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冬磨編
41 男の理解不能な言葉
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天音が自暴自棄というのも心配だが、この男がどうして俺に止めてくれと言いに来たのかが疑問だ。
止めるって何をだ?
どうして自分で止めない?
なんで俺?
「今日、バーに行ってくんねぇか? 天音を止めてくれよ」
バーという言葉で疑問が解けた。
男はバーの場所を知らないんだな。
天音、バーに行くつもりなのか? あれだけ出禁だと伝えたのに。
天音は何をしようとしてるんだ?
「何を、止めるんだ?」
「あんたには関係ねぇ話だとは思うけどさ。本当のビッチになればあんたのそばに戻れるかもって、マジでビッチになろうとしてんだ。バーでとっかえひっかえするつもりらしい」
「……なんの、話だよ。本当のビッチって」
男が何を言っているのか全く理解ができない。
「俺のそばに戻れるって……なに」
本当のビッチってなんだよ。天音が……ビッチ? いや、ビッチになろうとしてるって? なんで?
俺のそばに戻れるかもってなんだよ。どういうこと?
どうして天音の自暴自棄の理由が俺なんだ……?
わけわかんねぇ……教えてくれよ、どういう意味だよ。
「あんたを本気で好きな天音のことなんてもうどうでもいいかもしんねぇけどさ。あんたのせいで天音が穢れるのは我慢できねぇんだわ。俺が言っても聞かねぇし。頼むから、天音を止めてくれ」
男の口から、あまりにも理解不能な言葉が発せられて眉が寄った。
「……今、なんて言った? 俺を……」
「あんたを本気で好きな天音のことなんてどうでも――――」
「違う」
聞き間違いかと思った言葉がふたたび耳に届き、思わずさえぎった。
この男は何を言ってる。
聞きたくない、そんな言葉。特にこの男の口からは。
ヒデが言うように、俺にはちょっとの好意は分からないのかもしれないが、天音が俺ではなくこの男が好きなことくらいは分かる。
あの日だまりの笑顔を手に入れられるこの男に、そんな言葉は絶対に言われたくない。
「天音は俺のことは好きじゃない。目を見ればわかる。いつも俺に興味もなさそうな目をして……。っつうか天音が好きなのは――――」
「天音は演劇部だったんだ」
男の唐突すぎる言葉にさらに眉が寄った。それがなんだっていうんだ。
今この男は、まるで『天音が好きなのはお前だ』という言葉を聞きたくないとでもいうように俺の話をさえぎった。
そうだよな、あらためて言われなくても分かりきってるよな。天音にあんな可愛い笑顔を毎日向けられてるんだ。分かってて当然だよな。
今にも怒りが爆発しそうになったとき、男が続けた言葉でふたたび胸の奥がざわついた。
「それも演技力抜群。あんたが好きだってバレないように必死でビッチの演技してた」
俺をバカにしてるのか。そんなありえない話を信じろとでも言うのかよ、と苛立った。
そんなバカげた話を俺にする意味はなんなんだ。
「けど、最中の時だけは、どうしても演技ができないって言ってたけどな」
一瞬息を呑む。
最中は演技ができない……?
いつも無表情なのに、ベッドでは可愛い天音……。
ほかは全部演技で、ベッドの中は演技じゃない?
「演技……。ベッドの中は……本当の天音……?」
嘘だろ?
「そうだよ。先週あんたが見た、俺と一緒の天音が本当の天音。あんたの知ってる天音は、ビッチを演じてる天音だ」
ベッドの上の可愛い天音が本当の天音だとずっと思ってた。普段の感情が死んだような天音が、少しずつでも本当の天音に戻ってほしいと願ってた。
感情がない天音は、演技だった?
そんなこと、本当にありえるのか?
「俺の前では……演技してた……?」
「そう」
「なんで……」
「あんた、自分に本気の奴は相手にしないんだろ? だから天音は必死で演技してたんだよ。絶対にバレないように」
何が……バレないように、なんだ?
心臓が激しく鼓動し始めた。
天音は必死で演技してた……。
絶対にバレないように……。
俺が本気の奴を相手にしないから……?
