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第一章 初級編開始
第67話 魔術師リアムの初級編初日の夕餉の支度
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スーパーの帰り道にDVDなる物を借りた。その店も全く意味が分からず、リアムはただ辺りを見渡しただけだ。
今度は祐介の家に帰った。
「どうぞ、いらっしゃいませ」
玄関の扉を恭しく開け、祐介が促す。リアムが中を覗くと、作りは全く同じ部屋があった。だが雰囲気が違う。床に物はなく、サツキの家よりもあっさりとした印象だ。
サツキの部屋はベッドだが、この部屋はソファーベッドなる物だそうで、ソファーの座席部分を引っ張りだすとベッドになるのを見せてくれた。
「おお、これはすごい!」
「足を伸ばしながらテレビ見れるよ。DVDもうちで観ようよ」
食材をビニール袋から出しながら祐介がにこやかに提案する。リアムは素直に頷いた。ずっと床に座って説明を受けていたので、腰回りが疲れていた。
「じゃあ僕が調理するから、サツキちゃんは見てて」
「うむ。勉強させてもらうぞ」
「はは、僕、料理得意じゃないけど」
狭い廊下に設置された調理場は、背の高い祐介には窮屈そうだ。それでもやり慣れているのか手際がいい。コンロはふた口、リアムの世界の釜戸よりも扱いは簡単な様だ。都市ガスというものに引火させるとの説明を受けた。
悪臭を放つことで有名なスメルゴブリンが火に近付くと勝手に燃え自滅するが、きっとあれからもガスが出ていたのだろう。新たな発見だった。
よく見ようと少し乗り出すと、まな板を取り出した祐介の肘が胸に当たる。
「イタッ」
「あ! 触っ……柔らかっっあ、ごめ」
「落ち着け、大したことはない」
祐介が、何とも言い表せない表情ですぐ横にいるリアムを見下ろした。
「ちょっと近いかな……いやいいんだけど」
「確かに二人並ぶには狭いな」
「あ、あのさ、やっぱり今日は僕がぱーっと用意するから、サツキちゃん筋トレでもしてたら?」
「筋トレとは?」
「筋肉を鍛えること」
「ありだな。やろう。場所を借りるぞ」
「どうぞどうぞ」
リアムが部屋の中に入ると、背後からふう、という祐介の息を吐く音が聞こえた。祐介も相当疲れた様だ。何から何まで申し訳ない。
リアムは床に手をつくと、腕立て伏せを始める。
そして一回目で、腕がガックガク震えたと思うとぺしょ、と床に激突した。
「ぐ……っ! 痛い……!」
「どうしたの、大丈夫?」
胸を押さえて屈んでいるリアムに、祐介が声を掛けた。
涙目になったリアムが祐介を振り返る。
「胸などただの脂肪の塊かと思っていたが、当たったらとてつもなく痛かったのだ……!」
「あ、あはは」
「この様な大きさでも、神経はしっかり通っているのだな。油断した」
「……ベッドにしてあげようか? あ、深い意味はないです」
「当たっても痛くない様にだろう? 分かっている」
祐介がベッドを広げたところで、リアムは筋トレを再開した。しかし驚くほど筋力のない身体だ。
しかし、千里の道も一歩からだ。
「あっっイタイッ」
「……声がさ」
「何だ?」
「何でもありません、悪くありません」
「よし、続けるぞ!」
幾度となく胸を押さえ痛みを堪えながら腕立て伏せを続けるリアムだった。
今度は祐介の家に帰った。
「どうぞ、いらっしゃいませ」
玄関の扉を恭しく開け、祐介が促す。リアムが中を覗くと、作りは全く同じ部屋があった。だが雰囲気が違う。床に物はなく、サツキの家よりもあっさりとした印象だ。
サツキの部屋はベッドだが、この部屋はソファーベッドなる物だそうで、ソファーの座席部分を引っ張りだすとベッドになるのを見せてくれた。
「おお、これはすごい!」
「足を伸ばしながらテレビ見れるよ。DVDもうちで観ようよ」
食材をビニール袋から出しながら祐介がにこやかに提案する。リアムは素直に頷いた。ずっと床に座って説明を受けていたので、腰回りが疲れていた。
「じゃあ僕が調理するから、サツキちゃんは見てて」
「うむ。勉強させてもらうぞ」
「はは、僕、料理得意じゃないけど」
狭い廊下に設置された調理場は、背の高い祐介には窮屈そうだ。それでもやり慣れているのか手際がいい。コンロはふた口、リアムの世界の釜戸よりも扱いは簡単な様だ。都市ガスというものに引火させるとの説明を受けた。
悪臭を放つことで有名なスメルゴブリンが火に近付くと勝手に燃え自滅するが、きっとあれからもガスが出ていたのだろう。新たな発見だった。
よく見ようと少し乗り出すと、まな板を取り出した祐介の肘が胸に当たる。
「イタッ」
「あ! 触っ……柔らかっっあ、ごめ」
「落ち着け、大したことはない」
祐介が、何とも言い表せない表情ですぐ横にいるリアムを見下ろした。
「ちょっと近いかな……いやいいんだけど」
「確かに二人並ぶには狭いな」
「あ、あのさ、やっぱり今日は僕がぱーっと用意するから、サツキちゃん筋トレでもしてたら?」
「筋トレとは?」
「筋肉を鍛えること」
「ありだな。やろう。場所を借りるぞ」
「どうぞどうぞ」
リアムが部屋の中に入ると、背後からふう、という祐介の息を吐く音が聞こえた。祐介も相当疲れた様だ。何から何まで申し訳ない。
リアムは床に手をつくと、腕立て伏せを始める。
そして一回目で、腕がガックガク震えたと思うとぺしょ、と床に激突した。
「ぐ……っ! 痛い……!」
「どうしたの、大丈夫?」
胸を押さえて屈んでいるリアムに、祐介が声を掛けた。
涙目になったリアムが祐介を振り返る。
「胸などただの脂肪の塊かと思っていたが、当たったらとてつもなく痛かったのだ……!」
「あ、あはは」
「この様な大きさでも、神経はしっかり通っているのだな。油断した」
「……ベッドにしてあげようか? あ、深い意味はないです」
「当たっても痛くない様にだろう? 分かっている」
祐介がベッドを広げたところで、リアムは筋トレを再開した。しかし驚くほど筋力のない身体だ。
しかし、千里の道も一歩からだ。
「あっっイタイッ」
「……声がさ」
「何だ?」
「何でもありません、悪くありません」
「よし、続けるぞ!」
幾度となく胸を押さえ痛みを堪えながら腕立て伏せを続けるリアムだった。
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