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序章 転移

第25話 魔術師リアム、説明を受ける

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 ようやくリアムの目をちゃんと見て、祐介が話し始めた。

「とりあえず、勝手に出歩くのは当分禁止ね」
「何故だ? フルールアレの魔法を使えばいつでも帰宅出来るぞ、心配はない」

 ひく、と祐介の頬が引き攣った。笑顔が歪んでいる。

「そのフルールアレとかはよく知らないけど、サツキちゃん突拍子もないことするから、駄目」
「過保護だな、祐介。そんなだと恋人にうざがられるぞ」
「恋人はいません」
「そうか……」
「憐れむ様な顔、やめてくれる?」

 コホン、と祐介が咳払いをした。

「とりあえず明日から三連休あるから、その間に家のこと、一般常識、会社のこととかをひと通り説明するから」
「私に常識がない様な言い方をするな」
「ないでしょ」

 即答された。

「大体魔法魔法って、本当にそんなのあると思えないし」

 呆れた様な祐介の言い方に、リアムはムッとした。

「祐介、私は長年その魔法で生計を立ててきたんだぞ、さすがにそれは失礼だろう」
「じゃあ見せてよ」
「……さっき服を片付けるので使ってしまって、今日はちょっと」
「ほーらね」

 そら見たことか、といった顔をされ、リアムはムキになった。腰に手を当て、もう片方の手の人差し指でビシッと祐介を指した。

「明日! 明日は回復している筈だから見せてやる!」
「ふうん? じゃあ僕が言ったことやってよね」
「任せろ! 私は名のある魔術師だぞ!」
「……ふう」
「そこで溜息をつくな」

 何だか調子の狂う奴だが、今頼れるのがこいつしかいない以上あまり無下にも出来ない。

「とりあえず今夜は遅いから、お風呂の入り方とか、冷蔵庫とか使いそうな所の説明をしたら寝よう」

 すると祐介がリアムに顔を近付けてきた。

「な、なんだ」

 あまりジロジロと見られると気持ちのいいものではない。ムズムズしてきた。

「サツキちゃん、お化粧してるよね?」
「化粧か……知らん」

 がく、と祐介が頭を落とした。

「えーと、多分してるけど、それは化粧落としをきちんとしないと肌荒れします」
「ほう」
「……多分化粧水したりもしてると思うんだよね、さすがに」
「それは一体どういった物だ」
「ていうか、次の出社の時にお化粧ってどうするの?」
「私に聞くな」
「……まだまだ寝られないな……」

 また独り言だ。よく分からないが、この世界で守らないといけないルールでもあるのだろう。それにしても疲れた。リアムは足を組み直すと、伸びをしながら大きな欠伸をした。

「あのさ、短パンで胡座かかないでよ」

 段々うるさく感じてきた。

「家で寛ぐくらいいいだろうが」

 はあ、と祐介の大げさな溜息がした。こいつも仕事終わりの様だし疲れているのだろう。

「祐介、風呂は明日でいい。今日はもう寝たい」

 なんせ一回ドラゴンに焼かれて死んでいる。

「じゃあ、顔は洗った方がいいよ。荒れるから」
「分かった。どうすればいいんだ?」

 祐介の頬が、またひくっと引き攣った。
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