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序章 転移
第12話 OLサツキ、自身を確認する
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溢れかえる光に視界を奪われ、それを取り戻そうと目を押さえていると、ウルスラが声を掛けてきた。
「リアム、目を閉じるの忘れちゃった?」
「うん……ごめん、目がおかしいや」
サツキが瞼を押さえたまま言うと、ユラが何かをぶつぶつと唱えた。途端、目の奥のチカチカが消える。
「直したぜ、リアム」
「うわあ……本当だ! すごいユラ!」
「よせよリアム、照れるって」
目をぱっと開けると、辺りは開けた草原。草むら以外何もない。どういうことだろうか。すると。
「おお、懐かしの我が街!」
アールがサツキとは真逆の方を向いて言った。明るい口調だ。
見ていた方向が逆転だったらしい。サツキは振り返った。
「うわあああ……!」
そこには、街があった。所謂城塞都市というやつだろう、街の境界をぐるっと灰色の石壁が囲っている。その奥に見えるのは、ヨーロッパにいかにもありそうなシンデレラ城よりはずんぐりむっくりな灰色の城。
でも、空は青く雲は白く、サツキを囲む草原はひたすらに緑。自分と同じ名前の登場人物が出る有名なアニメの薪が舞い上がるシーンの様に、風が草原に波打っている。
「バルバイトの街よ、リアム。……覚えてる?」
ウルスラが期待する様にサツキを見上げてきたが、残念ながらサツキはリアムではない。思い出しようもないのでサツキが首を横に振ると、ウルスラが少し寂しそうな表情をした。
「さ、凱旋だ!」
アールがにこやかに宣言したが、ウルスラが待ったをかけた。
「ちょおっと待ったー!」
ぴた、とアールとユラの動きが止まる。どうやらこのパーティーで一番発言力があるのはウルスラらしい。
会社で愚痴のひとつすら言うことが出来ないサツキとは、大違いだ。
ウルスラは腰に手を当てると、ひとりひとり指差して言った。
「あんた達! 凱旋だっていうのにそんなヨレヨレな格好で街に戻ったら、貧乏パーティーだって馬鹿にされるわよ!」
確かに皆一様に薄汚れて服もヘロヘロだ。サツキの腕にも、ドラゴンの炎の所為だろう、煤がこびりついている。
「貧乏パーティーは事実じゃね?」
アールがはは、と笑うと、クソ真面目な表情でユラが言った。
「いや待てアール、ウルスラの言うことには一理ある。考えてもみろ。ドラゴン討伐に出かけて、宣言通り倒して帰った英雄だぞ? これからいっぱいもてる絶好の機会を、初手の凡ミスで失うのか?」
「リアム、鏡の魔法を!」
アールがサツキを振り返った。
「えっ」
魔法なんて使えるのか、この身体の持ち主は。
「呪文とか、分からないよ……」
「大丈夫だ、リアム! 『我の姿を映し出せ、ミラージュ』と唱えりゃいける筈だ!」
「えー……『我の姿を映し出せ、ミラージュ』……?」
すると手に持っていた杖から光が溢れ出すと、一行の目の前に煌めく大きな鏡が現れた。
「出来るじゃないかリアム!」
「腐ってもリアムね!」
腐ってないし。そう思って鏡を見ると、そこにはすらっとした赤いローブを羽織った男性がいた。シャープな輪郭、グレーの印象的な瞳、すらっとした肢体の少し歳を重ねた男性。
「イケメン……!」
渋さに、思わず言葉が口をついて出た。
「リアム、目を閉じるの忘れちゃった?」
「うん……ごめん、目がおかしいや」
サツキが瞼を押さえたまま言うと、ユラが何かをぶつぶつと唱えた。途端、目の奥のチカチカが消える。
「直したぜ、リアム」
「うわあ……本当だ! すごいユラ!」
「よせよリアム、照れるって」
目をぱっと開けると、辺りは開けた草原。草むら以外何もない。どういうことだろうか。すると。
「おお、懐かしの我が街!」
アールがサツキとは真逆の方を向いて言った。明るい口調だ。
見ていた方向が逆転だったらしい。サツキは振り返った。
「うわあああ……!」
そこには、街があった。所謂城塞都市というやつだろう、街の境界をぐるっと灰色の石壁が囲っている。その奥に見えるのは、ヨーロッパにいかにもありそうなシンデレラ城よりはずんぐりむっくりな灰色の城。
でも、空は青く雲は白く、サツキを囲む草原はひたすらに緑。自分と同じ名前の登場人物が出る有名なアニメの薪が舞い上がるシーンの様に、風が草原に波打っている。
「バルバイトの街よ、リアム。……覚えてる?」
ウルスラが期待する様にサツキを見上げてきたが、残念ながらサツキはリアムではない。思い出しようもないのでサツキが首を横に振ると、ウルスラが少し寂しそうな表情をした。
「さ、凱旋だ!」
アールがにこやかに宣言したが、ウルスラが待ったをかけた。
「ちょおっと待ったー!」
ぴた、とアールとユラの動きが止まる。どうやらこのパーティーで一番発言力があるのはウルスラらしい。
会社で愚痴のひとつすら言うことが出来ないサツキとは、大違いだ。
ウルスラは腰に手を当てると、ひとりひとり指差して言った。
「あんた達! 凱旋だっていうのにそんなヨレヨレな格好で街に戻ったら、貧乏パーティーだって馬鹿にされるわよ!」
確かに皆一様に薄汚れて服もヘロヘロだ。サツキの腕にも、ドラゴンの炎の所為だろう、煤がこびりついている。
「貧乏パーティーは事実じゃね?」
アールがはは、と笑うと、クソ真面目な表情でユラが言った。
「いや待てアール、ウルスラの言うことには一理ある。考えてもみろ。ドラゴン討伐に出かけて、宣言通り倒して帰った英雄だぞ? これからいっぱいもてる絶好の機会を、初手の凡ミスで失うのか?」
「リアム、鏡の魔法を!」
アールがサツキを振り返った。
「えっ」
魔法なんて使えるのか、この身体の持ち主は。
「呪文とか、分からないよ……」
「大丈夫だ、リアム! 『我の姿を映し出せ、ミラージュ』と唱えりゃいける筈だ!」
「えー……『我の姿を映し出せ、ミラージュ』……?」
すると手に持っていた杖から光が溢れ出すと、一行の目の前に煌めく大きな鏡が現れた。
「出来るじゃないかリアム!」
「腐ってもリアムね!」
腐ってないし。そう思って鏡を見ると、そこにはすらっとした赤いローブを羽織った男性がいた。シャープな輪郭、グレーの印象的な瞳、すらっとした肢体の少し歳を重ねた男性。
「イケメン……!」
渋さに、思わず言葉が口をついて出た。
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