70 / 731
第一章 初級編開始
第69話 魔術師リアムの初級編初日の夕餉終了
しおりを挟む
祐介が作った豆腐とワカメの味噌汁、生姜焼きと敷き詰められたキャベツの千切り、そしてほかほかの白米。惣菜のポテトサラダなる物も盛り付けられ、リアムは只々感動していた。
「祐介、お前は凄い!」
「はは、お褒めいただきありがとう」
「では有り難く頂戴する」
「はい、じゃあいただきます」
祐介が購入した赤い箸は、ラーメン屋で使用した箸よりも遥かに掴みやすかった。労れり尽くせりで申し訳なさでいっぱいだ。
祐介が熱く語っていた味噌汁の具については、祐介のあの熱量まで達することは出来なかったが、それでもとても旨かった。全て、あっという間に食してしまう。
「美味しかった?」
「最高だ」
「ふふ、よかった」
祐介はにこにこと機嫌がいい。自然リアムも笑顔になった。
「そうだ、洗い物は私がやろう!」
「いや、今日は僕がやるよ。サツキちゃんは今日はお客さんだから」
「いや、でも何から何まで申し訳なく……」
祐介が立ち上がると、皿をさっと持って行ってしまう。
「申し訳なくならなくていいよ。だって僕達付き合ってるんでしょ」
「……へ?」
リアムが驚いた表情を見せると、それまで優しげな表情をしていた祐介が、ぷっと吹いた。どうやら揶揄われたらしい。
「祐介っ」
「ははっ」
リアムが怒ると、祐介は実に楽しそうに笑った。
「そうだ、サツキちゃんさっきの筋トレで汗かいたでしょ。先にお風呂入ったら? 僕もこれ終わったら入るから、そうしたらDVD観よう」
「成程、それはいい考えだ」
リアムが立ち上がり玄関を出ようとすると、祐介がパッと手首を掴んで引き止めた。
「ほら、駄目でしょ」
「――ああ、そうか」
羽田の用心の為ひとりで行動しないと言われていたのに、すぐに忘れてしまう。
祐介は手をタオルでささっと拭くと、先に自分が出て周囲を確認した後、リアムを呼んだ。
「おいで、大丈夫そう」
「済まないな」
「気にしないでってば」
リアムがサツキの家の鍵を開けると、祐介がにっこりとその様子を見ている。
「僕が迎えに行くまで、絶っっっ対に開けないでね」
笑顔だが、何だか怖かった。こいつ、何故か怒っていないか? 何か怒らせるようなことをしただろうか。
「返事は?」
「は、はい!」
「よろしい。お風呂に浸かる? シャワーだけ?」
「早くそのDVDというものを見てみたいので、シャワーだけにするつもりだぞ」
「分かった、じゃあ僕もなるべく急ぐ」
「あ、ドライヤー」
今朝髪の毛を大量に吸い込んで苦労したあれはどうすべきだろうか。
「僕がやる」
「……済まぬな」
「大丈夫。むしろ今となっては嬉し……コホン」
「では急ぐから」
「うん。家に入ったら即座に鍵閉めてね」
最大級のにっこりで、祐介が言った。
笑顔が怖い。
リアムはコクコクと幾度も頷くと、家の中に入り即座に鍵を閉めたのだった。
「祐介、お前は凄い!」
「はは、お褒めいただきありがとう」
「では有り難く頂戴する」
「はい、じゃあいただきます」
祐介が購入した赤い箸は、ラーメン屋で使用した箸よりも遥かに掴みやすかった。労れり尽くせりで申し訳なさでいっぱいだ。
祐介が熱く語っていた味噌汁の具については、祐介のあの熱量まで達することは出来なかったが、それでもとても旨かった。全て、あっという間に食してしまう。
「美味しかった?」
「最高だ」
「ふふ、よかった」
祐介はにこにこと機嫌がいい。自然リアムも笑顔になった。
「そうだ、洗い物は私がやろう!」
「いや、今日は僕がやるよ。サツキちゃんは今日はお客さんだから」
「いや、でも何から何まで申し訳なく……」
祐介が立ち上がると、皿をさっと持って行ってしまう。
「申し訳なくならなくていいよ。だって僕達付き合ってるんでしょ」
「……へ?」
リアムが驚いた表情を見せると、それまで優しげな表情をしていた祐介が、ぷっと吹いた。どうやら揶揄われたらしい。
「祐介っ」
「ははっ」
リアムが怒ると、祐介は実に楽しそうに笑った。
「そうだ、サツキちゃんさっきの筋トレで汗かいたでしょ。先にお風呂入ったら? 僕もこれ終わったら入るから、そうしたらDVD観よう」
「成程、それはいい考えだ」
リアムが立ち上がり玄関を出ようとすると、祐介がパッと手首を掴んで引き止めた。
「ほら、駄目でしょ」
「――ああ、そうか」
羽田の用心の為ひとりで行動しないと言われていたのに、すぐに忘れてしまう。
祐介は手をタオルでささっと拭くと、先に自分が出て周囲を確認した後、リアムを呼んだ。
「おいで、大丈夫そう」
「済まないな」
「気にしないでってば」
リアムがサツキの家の鍵を開けると、祐介がにっこりとその様子を見ている。
「僕が迎えに行くまで、絶っっっ対に開けないでね」
笑顔だが、何だか怖かった。こいつ、何故か怒っていないか? 何か怒らせるようなことをしただろうか。
「返事は?」
「は、はい!」
「よろしい。お風呂に浸かる? シャワーだけ?」
「早くそのDVDというものを見てみたいので、シャワーだけにするつもりだぞ」
「分かった、じゃあ僕もなるべく急ぐ」
「あ、ドライヤー」
今朝髪の毛を大量に吸い込んで苦労したあれはどうすべきだろうか。
「僕がやる」
「……済まぬな」
「大丈夫。むしろ今となっては嬉し……コホン」
「では急ぐから」
「うん。家に入ったら即座に鍵閉めてね」
最大級のにっこりで、祐介が言った。
笑顔が怖い。
リアムはコクコクと幾度も頷くと、家の中に入り即座に鍵を閉めたのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる