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第Ⅲ章 混乱
逃亡
しおりを挟む話し合いの結果、ひとまずはエリオの家へ戻ろうと意見がまとまった。
帰り道、ロゼが一言も発しないホーボットに声を掛けた。
「イオくん、大丈夫?」
「はい。僕のことならば大丈夫です」
彼女にふわりと微笑みかけた。
「ならいいけど」
ロゼは歩みを進めた。
イオの手をぎゅっと掴んで離さない手のひらの主――ダグラスの顔をイオは横目に見つめる。
道中ずっと手を繋いだままだ。
黒くて長い前髪のせいであまり表情は覗えそうにない。
彼は、ただ行く先を、真っ直ぐ見つめていた。
彼らのお宅にもう到着間際という距離で、ポールの祖父アントニオが向こうから駆けてきた。
「お~いポール! 早く来んか!」
「じ、じいちゃん!?」
「ええいお前たちも来い! 山小屋へ避難するんだわい」
アントニオ翁は半ば強引に皆を山へ登る道へ案内した。
翁が率先して先導し、緩やかな山道を進んだ。
エリオの母たちはすでに山小屋にいるらしい。
「ねえ、何が危険なの? 私にはマキナが――孤児院に戻らないと」
と言いながらもロゼは皆についていく。
「駄目だ。孤児院に近づいちゃいかん」
アントニオは強めに言った。
「奴ら、ロボット狩りを始めおった」
ロゼは眉をしかめて、奴らとは誰のことなのかを訊いた。
「キサナドゥや反ロボット体制を豪語する奴らが野良ロボット共を一斉検挙の如く集め始めおった――」
その場所がなんと孤児院周辺らしい。
「――あ奴ら、手を組みおったな!」
エックスの赤文字で集合場所を伝え密かに結束したのだろうと、アントニオは持論を展開した。
「じいちゃんよく知ってるね」
「ふふふ~ん、爺をナメてもらっちゃいかん」
孫に褒められ、天狗の鼻を鳴らした。
ロゼは話を聞いて怖くなってきた。
「やっぱり帰る」と言い出すのである。
「ふええ聞いていたのかね?」
今は危ないと翁は言う。
人間相手でも何をするかわからないと、ロゼをもっと怖がらせた。
「ロゼ。一旦待ってくれねぇか?」
エリオが彼女を止めようと試みた。
「マキナ、神父様、孤児院の皆が心配だよ!」
エリオは、震える彼女の肩に手を置いた。
「大丈夫! 心配するな。対象はホーボットだ。マキナは、きっと大丈夫――……決まってる」
元気づけるために、精一杯笑ってみせた。
「でも……」
「マキナはほら、俺らより強いんだから――」
ロゼの瞳が真っ直ぐエリオの瞳を捕らえた。
「――だから……お前が自分のロボットを信じられなくて、どうすんだよ」
彼の言葉はロゼの心のど真ん中に刺さった。
彼の赤髪が夕日に照らされ、より赤く燃え上がったように見えた。
それが彼の自信の表れのようで、ロゼはそれに懸けてみようと思った。
「……俺も、今は孤児院へは帰るのは賢明でないと思う」
冷静なダグラスも、エリオに賛同した。
ポールも「仕方ないけど……」と彼女に同情する気持ちはあるも、帰るのを引き留めた。
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