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第一章 初級編開始
第65話 魔術師リアムの初級編初日の夕餉
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スーパーに行き、まず驚いたのはその品数の多さだった。野菜だけ取ってみても、数えきれないほどの種類が並んでいる。ほぼ地産地消のリアムの世界では、お目にかかれない光景だった。
「流通に関しては、完全にそちらの勝ちだ……素直に負けを認めよう」
「え? 何か競ってたの?」
祐介が、スーパーの中でも手を繋いだまま、ニコニコと聞き返してきた。
「くっ……相手にすらされてないとは!」
「サツキちゃん、それより味噌汁の具……ええと、スープには何がいいと思う? やっぱりここは定番の豆腐とワカメかな」
祐介に「それより」と言われるとは。リアムは少なからず衝撃を受けていたが、聞き慣れない単語がふたつあったのでそちらの確認を優先することにした。
優秀な魔術師は、気分に左右されず常に冷静に情報を収集するのだ。
「祐介、豆腐とワカメとはなんだ」
「豆腐とは、大豆という豆から作られた日本人のソウルフードのひとつと言っても過言じゃない食材で、ふわふわなのにコシがあり、これに醤油をかけて食すのが定番」
これまでの祐介とは違い、リアムが引くくらい雄弁だった。ソウルフードなるものの意味が分からなかったが、聞くと藪蛇になりそうだったので相槌で誤魔化すことにする。
「そ、そうか。して、ワカメとは?」
「よくぞ聞いてくれました! ワカメとは海藻の一種で、料理の主役にはなかなかなれないものの、なければ何か物足りないという存在感を持つ名脇役! これも醤油につけて食べても旨い」
目が真剣だった。どうしよう、と初めてリアムは祐介の行動に心底戸惑った。
目が泳ぎまくっているのが分かったのだろう、祐介がふ、と肩に入っていた力を抜くと、繋いだ手を引っ張り先へと進み始めた。
「実家から送られてきた出汁袋と昆布があるから、ちゃんとしたのを作ってあげるよ」
「あ、ああ、頼む」
出汁袋も昆布も何だか分からなかったが、聞くのは今度にしようと思った。さすがに今日一日で知識を詰め込み過ぎた上に、今も目の前に溢れ返らんばかりの新たな物が自分を知れ、とばかりに広がっている。
知らないことを知るのは楽しい。商品を眺めているだけで、次第にリアムの顔に笑顔が溢れる。
「祐介、楽しいぞ!」
祐介を見上げると、祐介はふっと目を逸らして胸を押さえる。
「どうした?」
「……尊い……」
「何がだ?」
「何でもありません」
「相変わらず訳の分からん奴だな。さ、まだ次がある。必要な物を買おうではないか」
祐介の手を引っ張って振り返ると、祐介はまたあの読めない表情でこちらを見つめていた。
「……美味しいの作るから」
「ああ、是非頼むぞ」
美味い飯は人生の喜びだ。リアムはまだ食したことのない食材に思いを馳せるのだった。
「流通に関しては、完全にそちらの勝ちだ……素直に負けを認めよう」
「え? 何か競ってたの?」
祐介が、スーパーの中でも手を繋いだまま、ニコニコと聞き返してきた。
「くっ……相手にすらされてないとは!」
「サツキちゃん、それより味噌汁の具……ええと、スープには何がいいと思う? やっぱりここは定番の豆腐とワカメかな」
祐介に「それより」と言われるとは。リアムは少なからず衝撃を受けていたが、聞き慣れない単語がふたつあったのでそちらの確認を優先することにした。
優秀な魔術師は、気分に左右されず常に冷静に情報を収集するのだ。
「祐介、豆腐とワカメとはなんだ」
「豆腐とは、大豆という豆から作られた日本人のソウルフードのひとつと言っても過言じゃない食材で、ふわふわなのにコシがあり、これに醤油をかけて食すのが定番」
これまでの祐介とは違い、リアムが引くくらい雄弁だった。ソウルフードなるものの意味が分からなかったが、聞くと藪蛇になりそうだったので相槌で誤魔化すことにする。
「そ、そうか。して、ワカメとは?」
「よくぞ聞いてくれました! ワカメとは海藻の一種で、料理の主役にはなかなかなれないものの、なければ何か物足りないという存在感を持つ名脇役! これも醤油につけて食べても旨い」
目が真剣だった。どうしよう、と初めてリアムは祐介の行動に心底戸惑った。
目が泳ぎまくっているのが分かったのだろう、祐介がふ、と肩に入っていた力を抜くと、繋いだ手を引っ張り先へと進み始めた。
「実家から送られてきた出汁袋と昆布があるから、ちゃんとしたのを作ってあげるよ」
「あ、ああ、頼む」
出汁袋も昆布も何だか分からなかったが、聞くのは今度にしようと思った。さすがに今日一日で知識を詰め込み過ぎた上に、今も目の前に溢れ返らんばかりの新たな物が自分を知れ、とばかりに広がっている。
知らないことを知るのは楽しい。商品を眺めているだけで、次第にリアムの顔に笑顔が溢れる。
「祐介、楽しいぞ!」
祐介を見上げると、祐介はふっと目を逸らして胸を押さえる。
「どうした?」
「……尊い……」
「何がだ?」
「何でもありません」
「相変わらず訳の分からん奴だな。さ、まだ次がある。必要な物を買おうではないか」
祐介の手を引っ張って振り返ると、祐介はまたあの読めない表情でこちらを見つめていた。
「……美味しいの作るから」
「ああ、是非頼むぞ」
美味い飯は人生の喜びだ。リアムはまだ食したことのない食材に思いを馳せるのだった。
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