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第一章 初級編開始
第81話 魔術師リアム、初級編二日目の朝はゆったりと
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もう外は明るいから、という理由で、リアムは祐介のトレーナーをすっぽりと被らされた。たかが数歩の距離に大袈裟な、と思ったが、「ノーブラのパジャマ姿なんて絶対他の人に見せちゃ駄目です」と笑顔で言われたので、それ以上抵抗するのを止めた。
ずり落ちてくる袖の所為で、ちっとも鍵を取り出せないでいると、祐介が袖を捲くってくれた。祐介は人の面倒を見るのが好きなのかもしれないな、ふとそんなことを思った。そうでなければ、ここまであれこれ気は利くまい。
家の中に入ると、祐介がベッドにうつ伏せで横たわった。
「見てないから、どうぞ」
今日はうまくブラジャーを着用することが出来るだろうか。脱ぐ時は下から脱いでしまうのだが、なかなか見えない背中での作業は厳しいものがある。
リアムはまずは上を脱ぐと、早速ブラジャーに挑戦した。今回は、先に出来るだけぴったりとはめておく。これで少しでも後ろに余裕が生まれないかとの発想からである。
「ん……もうっどうなっておるのだこれは!」
やっぱり出来ない。苛々して仕方がない。ベッドで突っ伏している祐介をちらりと見るが、微動だにしない。息はちゃんとしているのだろうか。
背に腹は代えられない。リアムは祐介に声を掛けた。
「祐介」
「……はい、何でしょう」
くぐもった声が返ってきた。
「済まぬが、ブラジャーのホックをまた付けて欲しいのだが……」
「……はい」
「今そっちに行くから」
リアムがベッドに腰掛け背中を向ける。
「いいぞ」
祐介が起き上がる気配がした。後ろに回していたリアムの手からホックの部分を受け取ると、ひとつずつ昨日と同じ様にはめていく。
「これ、もしかして毎日やるの?」
「う……いずれ出来る様になるとは思うのだが、如何せん難しく」
「だって僕がいなかったらブラジャーしないで外に出るの? 駄目じゃん」
今日の祐介は何だか手厳しい。
「いや、そうなのだが、どうしたらいいか」
「脱ぐ時はどうしてるの?」
「下に向かって脱いでいる」
「じゃあさ、逆にやってみたら出来るんじゃない? お腹で先にホック付けて引き上げるとか」
「おお! 祐介! お前は頭がいいな!」
リアムが嬉しくなり振り向くと、祐介の視線が胸に釘付けになった。あ、しまった。再びくるりと背中を向ける。
「……済まぬ」
さすがにこれはないだろうことは分かった。
「もうさ、絶対他でそういうことしないでね……」
「うむ、肝に銘じる」
ぼふ、と祐介がベッドに再び横たわった音がした。さっさと着替えを終わらせてしまおう、リアムはそう思うと、急ぎ服を探し始めた。
「……やり方教えない方がよかったかも……」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、何でもありません」
相変わらず独り言が多いが、今はこれ以上気にするのはやめよう。リアムは小さく頷くと、顔を洗いに洗面所へと向かうのだった。
ずり落ちてくる袖の所為で、ちっとも鍵を取り出せないでいると、祐介が袖を捲くってくれた。祐介は人の面倒を見るのが好きなのかもしれないな、ふとそんなことを思った。そうでなければ、ここまであれこれ気は利くまい。
家の中に入ると、祐介がベッドにうつ伏せで横たわった。
「見てないから、どうぞ」
今日はうまくブラジャーを着用することが出来るだろうか。脱ぐ時は下から脱いでしまうのだが、なかなか見えない背中での作業は厳しいものがある。
リアムはまずは上を脱ぐと、早速ブラジャーに挑戦した。今回は、先に出来るだけぴったりとはめておく。これで少しでも後ろに余裕が生まれないかとの発想からである。
「ん……もうっどうなっておるのだこれは!」
やっぱり出来ない。苛々して仕方がない。ベッドで突っ伏している祐介をちらりと見るが、微動だにしない。息はちゃんとしているのだろうか。
背に腹は代えられない。リアムは祐介に声を掛けた。
「祐介」
「……はい、何でしょう」
くぐもった声が返ってきた。
「済まぬが、ブラジャーのホックをまた付けて欲しいのだが……」
「……はい」
「今そっちに行くから」
リアムがベッドに腰掛け背中を向ける。
「いいぞ」
祐介が起き上がる気配がした。後ろに回していたリアムの手からホックの部分を受け取ると、ひとつずつ昨日と同じ様にはめていく。
「これ、もしかして毎日やるの?」
「う……いずれ出来る様になるとは思うのだが、如何せん難しく」
「だって僕がいなかったらブラジャーしないで外に出るの? 駄目じゃん」
今日の祐介は何だか手厳しい。
「いや、そうなのだが、どうしたらいいか」
「脱ぐ時はどうしてるの?」
「下に向かって脱いでいる」
「じゃあさ、逆にやってみたら出来るんじゃない? お腹で先にホック付けて引き上げるとか」
「おお! 祐介! お前は頭がいいな!」
リアムが嬉しくなり振り向くと、祐介の視線が胸に釘付けになった。あ、しまった。再びくるりと背中を向ける。
「……済まぬ」
さすがにこれはないだろうことは分かった。
「もうさ、絶対他でそういうことしないでね……」
「うむ、肝に銘じる」
ぼふ、と祐介がベッドに再び横たわった音がした。さっさと着替えを終わらせてしまおう、リアムはそう思うと、急ぎ服を探し始めた。
「……やり方教えない方がよかったかも……」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、何でもありません」
相変わらず独り言が多いが、今はこれ以上気にするのはやめよう。リアムは小さく頷くと、顔を洗いに洗面所へと向かうのだった。
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