76 / 731
第一章 初級編開始
第75話 魔術師リアム、大分困る
しおりを挟む
ピピピ、と機械的な音が鳴り響き、リアムは目を覚ました。
これはあれだ、昨日祐介が説明してくれた目覚まし時計という代物の音だろう。ということは、もう朝が来たのだ。
目を開けなくても分かった。祐介は余程疲れていたのだろう、ほぼ身動きもすることなく、ずっとリアムに抱きついたまま寝たのだ。胸の上が未だずっしりと重い上に、何だか生温かい。汗だろうか? いやこれは……。
「祐介、お前、この私に涎を垂らしてはいないか?」
「……くー」
まだ寝ている。目覚まし時計は鳴り響いているままだというのに、まだむにゃむにゃ言っている。
「祐介!」
リアムは耳元で大きな声で祐介を呼んだ。
「わっ!」
がばっと祐介が顔を上げ、すぐ近くにあるリアムの顔を見て、驚いた顔になった。
「え? え? どういうこと?」
「とりあえず目覚まし時計を止めてくれ」
「あ、はい!」
祐介が目覚まし時計をポン、と叩いて止めた。やれやれである。リアムは自分が着ているパジャマの胸の部分がやはりぐっしょり濡れているのを確認した。色が変わっている。
「やはり涎……」
「え? 朝? あれ? 映画は?」
祐介の口元には涎の跡と、リアムのパジャマのボタンの跡がくっきりとついていた。涎を垂らされていい気分ではなかったが、その子供の様な姿につい笑ってしまう。
「祐介、ボタンの跡がついているぞ」
「え? どこ?」
「ほら、ここに」
リアムは祐介の頬に指を触れた。
「全く。昨日は私の胸の上で寝てしまうわ、抱きついて離さないわで大変だったのだぞ」
「僕が? 抱きついたの? え? じゃあサツキちゃんここで寝たの?」
「どう見てもそうにしか見えないだろう?」
「うわあ……ごめん、重かったでしょ」
リアムが祐介を軽く睨みつつ笑う。
「本当だ。人間の頭がここまで重いとは知らなかったぞ。これでは今日は肩こり決定だ」
「肩、しっかりとほぐさせていただきます」
「お、それはいい提案だな。と、言いたいところだが」
リアムは祐介の頬の跡をそっと撫でる。
「こんなに跡がついてしまうほど深く寝ていたのだ。昨日は余程疲れたのだろう? 寝返りもほぼ打たず、死んだ様に寝ていたぞ」
祐介が、リアムの手を上からそっと押さえた。
「大分無理をさせてしまっていたのだな、済まなかった」
祐介は何も言わない。ただ惚けた様にリアムを見つめていた。
「祐介? まだ寝惚けているのか?」
リアムが笑顔を見せても、祐介は笑わない。代わりに、顔が近付いてくる。
「わっゆっ祐介っ」
何だか拙い気がして下がろうとし、後ろがなかったことに気付いた。
「うわっ」
「あぶなっ」
祐介がリアムの背中を支える。益々近くなってしまった。これは拙い、何か拙いぞ!
リアムが蛇に睨まれた蛙の様に固まっていると。
ドンドンドンドン!! と激しく扉を叩く音が響いた。
これはあれだ、昨日祐介が説明してくれた目覚まし時計という代物の音だろう。ということは、もう朝が来たのだ。
目を開けなくても分かった。祐介は余程疲れていたのだろう、ほぼ身動きもすることなく、ずっとリアムに抱きついたまま寝たのだ。胸の上が未だずっしりと重い上に、何だか生温かい。汗だろうか? いやこれは……。
「祐介、お前、この私に涎を垂らしてはいないか?」
「……くー」
まだ寝ている。目覚まし時計は鳴り響いているままだというのに、まだむにゃむにゃ言っている。
「祐介!」
リアムは耳元で大きな声で祐介を呼んだ。
「わっ!」
がばっと祐介が顔を上げ、すぐ近くにあるリアムの顔を見て、驚いた顔になった。
「え? え? どういうこと?」
「とりあえず目覚まし時計を止めてくれ」
「あ、はい!」
祐介が目覚まし時計をポン、と叩いて止めた。やれやれである。リアムは自分が着ているパジャマの胸の部分がやはりぐっしょり濡れているのを確認した。色が変わっている。
「やはり涎……」
「え? 朝? あれ? 映画は?」
祐介の口元には涎の跡と、リアムのパジャマのボタンの跡がくっきりとついていた。涎を垂らされていい気分ではなかったが、その子供の様な姿につい笑ってしまう。
「祐介、ボタンの跡がついているぞ」
「え? どこ?」
「ほら、ここに」
リアムは祐介の頬に指を触れた。
「全く。昨日は私の胸の上で寝てしまうわ、抱きついて離さないわで大変だったのだぞ」
「僕が? 抱きついたの? え? じゃあサツキちゃんここで寝たの?」
「どう見てもそうにしか見えないだろう?」
「うわあ……ごめん、重かったでしょ」
リアムが祐介を軽く睨みつつ笑う。
「本当だ。人間の頭がここまで重いとは知らなかったぞ。これでは今日は肩こり決定だ」
「肩、しっかりとほぐさせていただきます」
「お、それはいい提案だな。と、言いたいところだが」
リアムは祐介の頬の跡をそっと撫でる。
「こんなに跡がついてしまうほど深く寝ていたのだ。昨日は余程疲れたのだろう? 寝返りもほぼ打たず、死んだ様に寝ていたぞ」
祐介が、リアムの手を上からそっと押さえた。
「大分無理をさせてしまっていたのだな、済まなかった」
祐介は何も言わない。ただ惚けた様にリアムを見つめていた。
「祐介? まだ寝惚けているのか?」
リアムが笑顔を見せても、祐介は笑わない。代わりに、顔が近付いてくる。
「わっゆっ祐介っ」
何だか拙い気がして下がろうとし、後ろがなかったことに気付いた。
「うわっ」
「あぶなっ」
祐介がリアムの背中を支える。益々近くなってしまった。これは拙い、何か拙いぞ!
リアムが蛇に睨まれた蛙の様に固まっていると。
ドンドンドンドン!! と激しく扉を叩く音が響いた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる