57 / 731
第一章 初級編開始
第56話 OLサツキ、初級編スタート
しおりを挟む
初級ダンジョンに用意された任務をふたつ選んだ一行は、カウンターで申請を済ませると各々家へと荷物をまとめに行った。一時間後に昨日フルールで飛んできた街の外に集合だ。
ついでにドラゴン討伐の賞金を貢献度順に山分けする。金貨は各々の銀行口座に振り込まれるとのことだ。この辺は、サツキの世界と同じ様で助かった。
引き出し方も後でウルスラが説明してくれることになった。何から何まで感謝だ。
アールとユラは顔を見られたくないと、ギルドで購入した頭巾で頭部を隠しギルドの外に出たが、明らかに怪しい。
サツキとウルスラも目立ちたくはなかったので同じ様に頭巾を購入し被ってみたが、明らかに道行く人々の目線に含みがあった。
ひとりの子供が指差した。
「あ、勇者一行だ!」
ばればれである。
「へっぽこ剣士とへっぽこ僧侶だって聞いたよ! ねえお母さん、へっぽこってどういう意味?」
「しっ! ……役立たずってことよ、坊や」
アールとユラが胸の辺りをぐ、と押さえつけて耐え忍んでいる。サツキは二人のへっぽこっぷりは見たことがないので、正直慰めようにも慰め方が分からない。そんなことないよといってそんなことあったらただの上っ面の慰めだし、そうだね次頑張ろうと言ったとして、ユラに死者蘇生で生き返らせてもらったのは事実だし。
横では、ウルスラが肩を震わせている。明らかに笑いを堪えていた。
「じゃあ私達は一旦ここで。また後でね、アール、ユラ」
「ちょ! 名前を言わないでくれよ!」
「ばればれだっての」
「ああ、優しさが欲しい……!」
「いきましょ、サツキ」
「うん!」
リアムの財布にはまだ金貨が沢山入っていたのでそれを持ち、着替えを鞄に詰めた後は道具屋巡りだ。
サツキは昨日参考にした魔術書を持って行くことにした。表紙には『初めてのダンジョン攻略・魔術編~これであなたも冒険者に!~』とある。ダンジョンで何故イルミナが必要とされるのかは謎だったが、これを順番に覚えていけば初級ダンジョンは攻略出来そうだった。
ウルスラはあちこちの店を覗き、片っ端から購入してあの溢れない鞄にぽいぽい放り投げていく。
「調味料セットでしょ、調理セットでしょ。フルールの羽根に、ユラだけだと不安だから一応薬草でしょ、あ、白ワイン!」
例の黄色いスライムと割って飲むやつだ。
そういえば、リアムは酒を飲めるのだろうか? サツキは実は酒が弱く、飲めるのだが悪酔いをする。所謂絡み酒というやつだ。日頃抑え込んでいる不平不満が酒の力を借りて表に出てくるらしく、過去にそこそこやらかしてからは外では飲まない様にしていた。
折角なら酒が強いといいな、そう思いつつ、サツキはにこにことウルスラの買い物に付き合うのだった。
ついでにドラゴン討伐の賞金を貢献度順に山分けする。金貨は各々の銀行口座に振り込まれるとのことだ。この辺は、サツキの世界と同じ様で助かった。
引き出し方も後でウルスラが説明してくれることになった。何から何まで感謝だ。
アールとユラは顔を見られたくないと、ギルドで購入した頭巾で頭部を隠しギルドの外に出たが、明らかに怪しい。
サツキとウルスラも目立ちたくはなかったので同じ様に頭巾を購入し被ってみたが、明らかに道行く人々の目線に含みがあった。
ひとりの子供が指差した。
「あ、勇者一行だ!」
ばればれである。
「へっぽこ剣士とへっぽこ僧侶だって聞いたよ! ねえお母さん、へっぽこってどういう意味?」
「しっ! ……役立たずってことよ、坊や」
アールとユラが胸の辺りをぐ、と押さえつけて耐え忍んでいる。サツキは二人のへっぽこっぷりは見たことがないので、正直慰めようにも慰め方が分からない。そんなことないよといってそんなことあったらただの上っ面の慰めだし、そうだね次頑張ろうと言ったとして、ユラに死者蘇生で生き返らせてもらったのは事実だし。
横では、ウルスラが肩を震わせている。明らかに笑いを堪えていた。
「じゃあ私達は一旦ここで。また後でね、アール、ユラ」
「ちょ! 名前を言わないでくれよ!」
「ばればれだっての」
「ああ、優しさが欲しい……!」
「いきましょ、サツキ」
「うん!」
リアムの財布にはまだ金貨が沢山入っていたのでそれを持ち、着替えを鞄に詰めた後は道具屋巡りだ。
サツキは昨日参考にした魔術書を持って行くことにした。表紙には『初めてのダンジョン攻略・魔術編~これであなたも冒険者に!~』とある。ダンジョンで何故イルミナが必要とされるのかは謎だったが、これを順番に覚えていけば初級ダンジョンは攻略出来そうだった。
ウルスラはあちこちの店を覗き、片っ端から購入してあの溢れない鞄にぽいぽい放り投げていく。
「調味料セットでしょ、調理セットでしょ。フルールの羽根に、ユラだけだと不安だから一応薬草でしょ、あ、白ワイン!」
例の黄色いスライムと割って飲むやつだ。
そういえば、リアムは酒を飲めるのだろうか? サツキは実は酒が弱く、飲めるのだが悪酔いをする。所謂絡み酒というやつだ。日頃抑え込んでいる不平不満が酒の力を借りて表に出てくるらしく、過去にそこそこやらかしてからは外では飲まない様にしていた。
折角なら酒が強いといいな、そう思いつつ、サツキはにこにことウルスラの買い物に付き合うのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる