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序章 転移
第17話 魔術師リアム、お家探索開始
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今はもう祐介しかいないので、大して気にせずまたもや床に座り込んで鞄をがさごそと漁り始める。
「しかし随分と整っていない鞄だ」
さすがに苦情が口から突いて出た。それほどにまとまっていない中身だった。祐介は明後日の方向を見ながら、時折ちらちらとリアムの様子を伺っている。
「仕事、阿呆みたいに忙しそうだったから、そこまで気にしてる余裕なかったんじゃないかなあ」
「何、こんな細い身体で過酷な労働を?」
「特に明日から三連休だから、休む前に片付けないとって頑張ってたし」
「休む為に過度に働くとは憐れな……」
「それは僕も一緒だけどね、ははは」
ようやく小さな皮のケースに鍵が入っているのを発見した。
「よし、あったぞ祐介」
しゃがんだままくるりと振り返り鍵を高々と掲げると、祐介の視線が股間に一瞬注がれたのに気が付いた。しまった。すまぬ、サツキよ。
リアムは急ぎ足を閉じると立ち上がり、鍵を鍵穴に差し込む。右に回したが反応しなかったので左に回すと、かちゃりと音がした。ようやくこの修業の様な靴を脱ぐことが出来るのだ。
扉を開けようとしたその時、祐介が声を掛けてきた。こいつは自分の家に帰らなくていいのだろうか。
「でさ、サツキちゃん」
「何だ」
「その、余計なお世話かもしれないけど、ひとりで大丈夫?」
まだ少し赤い顔をした祐介が聞いてきた。馬鹿にするにもほどがある。リアムは目を細めて軽く睨みつけた。
「当然だ、私は大人になって久しい。自分の面倒くらい自分でみられる」
「でもさ、その、お金とか、お風呂とかさ、家電製品とか、仕事も三連休明けには始まるけど、本当に大丈夫?」
思考が一瞬停止した。
「家電製品とは、如何なるものだ?」
「……ほうらね」
はあ、と祐介が深い深い溜息をついた。リアムは同情顔になって頷いた。
「世話をかけるな」
「ごめん、今ちょっとイラッとした」
「何か言ったか」
「いえ、何でもありません」
祐介が言った。諦めた様な笑いだった。
「じゃあ、僕もとりあえずスーツ脱ぎたいし、一旦それぞれ家に戻って、お互い楽な格好になった頃僕が家に行くよ」
「祐介はサツキの家に入ったことはあるのか?」
途端、祐介はブンブンと首を横に振った。
「とんでもない! サツキちゃん警戒心強いし、仕事仕事で家と職場の往復だけっぽかったし、週末はいつも物音もしないところを見ると死んだ様に寝てたみたいだし! 時折一瞬爆音でアイドル系の音楽が聴こえたりとかあったところを見るとアイドル好きなんだなとかっ」
「お前はいつも女子の部屋に聞き耳を立てていたのか?」
「違います! 壁が薄いの!」
あーもう、と言いながら祐介が自分の家の鍵を取り出す。
「とりあえず中入ってて」
「うむ。分かった」
女ひとりを外に置いておくのが心配なのだろう。リアムは言われた通りに家の中へと入った。途端、目の前に広がる床一面に散乱した物、物、物。
頭がくらくらした。
「しかし随分と整っていない鞄だ」
さすがに苦情が口から突いて出た。それほどにまとまっていない中身だった。祐介は明後日の方向を見ながら、時折ちらちらとリアムの様子を伺っている。
「仕事、阿呆みたいに忙しそうだったから、そこまで気にしてる余裕なかったんじゃないかなあ」
「何、こんな細い身体で過酷な労働を?」
「特に明日から三連休だから、休む前に片付けないとって頑張ってたし」
「休む為に過度に働くとは憐れな……」
「それは僕も一緒だけどね、ははは」
ようやく小さな皮のケースに鍵が入っているのを発見した。
「よし、あったぞ祐介」
しゃがんだままくるりと振り返り鍵を高々と掲げると、祐介の視線が股間に一瞬注がれたのに気が付いた。しまった。すまぬ、サツキよ。
リアムは急ぎ足を閉じると立ち上がり、鍵を鍵穴に差し込む。右に回したが反応しなかったので左に回すと、かちゃりと音がした。ようやくこの修業の様な靴を脱ぐことが出来るのだ。
扉を開けようとしたその時、祐介が声を掛けてきた。こいつは自分の家に帰らなくていいのだろうか。
「でさ、サツキちゃん」
「何だ」
「その、余計なお世話かもしれないけど、ひとりで大丈夫?」
まだ少し赤い顔をした祐介が聞いてきた。馬鹿にするにもほどがある。リアムは目を細めて軽く睨みつけた。
「当然だ、私は大人になって久しい。自分の面倒くらい自分でみられる」
「でもさ、その、お金とか、お風呂とかさ、家電製品とか、仕事も三連休明けには始まるけど、本当に大丈夫?」
思考が一瞬停止した。
「家電製品とは、如何なるものだ?」
「……ほうらね」
はあ、と祐介が深い深い溜息をついた。リアムは同情顔になって頷いた。
「世話をかけるな」
「ごめん、今ちょっとイラッとした」
「何か言ったか」
「いえ、何でもありません」
祐介が言った。諦めた様な笑いだった。
「じゃあ、僕もとりあえずスーツ脱ぎたいし、一旦それぞれ家に戻って、お互い楽な格好になった頃僕が家に行くよ」
「祐介はサツキの家に入ったことはあるのか?」
途端、祐介はブンブンと首を横に振った。
「とんでもない! サツキちゃん警戒心強いし、仕事仕事で家と職場の往復だけっぽかったし、週末はいつも物音もしないところを見ると死んだ様に寝てたみたいだし! 時折一瞬爆音でアイドル系の音楽が聴こえたりとかあったところを見るとアイドル好きなんだなとかっ」
「お前はいつも女子の部屋に聞き耳を立てていたのか?」
「違います! 壁が薄いの!」
あーもう、と言いながら祐介が自分の家の鍵を取り出す。
「とりあえず中入ってて」
「うむ。分かった」
女ひとりを外に置いておくのが心配なのだろう。リアムは言われた通りに家の中へと入った。途端、目の前に広がる床一面に散乱した物、物、物。
頭がくらくらした。
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