ、サツキちゃん、その、胸がテーブルに乗ってるから」
「お? おお」
肩の負担が少し減ったな、と思っていたら、テーブルに胸が乗っていた様だ。
「おお、これは新たな発見だ! 楽だぞ!」
「いや、発見してないでさ、ほら、ね?」
もごもごと祐介が言う。リアムは笑って祐介の肩を叩いた。
「ふふふ、祐介は大きいのが好きか!」
「それ聞く?」
「だがあまり大きいのも大変だぞ、とにかく肩が凝るし足許は見えづらいしだな」
「え、そんなに視界遮っちゃうの? まじ?」
「階段は少々降りるのが怖い」
「僕がしっかりと手を繋がせていただきます」
「祐介はやはり親切だな」
「……まあ今はそれでいいや」
「どうした?」
「何でもありません。さ、続き続き」
祐介が改めて銀行の説明と、会社から振り込まれる給料、給料から天引きされる内容の説明を詳しく行なった後。
「サツキちゃん、出来そう?」
「五回までは出来るからな、まずはこの銀行カードにしよう」
リアムはカードに向けて指を向けると、呪文を唱えた。
「我に番号を示せ! キリ・リース!」
すると。
カードの上に、ポワンと数字が四つ浮き出て輝いたのだった。
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