21 / 149
21 ちょっとだけ笑顔になろうかな ※
しおりを挟む
「あ……っ、と……っ、とぉ……ま……」
冬磨の顔を見ながら抱かれる幸せに、今日はいつも以上に震えが止まらない。
冬磨はずっと俺を見つめていて、ときどき吐息と一緒に顔をゆがめ、俺の声に反応して破顔した。
こんなにずっと見つめ合うのは初めてで、それだけで俺は全身がとろけてしまう。
冬磨は俺の目を見てどう思っているんだろう。
なにも言わないってことは、最中の熱がこもってるだけだと思ってくれてるのかな。
無表情だって保ててないけど……。
大好きがあふれて幸せで、胸が張り裂けそう。
冬磨……大好き。
キス……したいな……。冬磨と繋がりながら、キスしたかったな……。
「天音、ほんとお前、可愛いな……。想像以上で……ビビるわ……」
冬磨がそんなことを言って優しく微笑むから、また涙がにじむ。
こんなタイミングで泣いたらさすがにだめだ。だめだってば。
俺は慌てて腕で目元を覆って、さりげなく涙を拭う。でも、次々と涙があふれ出てきて拭いきれない。
「せっかく目開けてくれたのに隠すなよ」
冬磨が俺の腕を取り、目元がさらけ出された。
どうしよう……っ。
と焦ったけれど、冬磨は優しく俺の目尻にキスをした。
「お前、後ろからのときもそうやって一人で泣いてたんだろ」
涙の理由を問い詰めるような雰囲気ではなかった。ただひたすらに優しくいたわるような声色で、反対の頬も指で涙を拭ってくれる。
「さっきもマジで焦った。すげぇとろけきった顔してると思ったら急に怯えて泣き出すから……。ごめんな? 今まで気づいてやれなくて」
冬磨の言葉に驚いた。
俺……怯えてた……?
そ……うか。冬磨に切られたらどうしようって、ずっと怖かった。それが怯えてるように冬磨には見えたんだ。
「まだ怖いか? ごめん。もっと優しく抱くから。だから、もう一人で泣くなよ。大丈夫。ちゃんと克服できるって信じてろ。大丈夫だから。な?」
まるで俺の心の奥深くに言い聞かせるように、冬磨が優しく言葉をつむぐ。
今でもこれ以上ないくらいに優しく抱いてくれているのに、これ以上どうやって……。
「ん、……ぁっ、とぉま……」
優しすぎるよ、冬磨。
俺なんて、ただの嘘つきなのに……。
ごめんね、冬磨。本当にごめんなさい……。
「と……ま……っ……」
大好き、冬磨。大好き……。
「あ……っ、ぁぁ……っ……」
「天音……悪い。俺もうかなり限界なんだけど……お前まだイけねえ……よな?」
はぁ、と切なげに吐息を漏らし、余裕のなさそうな冬磨の顔を見て、一気に後ろがうずく。
「……っ、おまっ、締めんな……っ、……はっ……」
「イッて……とぉま。おれも……イきそう……っ」
「……マジ? ……わかった」
冬磨はそう言うと、俺の足を持ち上げ肩にかけた。
そして動きが止まる。
「と……ま……?」
「…………くっそ、ここもかよっ!」
冬磨が突然叫んで怒り出す。
視線の先は、俺が太ももに付けたキスマーク。あ……忘れてた。
「お前なんでこんなとこにまで付けられてんだよ……っ」
クソセフレめ、と悪態をつき、冬磨は怒りを鎮めるかのように深い息をはいた。
「あとでまた重ね付けしてやる」
そう言葉を吐き出して、気を取り直すように腰を動かした。
「……ん……っ、ぁ……っ……っ」
でも、数回動いてすぐに動きを止めると「あーっ、くっそっ。チラチラ視界に入るっ」と言い捨て、俺の中から出ていった。
「え、とぉま……?」
「ちょっと待ってろ」
またすごい真顔で、冬磨が俺の太もものキスマークに唇を押し付け吸い付いた。
俺がストローで付けたキスマークに対抗意識を燃やす冬磨が可愛すぎる。
「ぷは」
俺は思わず笑ってしまった。
「あま……」
びっくりした顔で俺を見て固まる冬磨に、慌てて無表情を装った。
「だ、から……クソセフレのおかげって……複雑だっつってんじゃん」
「……知らねぇよ、そんなん」
クソセフレなんていないのに、と思うとまた口元がゆるんだ。
冬磨が本当に複雑そうに俺を見るから、可愛くて無表情に戻れない。
「……あーもー……。ほんとお前、もっといっぱい笑えよ。可愛いから」
当初の設定のビッチ天音は笑うキャラじゃない。それに素が出てしまうから笑わないようにしていた。
これからは、少しだけ笑ってもいいかな。それでもビッチ天音で通せるかな。
冬磨が喜んでくれるならいくらでも笑顔でいたい。でも、それは危険だからちょっとだけ。ちょっとだけ笑顔になろうかな。
「冬磨、それ、もういいだろ? 早く……しよ?」
少しだけ柔らかい表情で冬磨を誘った。
冬磨は一瞬固まって、そしてクスクスと笑い出した。
「やっぱ天音すげぇわ」
「……なにが?」
「クソセフレのせいでちょっと萎えたんだけど。今ので完全に復活した」
今のって……え、それだけで?