頭を殴られたようなショックが全身を貫いた。
嘘だろ……? 天音が俺を……好き?
俺に興味もないって瞳を思い出すと、とても信じられない。
でも、ベッドの上の天音が演技ではないという部分が、本当の天音だと感じていた部分と一致する。
俺は手のひらで顔を覆い、深く息をついた。
天音はいつから演技してた? あの無表情は出会ったときからずっとだろ……。
「先週見た天音が本当の天音って……。演技ってまさか……最初から?」
「そうだよ」
天音は最初から俺を好きで演技してたっていうのか?
あの可愛い日だまりの笑顔を隠して?
天音が俺を好き……本当に?
全身がたぎるように熱くなってくる。
息もできないほど心臓が痛い。もう胸が張り裂けそうだった。
どんな気持ちで今まで俺に抱かれてたんだよ……天音。
『冬磨には関係ないだろ』
『勘弁しろよ、恋人じゃねぇんだからさ』
『俺だけじゃなくなるんだなって』
『もう俺のこと飽きちゃった?』
今までの天音の言葉が全部演技。まだ信じられない。
どんな気持ちでそんな台詞を言ってたんだ。
「もしかして、口調も?」
ベッドでの柔らかい口調。あの可愛い口調が、トラウマを持つ前の本当の天音だろうと思ってた。
あの強気な口調も演技だった?
「それは知らねぇけど、そうかもな。天音がどんなビッチ天音をやってたのか俺は知らねぇ」
「……てかさっきからビッチってなに?」
覆っていた手を外し、男を見て問いかけた。
「なにってだから……」
「天音は、ビッチを演じてた?」
「だから、そうだって」
「……天音がビッチって」
俺は思わず吹き出した。
「もー……ほんと可愛い」
あんな可愛いビッチがいたらマジで驚く。
天音は何人セフレがいる設定で演技してたんだ?
本当に可愛い。ビッチ天音って……マジかよ天音。
ほんと勘弁しろよ。可愛すぎだろ。
「なんだ。初めてだって気づいてた?」
「初めて?」
「天音がほんとは初めてだって」
また理解不能な言葉を男が吐き出した。
止めるって何をだ?
どうして自分で止めない?
なんで俺?
「今日、バーに行ってくんねぇか? 天音を止めてくれよ」
バーという言葉で疑問が解けた。
男はバーの場所を知らないんだな。
天音、バーに行くつもりなのか? あれだけ出禁だと伝えたのに。
天音は何をしようとしてるんだ?
「何を、止めるんだ?」
「あんたには関係ねぇ話だとは思うけどさ。本当のビッチになればあんたのそばに戻れるかもって、マジでビッチになろうとしてんだ。バーでとっかえひっかえするつもりらしい」
「……なんの、話だよ。本当のビッチって」
男が何を言っているのか全く理解ができない。
「俺のそばに戻れるって……なに」
本当のビッチってなんだよ。天音が……ビッチ? いや、ビッチになろうとしてるって? なんで?
俺のそばに戻れるかもってなんだよ。どういうこと?
どうして天音の自暴自棄の理由が俺なんだ……?
わけわかんねぇ……教えてくれよ、どういう意味だよ。
「あんたを本気で好きな天音のことなんてもうどうでもいいかもしんねぇけどさ。あんたのせいで天音が穢れるのは我慢できねぇんだわ。俺が言っても聞かねぇし。頼むから、天音を止めてくれ」
男の口から、あまりにも理解不能な言葉が発せられて眉が寄った。
「……今、なんて言った? 俺を……」
「あんたを本気で好きな天音のことなんてどうでも――――」
「違う」
聞き間違いかと思った言葉がふたたび耳に届き、思わずさえぎった。
この男は何を言ってる。
聞きたくない、そんな言葉。特にこの男の口からは。
ヒデが言うように、俺にはちょっとの好意は分からないのかもしれないが、天音が俺ではなくこの男が好きなことくらいは分かる。
あの日だまりの笑顔を手に入れられるこの男に、そんな言葉は絶対に言われたくない。
「天音は俺のことは好きじゃない。目を見ればわかる。いつも俺に興味もなさそうな目をして……。っつうか天音が好きなのは――――」
「天音は演劇部だったんだ」
男の唐突すぎる言葉にさらに眉が寄った。それがなんだっていうんだ。
今この男は、まるで『天音が好きなのはお前だ』という言葉を聞きたくないとでもいうように俺の話をさえぎった。
そうだよな、あらためて言われなくても分かりきってるよな。天音にあんな可愛い笑顔を毎日向けられてるんだ。分かってて当然だよな。
今にも怒りが爆発しそうになったとき、男が続けた言葉でふたたび胸の奥がざわついた。
「それも演技力抜群。あんたが好きだってバレないように必死でビッチの演技してた」
俺をバカにしてるのか。そんなありえない話を信じろとでも言うのかよ、と苛立った。
そんなバカげた話を俺にする意味はなんなんだ。
「けど、最中の時だけは、どうしても演技ができないって言ってたけどな」
一瞬息を呑む。
最中は演技ができない……?
いつも無表情なのに、ベッドでは可愛い天音……。
ほかは全部演技で、ベッドの中は演技じゃない?
「演技……。ベッドの中は……本当の天音……?」
嘘だろ?
「そうだよ。先週あんたが見た、俺と一緒の天音が本当の天音。あんたの知ってる天音は、ビッチを演じてる天音だ」
ベッドの上の可愛い天音が本当の天音だとずっと思ってた。普段の感情が死んだような天音が、少しずつでも本当の天音に戻ってほしいと願ってた。
感情がない天音は、演技だった?
そんなこと、本当にありえるのか?
「俺の前では……演技してた……?」
「そう」
「なんで……」
「あんた、自分に本気の奴は相手にしないんだろ? だから天音は必死で演技してたんだよ。絶対にバレないように」
何が……バレないように、なんだ?
心臓が激しく鼓動し始めた。
天音は必死で演技してた……。
絶対にバレないように……。
俺が本気の奴を相手にしないから……?
頭を殴られたようなショックが全身を貫いた。
嘘だろ……? 天音が俺を……好き?
俺に興味もないって瞳を思い出すと、とても信じられない。
でも、ベッドの上の天音が演技ではないという部分が、本当の天音だと感じていた部分と一致する。
俺は手のひらで顔を覆い、深く息をついた。
天音はいつから演技してた? あの無表情は出会ったときからずっとだろ……。
「先週見た天音が本当の天音って……。演技ってまさか……最初から?」
「そうだよ」
天音は最初から俺を好きで演技してたっていうのか?
あの可愛い日だまりの笑顔を隠して?
天音が俺を好き……本当に?
全身がたぎるように熱くなってくる。
息もできないほど心臓が痛い。もう胸が張り裂けそうだった。
どんな気持ちで今まで俺に抱かれてたんだよ……天音。
『冬磨には関係ないだろ』
『勘弁しろよ、恋人じゃねぇんだからさ』
『俺だけじゃなくなるんだなって』
『もう俺のこと飽きちゃった?』
今までの天音の言葉が全部演技。まだ信じられない。
どんな気持ちでそんな台詞を言ってたんだ。
「もしかして、口調も?」
ベッドでの柔らかい口調。あの可愛い口調が、トラウマを持つ前の本当の天音だろうと思ってた。
あの強気な口調も演技だった?
「それは知らねぇけど、そうかもな。天音がどんなビッチ天音をやってたのか俺は知らねぇ」
「……てかさっきからビッチってなに?」
覆っていた手を外し、男を見て問いかけた。
「なにってだから……」
「天音は、ビッチを演じてた?」
「だから、そうだって」
「……天音がビッチって」
俺は思わず吹き出した。
「もー……ほんと可愛い」
あんな可愛いビッチがいたらマジで驚く。
天音は何人セフレがいる設定で演技してたんだ?
本当に可愛い。ビッチ天音って……マジかよ天音。
ほんと勘弁しろよ。可愛すぎだろ。
「なんだ。初めてだって気づいてた?」
「初めて?」
「天音がほんとは初めてだって」
また理解不能な言葉を男が吐き出した。
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