「ほんと、天音は特別」
冬磨は俺の足をチラッと見て、肩にかけるのをやめてそのまま中にゆっくりと入ってきた。
「あぁ……っ、……ん……っ」
「天音、入れるだけで気持ちよさそ……」
「……ん、きもち……ぃ……」
冬磨と見つめ合いながらゆっくりと繋がる。
いつもの何倍も幸せで泣きたくなる。
また言われた『天音は特別』という言葉が頭の中でこだましていた。酔いしれそうになって、意識して気を張った。
だってそんなこと言われたら誰だって勘違いしちゃう。もしかして勘違いさせたい……?
そしてきっと、冬磨に落ちたらそこで終わり。さようなら。
そうなるかならないか、試してるんじゃないかなって気がしてくる。
俺は騙されないよ。
だってもう落ちてる状態から偽ってる。
絶対……終わらせたりなんかしないんだから……。
冬磨の顔を見ながら抱かれる幸せに、今日はいつも以上に震えが止まらない。
冬磨はずっと俺を見つめていて、ときどき吐息と一緒に顔をゆがめ、俺の声に反応して破顔した。
こんなにずっと見つめ合うのは初めてで、それだけで俺は全身がとろけてしまう。
冬磨は俺の目を見てどう思っているんだろう。
なにも言わないってことは、最中の熱がこもってるだけだと思ってくれてるのかな。
無表情だって保ててないけど……。
大好きがあふれて幸せで、胸が張り裂けそう。
冬磨……大好き。
キス……したいな……。冬磨と繋がりながら、キスしたかったな……。
「天音、ほんとお前、可愛いな……。想像以上で……ビビるわ……」
冬磨がそんなことを言って優しく微笑むから、また涙がにじむ。
こんなタイミングで泣いたらさすがにだめだ。だめだってば。
俺は慌てて腕で目元を覆って、さりげなく涙を拭う。でも、次々と涙があふれ出てきて拭いきれない。
「せっかく目開けてくれたのに隠すなよ」
冬磨が俺の腕を取り、目元がさらけ出された。
どうしよう……っ。
と焦ったけれど、冬磨は優しく俺の目尻にキスをした。
「お前、後ろからのときもそうやって一人で泣いてたんだろ」
涙の理由を問い詰めるような雰囲気ではなかった。ただひたすらに優しくいたわるような声色で、反対の頬も指で涙を拭ってくれる。
「さっきもマジで焦った。すげぇとろけきった顔してると思ったら急に怯えて泣き出すから……。ごめんな? 今まで気づいてやれなくて」
冬磨の言葉に驚いた。
俺……怯えてた……?
そ……うか。冬磨に切られたらどうしようって、ずっと怖かった。それが怯えてるように冬磨には見えたんだ。
「まだ怖いか? ごめん。もっと優しく抱くから。だから、もう一人で泣くなよ。大丈夫。ちゃんと克服できるって信じてろ。大丈夫だから。な?」
まるで俺の心の奥深くに言い聞かせるように、冬磨が優しく言葉をつむぐ。
今でもこれ以上ないくらいに優しく抱いてくれているのに、これ以上どうやって……。
「ん、……ぁっ、とぉま……」
優しすぎるよ、冬磨。
俺なんて、ただの嘘つきなのに……。
ごめんね、冬磨。本当にごめんなさい……。
「と……ま……っ……」
大好き、冬磨。大好き……。
「あ……っ、ぁぁ……っ……」
「天音……悪い。俺もうかなり限界なんだけど……お前まだイけねえ……よな?」
はぁ、と切なげに吐息を漏らし、余裕のなさそうな冬磨の顔を見て、一気に後ろがうずく。
「……っ、おまっ、締めんな……っ、……はっ……」
「イッて……とぉま。おれも……イきそう……っ」
「……マジ? ……わかった」
冬磨はそう言うと、俺の足を持ち上げ肩にかけた。
そして動きが止まる。
「と……ま……?」
「…………くっそ、ここもかよっ!」
冬磨が突然叫んで怒り出す。
視線の先は、俺が太ももに付けたキスマーク。あ……忘れてた。
「お前なんでこんなとこにまで付けられてんだよ……っ」
クソセフレめ、と悪態をつき、冬磨は怒りを鎮めるかのように深い息をはいた。
「あとでまた重ね付けしてやる」
そう言葉を吐き出して、気を取り直すように腰を動かした。
「……ん……っ、ぁ……っ……っ」
でも、数回動いてすぐに動きを止めると「あーっ、くっそっ。チラチラ視界に入るっ」と言い捨て、俺の中から出ていった。
「え、とぉま……?」
「ちょっと待ってろ」
またすごい真顔で、冬磨が俺の太もものキスマークに唇を押し付け吸い付いた。
俺がストローで付けたキスマークに対抗意識を燃やす冬磨が可愛すぎる。
「ぷは」
俺は思わず笑ってしまった。
「あま……」
びっくりした顔で俺を見て固まる冬磨に、慌てて無表情を装った。
「だ、から……クソセフレのおかげって……複雑だっつってんじゃん」
「……知らねぇよ、そんなん」
クソセフレなんていないのに、と思うとまた口元がゆるんだ。
冬磨が本当に複雑そうに俺を見るから、可愛くて無表情に戻れない。
「……あーもー……。ほんとお前、もっといっぱい笑えよ。可愛いから」
当初の設定のビッチ天音は笑うキャラじゃない。それに素が出てしまうから笑わないようにしていた。
これからは、少しだけ笑ってもいいかな。それでもビッチ天音で通せるかな。
冬磨が喜んでくれるならいくらでも笑顔でいたい。でも、それは危険だからちょっとだけ。ちょっとだけ笑顔になろうかな。
「冬磨、それ、もういいだろ? 早く……しよ?」
少しだけ柔らかい表情で冬磨を誘った。
冬磨は一瞬固まって、そしてクスクスと笑い出した。
「やっぱ天音すげぇわ」
「……なにが?」
「クソセフレのせいでちょっと萎えたんだけど。今ので完全に復活した」
今のって……え、それだけで?
「ほんと、天音は特別」
冬磨は俺の足をチラッと見て、肩にかけるのをやめてそのまま中にゆっくりと入ってきた。
「あぁ……っ、……ん……っ」
「天音、入れるだけで気持ちよさそ……」
「……ん、きもち……ぃ……」
冬磨と見つめ合いながらゆっくりと繋がる。
いつもの何倍も幸せで泣きたくなる。
また言われた『天音は特別』という言葉が頭の中でこだましていた。酔いしれそうになって、意識して気を張った。
だってそんなこと言われたら誰だって勘違いしちゃう。もしかして勘違いさせたい……?
そしてきっと、冬磨に落ちたらそこで終わり。さようなら。
そうなるかならないか、試してるんじゃないかなって気がしてくる。
俺は騙されないよ。
だってもう落ちてる状態から偽ってる。
絶対……終わらせたりなんかしないんだから……。
109
お気に入りに追加
2,080
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
弟枠でも一番近くにいられるならまあいいか……なんて思っていた時期もありました
大森deばふ
BL
ユランは、幼馴染みのエイダールが小さい頃から大好き。 保護者気分のエイダール(六歳年上)に彼の恋心は届くのか。
基本は思い込み空回り系コメディ。
他の男にかっ攫われそうになったり、事件に巻き込まれたりしつつ、のろのろと愛を育んで……濃密なあれやこれやは、行間を読むしか。←
魔法ありのゆるゆる異世界、設定も勿論ゆるゆる。
長くなったので短編から長編に表示変更、R18は行方をくらましたのでR15に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる